77 歓迎パーティーが始まって、異世界へ
その他諸々重要な話を済ませていく。どの話も全てがすんなりと通っていった。村の新たな門出としては良いことだろう。
そうして一区切りが着いた頃だ。村長は窓の外を眺めて驚いている。
「もう真っ暗ですなぁ。今日のところはこれでお終いにして後日ということでどうです?」
オリビアも窓の外を見て時間が経っていることに驚いていた。
「そうですね、今日のところはそうしましょう」
一緒に通された蓮人達は難しい話に疲れ切っていたし、ポチに至っては眠っているのでありがたい話だった。後日また開かれる話し合いには絶対参加しないことをひそかに心に決めるのだった。
「さてさて、そうと決まれば外へ出ましょうか。おそらくパーティーの準備も出来上がっているでしょう。いやー、楽しみですなぁ」
村長はまたフォッフォッフォッと笑い声を上げている。
「あら、それは非常に楽しみです。移動の最中にも蓮人やポチちゃんから獣人族の美味しいご飯の話をよく聞かされていたので興味があったのです」
「それはそれは光栄な話ですなぁ。是非楽しみにしておいてくだされ」
そんな会話をしながら外に出ると扉の前には村に着いた時に案内してくれた秘書のような女性の獣人族の人がいた。
「まもなくパーティーが始まります。こちらへおいでください」
そう言ってまた先頭に立って案内を始める。
案内された先はこの前大きなパーティーをしたのと同じ広場であり皆が1つの大きな輪になっているが、前回と違うのは雛壇が設置されていることだろうか。
オリビアはそこへ案内され、1人上の席に座らされる。
オリビアは私も下がいいという顔をしているが王女という立場上どうしても無理だろう。
蓮人達はその雛壇の隣に腰を下ろす。ポチは両親の元へ戻らせた。帰ってきた時くらいは一緒に居させてやらないとね。
周りには他の使者4人やギルドマスターがいないので当たりを見回してみる。
どうやら蓮人達が話し合いを行っている間、それぞれ獣人族と交流を行っていたようだ。獣人族に挟まれて座って仲良くおしゃべりしている。
(皆仲良くなってるみたいで良かったなぁ)
そんなことを考えて辺りを見回していると、何かが後ろから蓮人に肩を組んできた。
「そんなにキョロキョロして俺を探してんのか? いやー、モテる男は辛いねぇ」
そんなことをしてくる男はタロしかいない。
「いやー、残念だけどお前を探しているつもりは全くなかったよ」
蓮人も肩を組みかえしてそう言う。
「冷てえやつだなぁ。そこはお世辞でも会いたくて仕方なかったくらい言っとけや」
「んじゃあ、タロに会いたくて会いたくて震えてたよ」
某恋愛の曲のような歌詞を持ち出してくる蓮人。
「んー、やっぱ気持ちわりいからやめてくれや」
そうしてタロと蓮人はお互い軽口を言いながら笑い声を上げた。
そんなやりとりをリーはにこやかに、オリビアは少し羨ましそうに見ている。そんな視線に気づいたタロは周りにも挨拶する。
「おっす、リーちゃん。無事にまたこっちに来られて良かったぜ」
タロはそう言って親指を突き上げてニヤリと笑う。
「お久しぶりです、タロさん。本当に全員無事にこっちに来られて良かったです」
「んで、蓮人。この上に乗ってる人は誰だ?」
無礼にもオリビアを指差して言う。
「ああ、ウェスナ王国第1王女のオリビア様だ」
「王女!? これは失礼しました!」
タロはひれ伏すように謝り倒す。
「気にしなくていいわよ、私もお堅いのは嫌いだから」
タロはそれを聞いてちょっと安心したように、蓮人に本当か目で尋ねてくる。蓮人はそれに頷きを返してやった。それでやっと安心しきったのか胸を撫で下ろしている。
「いやー、焦ったぜ。不敬罪とか言われるのかと思ったよ」
「俺達もそんなんで変わんねえから安心しろ」
そんなやり取りをしている間に村長が輪の中心で大声を上げた。
「皆の者聞いてくれ。今日は人族の客人が来ておるので、そこに座っておられる方だけでも紹介しようと思う」
そう言ってオリビアを手差しでみんなの視線をそちらへ向けさせて話を続ける。
「ウェスナ王国第1王女のオリビア・ウェスナ様じゃ。くれぐれも粗相のないようにな」
オリビアはその紹介に合わせて雛壇の上でだが軽くお辞儀をした。
「挨拶はこれで終わりじゃ。これから歓迎パーティーを始める。楽しんでおくれ」
ようやく楽しいパーティーの始まりだ。
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