72 ガサラに到着して、異世界へ
襲ってきたモンスターの後始末も終わり、ガサラへ向けてもう一度出発する。
その馬車の中ではさっきのモンスターとの戦いについて詳しく尋ねられるのだった。それを軽くあしらっているとすぐにガサラが見えてきた。
「お! ガサラが見えてきたぞ!」
「本当ですね。それにしてももう帰ってきちゃいましたね。もう少し王都でゆっくりしたかったです……」
リーはガサラが見えきたことに、嬉しそうなしかし少し寂しそうな顔をしている。
「まあそれはこの依頼が無事に終わってからでいいんじゃないか?」
「それもいいですね!」
「ええ、是非そうしなさい!」
蓮人の一言でリーは元気を取り戻した。しかし、オリビアまで元気になったのだ。
オリビアからすればやっとできた友人のような存在なのだ。その友人が王都へ遊びに来ると言えば喜ぶのも当たり前だろう。
「とりあえず今は先のことは置いといて、ガサラへ着いたことを喜ぼうぜ」
そんな話をしている間もガサラの街の門は近づいてきている。
その門の前に何やら人が集まっているのが蓮人の目には見えた。余談だが蓮人の目は現代の日本人とは思えないほど良いとだけ言っておく。
「なんか人集まってるんだけど何か知ってる?」
その蓮人の問いにはオリビアが答える。
「ガサラへは早馬を走らせて事前に私が行くってことを伝えてあるからね。そのお出迎えってところじゃないかしら」
「なるほど、王女様だもんね」
蓮人はうんうんと首を縦に振って頷いている。
「蓮人さん、今だからいいですけど街に着いたら王女様にも敬語使ってくださいね? さすがにまずいですよ?」
「まあ確かにそうね、今のメンツのときならば問題はないけどもさすがに他の目があるところではまずいかも」
リーとオリビアから苦言を呈された。その内容は蓮人にもそうするべきものであると分かったので素直に頷くことにする。
「到着したようです。1度降りて頂いてもよろしいでしょうか?」
アンからそう言われたので素直に馬車から降りたのだが、そこにはギルドマスターや他にも知らないがお偉いさんであろう人が何人も立っており、その人達は全員オリビアの姿を見た瞬間片膝をついた。
そして代表してギルドマスターが口を開く。
「ようこそおいでくださいました、王女様。お着きになられるのを一同心待ちにしておりました」
普段のギルドマスターからは考えられないほど丁寧な口調だ。その様子に違和感を覚えた蓮人は吹き出しそうになるが横にいるリーから二の腕を摘まれたことによってなんとか耐える。
「皆様ありがとうございます。お話したいことは沢山あるのですが、そこにおられるギルドマスター様とお話しなければならないことがございますので、またの機会にお願い致します」
オリビアは馬車の中にいた頃とは違い、威厳に満ち溢れている。それにあてられたギルドマスター以外の者は一言「では失礼致します」とだけ行ってその場を去っていった。
全員その場を去ったのを確認してギルドマスターは口を開く。
「そのお話というのはギルドの部屋でもよろしいでしょうか?」
「はい、そこでよろしいですわ。案内して頂けますか?」
「承知しました。では馬車へお乗り下さい。ギルドの前までご案内致します」
そう言ってギルドマスターは後ろにあるギルドの所有物の中では最高級である馬車を手差しして乗るように促す。
オリビアはそれに頷いて早速乗り込み、アンもそれに続く。
ギルドマスターはそれを見て疲れたように一息ついた。
「ほら、お前らも護衛ならさっさと乗りな。早くギルドへ行くよ」
それに従って3人も馬車に乗り込み、最後にギルドマスターも乗り込む。普通の馬車よりは広いとはいえ、6人も乗ると狭い。
ギルドマスターもオリビアに窮屈な思いをさせるわけにはいかないと考えたのか蓮人とリーとポチの3人が座っている方に無理矢理座りこもうとする。それによってポチが潰れそうになっていた。
「ポチちゃん、こっちへおいで」
見かねたオリビアがポチを抱き上げて膝の上へ座らせる。
「ポチはそこじゃないと違和感感じるようになってしまったわ」
「私も同感ですよ」
蓮人達の王族に対するものとは思えない態度にギルドマスターは驚き呆れている。
「あんたら、そんな言葉遣いとかでよく不敬罪で処罰されなかったね」
「まあ王女様からそうしろって言われてるしね」
「ええ、そうですわ。だから気にしなくていいわよ」
ギルドマスターはまた疲れたようなため息をつくのだった。
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