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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
70/170

70 1日目の野営に、異世界へ

 蓮人の間抜けな驚く声に笑いが起きる。


「ほら、あなたもこのおバカさんみたいに楽にしてくれていいわよ」


 オリビアは笑いながらリーへそう言う。


「さすがに口調までは……。でも私も楽にすることにしますね」


「まあ今はそれで我慢していてあげるわ」


 我慢すると言っているのだが満更でも無い様子だ。


「リーは俺にですら敬語もどき使うもんなぁ。そりゃあ王女様に口調崩せるわけもないか」


 痛いところをつかれたとリーは慌てて弁解を始める。


「私は小さい頃からこの話し方だったので、今更変えることが出来ないんです! 別に敬語を使おうとしてる訳じゃないです!」


 そのリーの必死な様子にまた笑いが起きるのだった。


「ふふっ、あなた達は本当に面白いわね、ポチちゃんも可愛いし」


「それはなんか喜んでいいか分からんけど、とりあえずありがとうと言っておく」


「そうですね、確かに褒められている気はしませんが、ありがとうございますと言っておきましょう」


 楽しくて仕方がないというようにずっと口元が緩んでいる。


「今回の旅もまたつまらないものになるかもって思ってたけど、それは間違いだったわ。とっても楽しめそう。ポチちゃんも可愛いし」


「それは俺らのおかげでなくポチのおかげでは……?」


「あながち間違いでもないかもしれないわね」


「やっぱりそうなんですね」


 この会話の中で気づかないうちにポチを抱きしめる強さが強くなっていた。そのせいで顔を青くしながら起きてきた。


「ぐるじぃ……」


「あら、ごめんなさい。またやってしまったわ」


 恨みがましい目でオリビアを見ているが膝の上から退こうとはしないので、案外気に入っているのかもしれない。


「そうだわ、まだまだご飯までの時間もありそうだし、あなた達の冒険の話を色々聞かせてよ。出会いの話とか」


「そんなの聞きたいのか?」


「ええ、とっても興味あるわ」


 目をキラキラさせながらこちらを見てくる。


「うーん、じゃあご飯までな?」


 そう言ってリーとの出会いの話から話し始める。

 もちろん蓮人が異世界から来たことは伏せ、名前もない小さな村出身で、少しばかり腕に自信があったため冒険者となるためにガサラへと向かっている途中でゴブリンに襲われていたところを助けたという設定だ。


「まだ2ヶ月前くらいのことなんですけどとっても懐かしいですね。かなり前のように感じられますよ」


「んー、確かにそうだなぁ。もっと前のように感じるよ」


 蓮人とリーは遠い昔を懐かしむような目をしている。その様子を見ているポチとオリビアはどこか羨ましそうな目で見ている。

 確かに、ポチも何らかの原因、おそらくガンズローゼズのせいだとは思われるが昔の記憶が曖昧であり、オリビアも国王の娘という立場上そんな経験がない。

 蓮人とリーのように誰かと共有出来る思い出がほとんどないのだ。羨ましくなるのも仕方ないだろう。


「いいなぁ……」


 オリビアからボソッと心の声が漏れてしまったが、その声は蓮人とリーには届かない。しかし、膝の上に座っているポチには聞こえたようだ。

 ポチはお腹に乗っているオリビアの手をギュッと握る。そのポチの優しさがやけにオリビアに染み込んでいった。


「ありがとう」


 今度は優しくギュッとポチを抱きしめるのだった。


 そうしているとアンが夜ご飯の準備が出来たと馬車へと来たことによって話は終わり、ご飯の時間になる。

 アンが手際よく料理を始めるのを見ていただけあって期待が高まっていたのだが、期待通りだったようだ。馬車をおりた瞬間に香ってきた匂いで確信する。


「いい匂いがする!」


 ポチはクンクン匂いを嗅いでいる。今にもヨダレを垂らしそうだ。


「今日のメニューは簡単ではございますが、牛のステーキ、野菜のスープ、白パンでございます」


 ポチは献立を聞いて目をキラキラ輝かせているが、蓮人とリーは少し引きつったような笑みを浮かべている。


「スープはともかくステーキと白パンって、一応野営だよな?」


「野営とは思えない豪華さですね」


 蓮人とリーの感想はそれ一択である。野営を繰り返す移動では普通保存のきく黒パンや干し肉を持ち歩くはずだ。にも関わらず保存のきかない白パンやこの場で生の肉を焼いたステーキなどが出ている。驚くのも仕方ないだろう。


「ガサラまでの道のりは危険が少なく短いため、ある程度はそんな余裕があるのです。お2人もどうぞお食べください」


 アンからそんな声をかけら、周囲を見渡すと、ポチやオリビアはもう料理を受け取って食事を始めている。ポチは目を輝かせて美味しそうに肉にかじりついていた。

 それを見た蓮人の腹の虫も早く寄越せと主張を始める。


「じゃあいただきます!」


 蓮人はそう言って料理を受け取り、食べ始める。


「うまい!」


 その美味しさを噛み締めながら食事を楽しむ。

 そうして1日が何事も起こることなく終了した。

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