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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
85/170

85 異常なゴブリンが現れて、異世界へ

 「おいおい、まじかよ……」


 魔力を練ることが出来ず、一発目の魔法よりも威力が下がっているのは分かるのだが、それでも無傷となるとシャレにはならない。


「あの黒い瘴気があのゴブリンを守ったのでしょうか……?」


「おそらくそうだろう。さて、魔法でダメなら剣でどうだい?」


 ギルドマスターは剣を抜いてとんでもない速さで駆けていき、一瞬で後ろへ回り込んだ。

そのまま剣を横に一閃、振り切る。


 キイイイン


 しかし、それは黒い瘴気によって甲高い金属音と共に阻まれてしまった。


「これは剣も通らないかもしれないね……」


 ギルドマスターは戻ってきて、そう言う。


「どうしたらいいんだ……?」


 蓮人達はゴブリンの様子を伺いながら、必死に打開策を考える。

 ゴブリンがいっこうに動き出す気配がないことが唯一の救いだろうか。


「今なら逃げられそうだけどどうする?」


 蓮人は賛同する人がいるとは思うが1度提案してみる。


「いつ動き出すか分からない以上、それは愚策だろう。背を向けた瞬間に殺されてはかなわん」


 もちろんギルドマスターに一蹴された。


 (さて、どうするか……)


 それぞれがゴブリンを倒す方法を頭をフル回転させて考える。

 しかし、思いつくまでの時間は貰えないようだ。

 ゴブリンはまたも奇声を上げ、体から少しの黒い瘴気を出しながら襲いかかってきた。

最初に狙ってきたのは蓮人である。

 ギルドマスターの速さとも大差なく、動き出した次の瞬間にはもう目の前にいた。そして剣が横に一閃される。

 蓮人はそれをバックステップで避け、大振りになったことで空いた胴に突きを放つ。

 しかし、その攻撃はすぐに引き戻された剣に弾かれ軌道をズラされてしまった。


 その間、横からすきを伺っていたリーは蓮人には当たらない位置からゴブリンへウインドアローを放つ。

 それは大きく後ろへ跳ばれ、距離を取られることで避けられてしまった。


 そしてお互いが睨み合う膠着状態となる。


「あの武器、普通のゴブリンが持ってる剣とはレベルが違う。黒い瘴気のせいで武器の性能までかなり上がってる」


 1度刀を合わせた蓮人が剣を使う2人にそう伝える。


「ああ、そうらしいな。しかし我々の剣の方が劣っているというわけではないようだ。それならばやりようはあるはずだ」


 リアムが力強くそう言う。


 膠着状態がしばらく続きどれほど経ったのだろうか。

 体感としては何時間も経っている気がするが、実際は数分といったところか。

 そのとき、事態は急速に動き出す。


「ギャァァァァァ」


 ゴブリンが大声で奇声を上げながらいきなり崩れ落ち、苦しみ始めたのだ。


「な、なんだ?」


 蓮人達は突然のことに驚きを隠せないがとりあえずその場から離れて距離をとる。

 そうしている間にも黒い瘴気がどんどんゴブリンの体から溢れ出し、そして体中を覆っていく。

 その様子は黒い瘴気がゴブリンを捕食しているように見えた。


「ゴブリンを、食べているのか……?」


 蓮人のその呟きに返事を返せる者はいなかった。


 ゴブリンの苦しむ声も黒い瘴気が覆っていくごとに小さくなっていく。そして声がプツンと途切れ、周囲は全くの沈黙に静寂に包まれた。

 そのときにはもう既にゴブリンも、黒い瘴気も跡形もなく消え去っているのだった。


 突然の出来事に、誰も状況を理解出来ていない。

 ひとまずギルドマスターはリアムを引き連れてそのゴブリンがいたはずの場所を調べている。

 ホワイトストライプスは馬車の側で護衛の続きだ。


「リー、あれなんだったと思う?」


「根拠はありませんが、村で襲われたあのモンスターと同じようなものではないかと思っています」


「俺もそれに賛成だな」


「私も同感ね」


 オリビアも話に混ざってきて同意する。


「問題は、あの黒い瘴気は何なのかだ」


「ちなみに心当たりは?」


「あったらこんな風に悩んでないよ」


「それもそうね」


 分からないことが多すぎて話をすることも出来ない状態だ。

 その間に調査を済ませたギルドマスターとリアムが帰ってきたのだが表情が暗く、見てわかる通りそこにゴブリンがいたという痕跡すらなかったそうだ。


 これ以上立ち止まれば門が開いているうちにガサラに到着出来ないということなので、また馬車に乗り込んでガサラへ出発する。

 その馬車の中では口を開くものはいなかった。


 そして、それらの光景を空から見下ろしている人物がいた。


「やっぱりゴブリンじゃあの瘴気の量には耐えられなかったか。

 まあ次だね」


 そう呟く、あのときの黒いローブを着た男がいた。

 しかし、その存在に気づいた人物はいない。

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