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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
92/170

92 演説をして、異世界へ

 大多数はポチの愛らしい姿に好意的な視線や態度を返している。

 それこそ「こっちを向いて!」と言った声掛けからもそれは分かる。

 しかし、ほんの一部だが、ポチを見る目が濁っている者がいた。こいつは金になると考えている目だ。

 蓮人はそれがとてもではないが許せなかった。


 (ポチだって1人の人なんだぞ……? なんでそんな目で見れるんだよ……クソ!)


「おい! 聞いてくれ!」


 蓮人は思わず大きな声を上げた。マイクを通した訳では無いのだがその声はそこにいる人全員の耳に届き、黙り込んだ。

 そして視線が蓮人に集中する。


「俺は皆がポチを受け入れてくれて嬉しく思ってるよ、それは本心だ。

 でも、ほんの1部だけどポチを金になるとしか思ってないやつがいるみたいだ、ここからは全員の顔が見えるんだ。誰がどんな考えしてるかなんてすぐに分かる」


 そんな目をしてポチを見ていた者達は皆そう言われて顔を伏せた。


「そりゃあ獣人族を見たのなんて初めてだし、それにこれから世界が変わっていくかもしれないんだから、獣人族と関係を持っておくためにポチに接触すべきって考えも無理もない話なのかもしれない。

 でもな、獣人族だって人族と一緒で何も変わらない、心を持って今この一瞬一瞬を生きてるんだよ!

 だからポチ達獣人族達にいらないことをしたら俺は絶対許さない! 覚えとけよ!」


 それだけ言い捨てて蓮人は1人で舞台を下りて裏へと下がっていく。


 (俺、もしかしてやらかしたか……?)


 控え室に戻ってから落ち着いた蓮人は自分のやったことにうずくまる。

 しかし、そんな蓮人の予想は外れたようだ。


「よく言ったぞ!」


「その通りだ! そんな可愛い子に危害はくわえさせたりしねえぞ!」


「よっしゃぁぁぁ! 任せろ!」


 そんな歓声と拍手が控え室の外、広場にいる民衆から聞こえてきたのだ。

 それに蓮人は自然と笑みが零れる。分かって貰えたのが嬉しかった。


 その歓声と拍手も司会の女性の方の「お静かに!」の声で段々と静まっていった。

 そしてまた王様が話し出す。


「先程蓮人が言った通りだ。

 獣人族も我々人族と同じように、心を持って、家族を作り、生を全うしている。人族と何も変わらないのだ。

 だからこそ、これからやって来る獣人族達に危害を加えれば王家も黙っていないということを肝に銘じておくのだ!

 我からは以上である。2人も下がって良いぞ」


 その声に従ってリーとポチも舞台を下りて控え室へと戻ってきた。

 そんな2人に蓮人は開口一番謝る。


「悪かった! やりすぎた!」


 リーとポチはそんな蓮人の様子に顔を見合わせて笑っていた。


「いえいえ、気にしないでください。

 むしろ私が言いたくても言えなかったことを代わりに全部言って貰えたので良かったですよ!」


「おいらも蓮人があんな風に庇ってくれて、怒ってくれて嬉しかった!」


 その返事に蓮人は一安心だが、それにはまだ早い。


「うう、王様にも謝らないと……」


「それはそうですね、でも多分大丈夫ですよ!…………多分」


「……おう、すごい不安だ」


 そんな会話をしていると、出番が終わり舞台から下りてきた王様が蓮人達の控え室へとやって来た。


「蓮人、よくぞ言った!」


 謝る間もなくそう言われた。


「え?」


 まさか褒められるとは思ってもおらず、驚いて素が出てしまった。


「我もお前の話を聞いていてスッキリとしたぞ!

 後で言おうと思っていたことを全て言われてしまった!」


 王様は機嫌がとても良さそうに笑っている。


「いえ、勝手にあんなこと言った挙句舞台まで勝手に下りちゃって、本当すみません!」


 蓮人はそういって腰を90度折って謝る。


「よいよい、気にするでない!」


 そう言って笑い声を上げながら控え室を出ていく。

 そして入れ違いにオリビアが中へ入ってくる。


「いやー、良かったわよ、あの演説。

 『俺は絶対許さない!』だってね」


 オリビアはあのときの蓮人の声真似をしてイジってきた。

 思い返すと顔から火が出るほど恥ずかしくなってくる。


「もうそっとしておいてくれええええええ」


 蓮人のその叫びは聞き入れられることなく、その日はオリビアに事ある毎に言われ続けるのだった。

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