63 王都に着いて、異世界へ
「やっと着いたなぁ」
蓮人はうーんと伸びをしながら馬車から降りてくる。
「本当に長かったですね」
リーもうーんと伸びをして降りてきた。
「ふわぁぁぁ」
ポチは欠伸をして目を擦りながら降りてきた。
「じゃああっしはこれで。ガサラに帰る際は、ここを真っ直ぐ行ったところにある店に声をかけてくだせえ」
そう言って馬車を走らせて行った。
「さあ、俺たちはどうする?」
「今日はもう遅いですし、宿を取ってご飯にしませんか? この時間なら王城も開いてないでしょうし、ポチちゃんも眠そうですから」
立ちながら寝ているポチを見ながらリーはそう言う。
「そうしようか。じゃあとりあえず宿を探そうか」
蓮人はポチの手を引っ張りながら歩いていく。
活気溢れる街を楽しみながら宿を探すのだった。
宿を探す途中で見つけた繁盛している大衆食堂を発見した3人は宿を取ってからそこに戻った。
旅費をギルドから負担して貰えると聞いた3人は遠慮の欠片もなく食べたい料理をどんどん注文していく。実際にはその8割はポチが食べたがったものなのは内緒だ。成長期の子はいっぱい食べないとね。
出てくる料理はどれも美味しく、3人は満腹になるまで楽しむのだった。
「もう食べられないや……」
「よく食べましたね……」
ポチは真ん丸に突き出たお腹をさすっているし、リーはそんなポチの様子を見て驚きを通り越して呆れている。
「さすがポチだよ……」
かくいう蓮人もしっかりと呆れていた。
でも今までとは比べられないほどの量を食べていたので仕方ないのだろう。
「王都に来るまでの間あんまりご飯食べられなかったから、お腹いっぱい食べられるとなると止められなかった……」
ポチは満足そうな顔をしているが本当に苦しそうだ。
「ポチもこんなんだし、もうちょい待ってから宿に戻ろうか……」
「うん、ありがとう……」
そのままポチは椅子の背もたれにもたれかかって目を瞑りだした。
その5分後寝息を立て出すのだった。
「あーあ、寝ちゃったな。仕方ない、おぶって帰るか」
「ふふ、そうですね」
ギルドから貰ったパンパンの皮袋からゴールドを取り出して食事の代金を払った蓮人達は店を出る。
結構な大金を貰っただけにこれだけ食べたのに全然減っていない。流石だ。
そうして宿までの道をとぼとぼ歩きながら帰っていたのだが、後ろから声をかけられた。
「おい、兄ちゃん、ちょっと待ちな」
蓮人とリーが後ろを振り向くと、そこにはかなりデカい筋骨隆々の男3人組がいた。
「なんの用でしょうか?」
蓮人は嫌な予感がしながらも話しかけられた以上は無視することも出来ず、とりあえず何の用か尋ねる。
それはリーも一緒だったのかそっと蓮人の後ろに回り込む。
「ちょっとその腰にある皮袋を置いてって欲しいんだわ」
蓮人がギルドから貰った旅費の入った皮袋を指差し、下品な笑いを浮かべながら言う。
「悪いけどこのゴールドは貰いもんだから人様に渡せるもんじゃないんだ。大人しく諦めてくれ」
「ほう? じゃあ渡したくなるようにしてやるぜ」
真ん中の男がそう言っている間に、隣の男2人は指をポキポキと鳴らしてこっちを睨みつけて威圧してきている。
「そう言われても無理なもんは無理なんだってば……。ったく、ちょっとポチ持っててよ」
蓮人はポチをリーに預けて血気盛んな男3人に向き合う。それまでの身のこなしから敵ではないということは分かっていたので軽くおしおきしてやろうと蓮人も構える。もちろん刀は抜かず拳でだが。
「やる気かよ、この野郎調子に乗るなよ!」
両端の2人が同時に殴りかかってくる。一般人からすれば避けられない速さのパンチかもしれないが、ムサシやワーウルフ達との戦いを制してきた蓮人には止まって見える速さだ。
身を1歩引くだけでそれらの拳を避けた蓮人は2人の鳩尾に1発ずつ拳を放つ。
もちろん耐えきれるわけもなく2人は呻き声を上げることもなく崩れ落ちた。
「この野郎! よくも!」
2人をやられた怒りで最後の1人も蓮人に殴りかかってくる。
顔めがけて放たれた拳を蓮人が左手で受け止め、残っている右手で相手の顎めがけてアッパーを食らわせる。
誇張することなく本当に3メートル程吹っ飛んでそのまま起き上がることは無かった。
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