97 持ち場に着いて、異世界へ
ギルドの集まりが終わった後、各自準備して持ち場へ着いておくことと言われたので街を歩いて準備をしながら買い食いをして早めのお昼を済ませた後に王都を出て持ち場へと向かう。
「それにしても俺達だけ騎士団と合同で中心かよ……」
「話によると、なんでも王女様の護衛騎士団が来られるそうですよ」
ジリーがどこから仕入れてきたかは分からない情報を教えてくれた。
「ぐぬぬぬぬ、やっぱりオリビアの仕業か……」
やはり次に会った時には仕返しをしてやると心に誓い直す蓮人である。
「蓮人さん達は王女様と仲がいいんですか?」
「1度護衛を受けたんですよ、そのときに仲良くなったんです」
リーが問いかけにそう答えた。
そんな話をしていると騎士団のいるホワイトストライプスの持ち場へと到着した。左翼と右翼にもだいたいの冒険者はもう既に集合しているようだ。
時刻は体内時計だが11時前のはずだ。
前方の少し離れたところにはスケルトンらしき大群がこちらへ向かって歩いてきているのが見えている。
「やっぱり不気味で怖いです……」
ジュシュはそう呟く。しかしそれも無理はないだろう。パーティーメンバーがこのスケルトンの大群にやられているのだ。その上でもう一度挑もうとしている。それだけでも十分立派である。
「私も不安だけど、やるしかないんだよ、頑張ろう」
ジリーがジュシュにそんな言葉をかけて肩をポンポンと叩く。
ジュシュはそのジリーの言葉に笑みを浮かべて大きく頷いたので大丈夫そうだ。
「さすがに妹には敬語じゃないんだな」
「誰に対しても敬語使うわけじゃないですよ」
「そうなんだな、てっきりリーみたいに誰にでも敬語なんだと思ってた」
「私は別に敬語を使おうとして使っている訳じゃなくてクセといいますか……」
リーのその呟きは無視されるのだった。
「それなら別に俺達にも敬語じゃなくていいよ? 歳も一緒くらいだろうしさ」
「そういうのならばお言葉に甘えて、敬語は止めにするわ」
「おう!」
ジュシュにはまだハードルが高かったらしく、返事は返ってこなかった。
そんな風な話をしながらリラックスしていると、騎士団のところから何やらこちらへ走ってくる人がいる。
いや、こちらというかポチに向かってだ。
そのままスピードを緩めることなくポチへと飛び込み抱き抱えている。
「いやー、やっぱりポチちゃんはかわいいわ。元気してた?」
そんなことを言うやつは1人しかいない。もちろんオリビアだ。ただひたすらにポチを強く抱き締めている。
「おう、オリビアか。よくもいらんことをしてくれたな」
蓮人は指をパキパキ鳴らしながらオリビアに詰寄る。笑みを浮かべているが目は笑っていない。
「あら、王女様からのご指名なんだからもうちょっと喜びなさいよ……」
オリビアはポチを盾にしながら後ずさって皆から離れていく。
「それに、その健吾くん?って人がいるかもしれないって情報が入ったから、わざわざここに来れるようにしてあげたんでしょうが」
これはジリーとジュシュには聞こえないくらいの声の大きさで言われた。
それを聞いた瞬間、蓮人の頭はスーッと冷えていった。
「そ、そうなのか、それはありがたい、助かるよ」
「いいわよ、騎士団にも黒いローブの男を見つけた際はホワイトストライプスに任せるように通達してあるんだから、もしいたら上手くやんなさいよ?」
「わかった、ありがとう」
それでとりあえず詰め寄る理由もなくなり、皆の所へ戻る。
「ところで、王女様はなんで戦場に来たんですか?」
リーが疑問を尋ねる。
「敵はスケルトンの大群だっていうから、私の火属性魔法で先制攻撃でもしてやろうと思って」
「なるほど、じゃあ俺も」
オリビアのその返答に蓮人も乗った。
「いいわよ、開戦の合図が騎士団長からされるはずよ。それと同時にこの前の魔法を撃つから、魔力練っておいてね」
「おう、任せろ!」
「じゃあ、私はそろそろ戻るわ。ポチちゃん、またね」
オリビアはポチを名残惜しそうになりながらも下ろして戻っていく。
そうしてそこには何が何だか分からないといったジリーとジュシュが残るのだった。
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