96 依頼前の激励に、異世界へ
「なんだ、もう来てたのか。だいぶ早いな」
日の出ちょうどにギルドへやってきた蓮人達だが、中に入ると既に朝食を食べているジリーとジュシュの姿があった。
「おはようございます。
依頼が始まる前にもう一度パーティーメンバーの様子を見ておこうと思ったんです」
「そうなんですね、パーティーメンバーさんの様子はどうでしたか?」
2人の食べている朝食を羨ましそうに見ているポチを抱き抱えながらリーはそう尋ねた。
「……昨日と変わらずまだグッスリでしたね。本当にいつまで寝ているんでしょうか」
ジリーは一瞬言葉を濁したが、少し悲しそうな笑みを浮かべてそう答えた。
「そうなんですか……でも依頼を終える頃にはさすがに起きるはずですよ! ちゃんと頑張ったってことを報告してあげましょう!」
「それもそうですね、今日は頑張りましょう!」
リーとジリーはそんな会話でやる気を蓄えている。
一方、ジュシュはその会話には混ざらず、羨ましそうに見ているポチを隣に座らせて自分のパンを分け与えていた。
嬉しそうに受け取って食べているポチを見てにこやかに微笑んでいる。
ジュシュはどうやら小さな子供が好きなようだ。
そんな間にもギルドにはたくさんの冒険者達が集まってきており、ガサラのギルドよりもひと回り以上大きな建物にも関わらず、人で密集していた。
誰もがやる気に満ち溢れているように見える。
そうして時間になったのか、2階から大きな声が降ってきた。
「諸君、本日はよく集まってくれた。俺はこの王都のギルドのギルドマスターをしているムーラだ。
それではこれから緊急討伐依頼についての説明を行うので心して聞いてくれ。
まず敵の総数だが、偵察によるとスケルトンが最低600体だそうだ。大半が弓と剣を装備しているようだが、中に杖を持っているスケルトンもいたらしい。そして一番奥にはスケルトンに守られながら歩いているリーダーらしきモンスターがいたらしい」
このギルドマスターの言葉にギルド内がざわめいた。
しかし、驚くのも無理はないだろう。スケルトンが最低600体な上に魔法を使うとされていなかったスケルトンが杖を持っていたのだから。
「落ち着いてくれ、話はまだ続く。
スケルトンはこの前言っていた通り昼夜関係なく移動し続けてはいるのだが、昼間の移動速度の半分ほどらしいことが分かった。
このことより昼間はアンデッドモンスターらしく力が弱まっていると予想される。
そしてこの王都へ到着すると予想されるのも正午だ」
ムーラはそう言って1度辺りを見回して冒険者達の顔を見ていく。そして口を開く
「よって、王都から少し離れたところでこのスケルトンの大群を迎え撃つことにした!
昼間で力の弱まっているスケルトンごとき、どれほどの数がいようと私たち冒険者の敵ではないはずだ!
そして王国騎士団も同様に出陣予定だ!
これらから分かる通り、我らに敗北はない!」
ムーラのその宣言により、冒険者達の士気は最高潮になり、そこら中から雄叫びが聞こえる。
蓮人も雄叫びをあげることは無いが士気は高まっている。
「静まれ! その元気は戦いにまで取っておくんだ!
今から陣形の発表をする、聞き逃すんじゃないぞ!」
そう言って右翼、中心、左翼の順にパーティーを発表していくが、蓮人達には知らないパーティー名しかないので割愛する。
「そしてガサラのBランク冒険者パーティーのホワイトストライプスには、騎士団長からの推薦により、王国騎士団と共に中心で戦ってもらうことになっている。よろしく頼む」
「「「「えええええ!」」」」
ムーラからいきなりぶっ込まれた話に驚いて蓮人達の声が揃った。
「これは確定事項で変更は出来ない。騎士団長からも王女様からの推薦でもあると言われているからな」
(オリビアめ……今度会った時覚えておけよ……!)
蓮人は意地の悪い笑みのオリビアを思い浮かべながら、闘志を燃やすのだった。
今はスケルトンに闘志を燃やせと言ってやりたいものである。
「話はこれで以上だ!
俺はここにいる全員にまた会えると信じているぞ!」
ムーラのその願いに冒険者は各々「任せろ!」や「当たり前だ!」といったことを吠えている。
士気はこれ以上ないというほど上がっている。
「俺達も昨日みたいに皆でうまい夜ご飯を食えるように頑張ろうぜ!」
蓮人もその雰囲気に乗ってリー達にそう声を張る。
リーとポチとジリーはそのノリに乗って大きな声で、ジュシュは照れながらも小さな声で
「「「オー!」」」
と声を合わせる。
蓮人は今ならなんだって出来る気がした。
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