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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
83/170

83 黒いローブの男に、異世界へ

 「ふう、終わったか……」


 蓮人はその場に手足を投げ出して倒れ込んだ。その周りに皆が寄ってくる。


「ほら、シャキッとしなさいよ。さっさと村に戻るわよ!」


 オリビアが蓮人を無理矢理起こそうとする。


「分かったから、ちょっとだけ休憩させてくれ……」


 蓮人のその願いは聞き届けられることなく皆歩き出していた。

 どうやらムサシも連れて行かれるようだ。命の恩人ともいえるオリビアの頼みを断ることはできなかったのだろう。


「待ってくれよー」


 蓮人は慌てて体を起こし、3人の後を追う。


 そのとき、視界の端に誰か人が立っているのが見えた。


「――――誰だ!」


 そこには真っ黒なローブを着てフードを目深に被っている男が1人いた。

 蓮人は刀に手をあてていつでも抜けるように備えておく。

 また、蓮人の切羽詰まった大声に先を歩いていた3人も視線を男へと向ける。


「ふっ……」


 その男は蓮人を見て鼻で笑った後、そのまま自分の影の中へ沈み込むように消えていった。

 そのとき、一瞬だが目深に被っているフードが軽く浮き上がった。

 そのときに見えた顔は蓮人にとった見覚えのあるものだった。


「健吾……?」


 そう、蓮人が日本にいた頃唯一と言っていいほど仲の良かった親友だ。


「おい、待てよ!」


 蓮人は引き止めるのだが、言われた通りにしてくれるわけもない。

 そのまま影の中に沈んでいき、消えていく。

 姿が見えなくなった時、気配も完全に消えたのだった。


「蓮人さん、今の誰なのですか!?」


 ただ事ではなさそうな蓮人の様子にリーは駆け寄ってきて尋ねてくる。


「あ、ああ、いや、何でもないよ……。

 それよりも早く村へ戻ろうか」


 今度は蓮人が3人を置いて村へ向けてずんずん歩いて行くのだった。







 そうして村へ戻った4人の姿は村長の家の客間にあるのだった。そこにはギルドマスターの姿もあり、既に報告を終えた後である。


「なるほど、何があったのかはよく分かった。それで、その隣の武士はなんなんだ?」


「そうですね、約束通り教えて貰わないと」


 話題は倒したモンスターの話からムサシへと変わり、ムサシと蓮人へと視線が集まる。


「分かったよ……こいつと会ったのは、前に村に来てガンズローゼズに襲われた時のことだよ」


 そうして蓮人はムサシと戦ったこと、名前を付けると光り輝き、そして言葉を喋ることができるようになっていたことを話した。


「なるほど、それで結局ムサシは何者なんだ?」


「俺は、ガンズローゼズによって改造されて変異したオーガだと思ってる。

 ガンズローゼズの幹部のやつが持ってた紫色の液体がムサシに注入されてた痕があったんだよ。おそらくそれだと思う。

 そうだよな?」


 蓮人はそう言った後、黙って話を聞いていたムサシに確認をとるのだが、


「すまない、我には名を付けてもらったことよりも前の記憶がほとんどなく、薄らと蓮人と戦っていたことしか覚えていないのだ」


 ムサシに謝られてしまった。


「いや、気にするなよ。仕方ないさ」


「真相は闇の中ってやつか。となると今日現れたモンスターもムサシのように変異させられた何かの魔物の可能性があるのか」


 ギルドマスターは考え込む。しかし、その可能性を蓮人は否定する。


「いや、おそらくだが犯人は違うだろう。ガンズローゼズのボスは俺が倒したし、組織は潰れてるはずだからな」


「……やっぱり、今日モンスターを倒した時にいたあの黒いローブを着ていた男が犯人ですかね」


「私もそう思うわ。用もなしにあんなところにいるとは思えないもの」


 こんな風に、結論はあの黒のローブを着た男が犯人であるということになり、一旦報告会が締められる。

 ムサシは助けてくれたお礼ということで獣人族の村へ滞在することが許され、村にいる間は蓮人達と行動を共にすることになった。

 とりあえず今朝寝泊まりしていた家へと帰る。

 そこで蓮人はずっと気になっていたことを尋ねる。


「オリビアって魔法使えたんだな、かなり驚いたよ」


「まあね、一応これでも王国トップクラスの魔法の使い手と言われているからね」


「「えええええ!?」」


 リーと蓮人の驚く声が揃った。


「あら、本当に知らなかったのね。この村に来るまでの護衛、一国の王女の護衛にしては人数が少ないと思わなかった?

 あれは私が魔法を得意としていて、並大抵の魔物や盗賊には負けないことが分かってあるからよ?」


「「な、なるほど……」」


 蓮人とリーは無知な上に考えが及んでいなかったことに赤面して俯く。

 2人は密かにもっと社会勉強することを決めたのだった。

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