82 助けが来て、異世界へ
リーの頭上に鋭い爪が振り下ろされている。蓮人にはそれがやけにスローモーションに見えた。
しかし、見えているだけで体は動いてはくれない。
(くそくそくそくそ……誰かリーを助けてくれ……)
そのときである。
真っ赤な炎がモンスターの爪を燃やし、弾き飛ばしたのは。
「え……?」
リーも蓮人も突然起こったことに驚いて動くことが出来ない。
「2人とも、私の護衛として雇われているんだからさっさと倒して帰ってこないとダメじゃないかしら?」
2人が向いた先には指先に燃え盛る種火を出しているオリビアの姿があった。4メートル程の高さのところから蓮人達の方へ飛び降りて近づいてくる。
「オリビア……? なんで……?」
「なんでって助けに来てあげたに決まってるでしょ? 私こう見えて強いのよ?
それでリー大丈夫?」
「はい、大丈夫です! ありがとうございました!」
リーは怪我をしている様子もない。それを確認したオリビアは笑みを浮かべ、そしてモンスターに向き合う。
モンスターは突然現れ、かなりの威力の火属性魔法を放ってきたオリビアを警戒している。
「お礼ならいいわよ。それより、早くやっつけちゃいましょう」
「そうだな。聞いたいことはいっぱいあるけど、とりあえず後回しだな」
「それはこっちのセリフよ、あの武士の話聞かせてもらうからね」
蓮人とムサシは刀と大太刀を構え、攻撃する体勢を整える。
「私がもう1発炎を撃つから、その隙をついて2人は斬りかかりなさい。
その後の援護は私とリーでやるから、2人は攻撃することを考えなさい」
「はいよ。じゃあ初っ端どでかいの頼むよ」
その言葉に従い、オリビアはとんでもない量の魔力を練っている。
「炎よ!」
オリビアがそう声を上げると共に手をモンスターに突き出す。
そこからは今まで見たことの無いほどの業火が生まれ、そしてモンスターへと向かっていく。
かなりの大きさの業火により、モンスターは避けることも出来ず直撃する。
その瞬間、火柱が空高くへ上がった。それと共に熱風が蓮人達に届き、周囲の温度は一気に数度上がる。
「おい! あんなの俺達近づくことも出来ないだろ! というかもう死んだだろ!」
「多分、あのモンスターまだ死んでないわよ? 攻撃に備えておきなさい」
半信半疑ではあるがオリビアの言う通りに従って刀を構えて火が収まるのを待つ。
そして火が鎮火し、煙も晴れた。
そこには体の殻が黒く焼け焦げ、受けた傷から出ていた血も蒸発しているが、まだ生きているモンスターがいた。
しかし、重傷であることは間違いない。
「ほら、早く行ってきなさい!」
オリビアの言葉に従い、無属性魔法を全開にして発動させた蓮人はモンスターへと肉薄する。
モンスターは迫り来る蓮人に構えをとるが、先程までの俊敏な動きは見る影もない。
なんとか爪を出して振り下ろされる蓮人の刀を受け止めることは出来たのだが、そのまま膝をつく。
そして、音もなくモンスターの後ろへと回り込んだムサシは刀を受けている左腕に大太刀を振り下ろす。
幾度も刃を通さず弾き返していた殻はなんの抵抗もなくムサシによって切り落とされた。
モンスターは左腕のあったところから緑色の血飛沫を吹き出しながら奇声を上げる。
あまりの声の大きさに蓮人達は耳を塞いでしまった。
「うるさい!」
オリビアは人差し指を突き出す。そこから火の熱線ともいうべきビームのようなものが発射された。
それは左肩に命中し、そこを焼き尽くす。
「これで血は止まったでしょ?」
傷口を焼かれたことにより血は止まっていた。
「うわ、えぐ…………」
あまりの酷さに蓮人はそう呟いてしまう。
「いいから早くトドメをさしてきなさい!」
「はい!」
人差し指の先に炎を生み出し、クルクル回しているオリビアにそう脅された蓮人は慌てて刀を構え直し、モンスターに肉薄する。
モンスターは最早瀕死であり、近づく蓮人にも気づいていないようだ。
それに構わず、蓮人は刀を袈裟斬りに振り下ろす。
そのまま後ろへ大きくジャンプして下がり、そして刀を鞘へしまう。
その瞬間、モンスターの体は真っ二つに別れ、別々に崩れ落ちたのだった。
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