89 二度目の謁見に、異世界へ
そして翌日、今までの疲れか朝の遅い時間まで寝てしまったので慌てて用意を済ませて王城へ向かう。
時刻は正午ギリギリだったため、急いで門番に手続きをしてもらわなければならなかったのだが、話が通っていたことと衛兵がこの前と同じ人だったためすんなりと通してもらうことが出来た。
そうしてどうにか正午までに登城することが出来た蓮人達ら待合室に通され、一息ついて出された紅茶を楽しんでいた。
「ふう、バタバタしたけど何とか間に合ってよかったな」
「本当ですね、もし遅れていたらと思うとゾッとしますね……」
リーはぶるっと身体を震わせる。ポチはその横でお茶請けとして出されたクッキーは食べているところだ。ポチだけは通常運転だ。
そんなことをしていると、謁見の間へと案内する衛兵がやって来たので後ろについて歩いて行く。
「無礼のないようにな」
衛兵からそう言われて謁見の間の扉が開かれた。
そこには王様とオリビアの2人に護衛の2人が既にいた。蓮人達は慌てて膝をついて伏せるのだが、
「そんなにかしこまらんで良い、立ちなされ。今回は無礼講じゃ。そのためにこれだけしかいないのじゃからな」
確かに前に謁見したときと比べて王様の口調もラフだし4人しかいないのだ。それだけ信頼されているということだろう。喜ばしいことである。
「ありがとうございます、ではお言葉に甘えさせて貰います」
「うむ」
そして蓮人は立ち上がるが、それを呆れてみているオリビア。横を見るとリーもポチも座ったままで立ち上がったのは蓮人だけだ。
「やっぱり、王族にそう言われて素直に従うなんて、肝が座っているというかバカというか……」
オリビアはそんな風に笑っている。
「はっはっは、お主は面白いのう。本当に他2人も楽にして良いぞ」
蓮人は民主主義生まれなだけあってこういうのが本当に分からないのだ。仕方がない。
2回目の王様の言葉に従ってリーもポチも立ち上がった。
(2回目に言われて立つくらいなら、1回目で立っとく方が次官も無駄じゃないのになぁ)
そんな思いは胸に置いておいて王様からの話を聞く。
「うむ、それで早速要件なのだが、まずは礼を言わせてもらおう。
よくぞ我が娘の護衛を無事にやり遂げてくれた、ありがとう」
そう言って椅子の上からとはいえ一国の王から軽くお辞儀をされてしまった。
「いえ、それが依頼だったので当然のことですよ」
蓮人は冷静に返事を返すのだが、リーはあわあわと呟いて慌てている。
「うむ、それでは要件へと入るぞ。2つあって長くなるが我慢してくれ。
1つ目は、このウェスナ王国は獣人族の村と国交を結ぶこととした。さしあたって領民にその旨を公表しなければならん。その際の手伝いをお主たちにしてもらいたい。
2つ目は他でもない、黒い瘴気を持つモンスターと黒いローブの男のことだ。具体的な話は既にオリビアから聞いておるから省くとするが、おそらく放っておいてはいけない存在かもしれない可能性がある。だから、お主たちにはそちらの方の調査も頼みたい。もちろんこちらでも何か情報を手に入れたら伝えることを約束しよう」
「はあ、それで具体的な内容をお聞きしても?」
「うむ、もちろんじゃ。
1つ目の件についてじゃが、明日民に向けて御触れを出し、1週間後に城下町にある大きな広場で我が会見のようなものを開こうと思っておる。その際には獣人族と1番交流の深いお主たちに協力して欲しいのじゃ。
民も獣人族本人を直接見れば必ず信じるからの。
2つ目の件についてじゃが、黒い瘴気を持つモンスターをその黒いローブの男が生み出しているかどうかは分からぬが、その人物を調べてみる必要はある。許可もなしに嘆きの森に立ち入っておる可能性もあるからの。
だから、どこかに居るという情報が入ったらすぐさまそこへ向かい出来るならば捕まえて欲しいのじゃ。
これで良いか?」
特に問題はないし、なんなら2つ目に至ってはありがたい話だ。どうやらオリビアが上手く話を回してくれたらしい。後ろで軽く親指を突き上げてきている。
「はい、僕は大丈夫です。ポチとリーもいいか?」
「はい、頑張ります!」
「緊張するけど、おいら頑張るぞ!」
2人ともやる気は十分だ。
「良い返事が聞けてよかったよ。
これで今日の話は終わりじゃ。また1週間後、王城へ来てくれたまえ」
こうして2回目の謁見も無事に終わった。
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