73 ギルドマスターと話をして、異世界へ
ギルドに着いた蓮人達はそのままギルドマスターの部屋に通された。オリビアがいわゆるお誕生日席に座り、ホワイトストライプスの3人がギルドマスターと向かい合うように座る。アンはオリビアの横でひっそりと立っている。
「では早速ですが私が父から言われてきたことをおおまかにですがお伝えしたいと思います」
オリビアは単刀直入に話を切り出す。他の面々はその話に耳を傾ける姿勢になる。
「まず、ヴェスナ王国は獣人族と友好的な関係を結びたいと考えております。
具体的には人族と獣人族の交流や、輸出入などを出来れば良いと考えているようです。
また、受け取った書類に、ゆくゆくは国として独立し全世界の国に公表したいといったこともかかれていたので、そのことへの協力も惜しまぬ所存です。
なので、私は使者としてその価値があるのかどうか、また輸出入するにはどういったものがあるのかどうか、という点も調査してくるように言われておりますので、その辺は理解して頂けると幸いですわ
これが私が言われてきたことです」
オリビアの無駄のない簡潔な話でヴェスナ王国の対応の仕方が説明された。
蓮人達からすれば友好的な関係を結びたいと言っていることから一安心だ。実際に村に行ってご飯を食べて獣人族に触れ合ってきた限り、関係を結ぶことに価値がないと思われることもないと分かりきっている。それほど獣人族が作る食事は美味しかったのだ。蓮人は主に白米を浮かべているのだが。
「なるほど、よく分かりました。それで出立の日時はどうなさるのですか?」
ギルドマスターからすればその辺の政策はあまり関係のない話で、それよりも王女様がいつ嘆きの森へ出発するかの方がよっぽど重要な話である。もちろん戦争を起こすというのならば断固反対だが、友好的な関係を結びたいと言っている以上問題は無いのだ。
「そうですね、すぐにでも出立したいところなのですがここまでの移動の疲れも考えて3日後ってとこでしょうか」
オリビアは一瞬考えてからそう言う。
「なるほど、分かりました。ではそれまでの王女様の宿はこちらで用意させて貰ってもよろしいですか?」
「それは助かりますわ、よろしくお願いします」
ギルドマスターはそれでこの場を終わらせようとしたのだが、それはオリビアにとめられた。
「まだ最後に一つだけ相談があるのですがよろしいでしょうか?」
「なんでしょうか?」
「嘆きの森へ入るにはBランク以上の冒険者でなければならないと聞いているのですが、今回私達が連れてきた護衛でBランクなのはホワイトストライプスのみなのです。
そこでここで冒険者に依頼を出したいと考えているのですが、その手続きも今して貰えないでしょうか?」
ギルドマスターはオリビアのその言葉に渋い顔をして考え込む。そして重い口を開いた。
「依頼そのものを出すのは構いませんが、今Bランク冒険者はほぼ全員依頼で出かけていて、集まらない可能性があります。それでもよろしいですか?」
「はい、居ないのなら仕方ありませんのでそれで大丈夫ですわ」
その他諸々、報酬や期限、人数などの詳細を決める。それで全ての話が終わり、お開きとなった。
「ではギルドの前にまた馬車を止めているのでそれで宿へどうぞ」
そう言って王女様へ一礼するとそのまま蓮人へ向き直り、
「蓮人達も今日は王女様と同じ宿は泊まりな。あとギルドからの依頼は達成ってことにしておくからまた後でレノから報酬受け取ってくれ」
「分かりました、また来ますね」
そう言って全員出ていき、部屋にいるのはギルドマスターのみとなる。
立派な椅子にドカッと座り込み、机の上にある水差しから水をコップに入れ一息で飲み干す。
「はあ、多分あたいが行かないといけないんだろうなぁ……」
疲れたような顔を浮かべて背もたれへもたれかかるのだった。
一方馬車に乗り込み宿へと向かっている蓮人達である。
「護衛の件、なんとかなりそうで良かったですね」
リーが何かを考え込んでいるオリビアに話しかける。それにはっとしたオリビアはどこか上の空のような感じで返事を返す。
「え、ええ、そうね。良かったわよ」
ギルドマスターに会うまでの様子とは全く違う。そしてギルドマスターも今まで見たことのない態度で終始疲れている様子だった。
蓮人はそのことから過去に何かあったのだろうと思うがそれは心に留めておくのだった。
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