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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
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78 二日酔いで、異世界へ

 それから始まったのは飲めや騒げの賑やかなパーティーだ。そこでは獣人族も人族も関係なく、皆が楽しんでいる。

 オリビアは雛壇の上で料理を楽しんでいた。時々、「この料理は王国でも……!」などのような一人言が聞こえたので使者としての仕事を全うしているようだ。

 一通り料理を食べ終えて満足した様子のオリビアは雛壇を下りてタロと一緒に話しながらご飯を食べている蓮人とリーの横へ腰を下ろした。

 その瞬間、タロにグラスを渡されて並々とお酒を注がれる。


「おう! 飲め飲め飲め飲め!」


「おおー、オリビア飲めよー」


 タロも蓮人も酒臭い。というか最早ベロベロに酔っ払っている。酔っぱらいのウザ絡みというやつだ。


「いえ、遠慮しと――」


「おうおうおう、俺の酒が飲めねえのかい!」


「そうだ! 飲めねえのか!」


 オリビアは断ってグラスを返そうとしたのだが2人はそれに怒り出す。

 オリビアは大きな溜息を一つ吐いた。


「仕方ないわね、この1杯だけよ?」


 そう言って上品な仕草でお酒を一息で飲み干す。

 口に入れた瞬間にふわっと果実の香りが広がり、その後に果実の甘みが伝わってくる。かなり飲みやすいお酒で美味しい。これは蓮人やタロがこんなになるまで飲んでしまう気持ちも分かる。


「これとっても飲みやすわね、美味しいわ」


「いい飲みっぷりだ! 気に入ったぞ! もっと飲めや!」


 タロはオリビアが飲み干して下に置かれているグラスにまたお酒を注いでいた。


「……ったく、仕方ないわね」


 そう言ってオリビアはまた飲み干した。そして今度はお返しとばかりにタロと蓮人にもお酒を注ぎ返す。


「ほら、私のお酒は飲めないの?」


「いや飲ませてもらうぜ」


「飲ませて頂きます」


 そう言ってタロと蓮人も一息で飲み干す。そしてまたオリビアのグラスにお酒を注ぎ返す。

 それがタロと蓮人が酔い潰れるまで何度も続けられたのだった。

 ちなみにだがリーは被害に遭わないようにそこから離れて遠巻きから見ていた。








 そして次の日の昼過ぎである。蓮人はパッと目を覚ました。


「うう、頭がいてえ……」


 頭を抑えながら上半身を起こして周囲を見回すと、そこは特に家具といったものもなく見覚えもない部屋だった。


「俺昨日何してたんだっけ……。確かタロとオリビアとお酒を飲んでたことは覚えてるけどそこから記憶ないな……」


 酔っぱらいの鏡である。

 とりあえず水が飲みたくて部屋を出て階段を降りていくとそこにはリーとオリビアがいた。


「あ、蓮人さん! おはようございます」


「遅かったわね、おはよう」


「ああ、おはよう。水貰えるかな?」


 テーブルに置いてある水差しから水を貰って一息で飲み干した。


「うう、頭が痛い……」


「あら、二日酔いなの?私にお酒を飲ませてくるから当然の報いね」


 そこで蓮人はオリビアに潰されたことを知る。

 このときオリビアには今後絶対お酒を吹っかけるのはやめようと決めたのであった。


「それはそうと、この村の中見て回らないかしら? お昼ご飯を食べに行きましょ」


「いいですね! そうしましょう!」


 オリビアの提案にリーもノリノリである。蓮人は二日酔いで胃がムカムカしてご飯を食べようと思わないが外の空気を吸いに行くのも悪くないと思ってついて行くことにした。


 そうして3人は家を出て村の中を色々歩き回っていたのだが、通っていく獣人族は皆オリビアとリーに向かって手を振ったりおはようなどの挨拶をしていることに気づいた。


「あれ、いつの間にそんなに仲良くなったんだ?」


「あなたとタロが潰れたあと、リーと2人で色々周りを歩き回ってお話していたからよ」


 惜しいことをしたなあと思いながら人気の2人の後ろをとぼとぼ歩く蓮人であった。

 そんなこんなで3人は途中で見つけたコロッケなどを売っているお店を見つけたのでそこで数個買って近くのベンチに腰を下ろして一息つく。


「あら、これとっても美味しいわ!」


「本当です! とっても美味しいです」


 オリビアとリーが絶賛する。それに興味を引かれた蓮人は1口食べてみた。


「おお、うまいな!」


 二日酔いでも胃にもたれることなくすっと入ってくる。

 3人はそのまま談笑しながらコロッケを食べ進める。


「まさか私がこんな風に外を出歩けるなんて思わなかったわ。王都ではどこに行くにも護衛やらなんやらでうるさかったからね」


 楽しげで満足そうだ。

 しかし、そんな時間はあまり長くは続かないものだ。また門のあたりが騒がしくなってきている。


「なんでしょうあれ」


「とりあえず行ってみよう!」


 3人は人だかりの方へ走っていく。

 すると目の前には血だらけで倒れている1人の獣人族の男がいた。そして途切れそうな意識を必死に繋ぎとめて声を出す。


「でっかいモンスターが現れた……。やばいぞ……」

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