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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
62/170

62 王都まで暇をして、異世界へ

 「暇だなぁ」


「暇ですね」


「スピー」


 蓮人達は馬車の中で暇している。ポチだけはリーの膝枕で寝息をたてて寝ているのだが。

 蓮人達は王都へ向けて馬車で移動を始めて2日目だ。どれだけ進んでも緑の覆い茂った山と広大な草原が続いているだけで代わり映えなく、飽きてしまっていた。

 日本では絶対に見ることの出来ない光景だったので初めのうちは気持ちよく眺めていたのだが、さすがに半日も同じ景色が続くと飽きてしまった。しかも王都に到着するまでまだ後2日ある。それを思うとため息が出てしまう。


「暇だなぁ」


 何も言うことがなくただ暇と連呼するだけなのだった。


そんなとき、御者から声をかけられた。


「すいません、モンスターが現れました。お客さんに頼むのもなんですが、お願いします」


 馬車を頼む際、護衛を雇うことも出来たのだが蓮人達は雇わず、モンスターが現れた際は自分達が守るという約束の元馬車の料金を安くしてもらったのだ。


「いえいえ、僕達が言い出したことなんでいいですよ。

 じゃあリー行くか、ポチは寝てるし置いておこう」


 蓮人は窓から顔を出して何のモンスターか確認しながらそう言う。たかがゴブリン5体がこちらに向かって来ているだけだったのでポチを起こすまでもないと判断したのだった。


 2人は馬車を降りて武器を構えてゴブリンの到着を待つ。約2分後、5体のゴブリンは到着すると同時に刃こぼれしている剣を抜いて振り上げながら、一斉に蓮人に向かって駆け出す。


「全員俺か、やってやるよ!」


 蓮人は振り下ろされる剣の全てを紙一重で避ける。その避けざまに刀でゴブリンの首筋を丁寧に斬りつける。

 ゴブリン5体を5回刀を振るだけで勝負を決めてしまった。

 どのゴブリンの死体にも首筋の大動脈にあたる部分が切れており、血を吹き出して倒れていた。

 それを見た蓮人は刀についている血を振り払ってから鞘に直す。


「お疲れ様です。日に日に刀の扱いが上手くなってますね」


 リーから労いの言葉がかけられた。最近暇な時間を使って刀を振り回していた甲斐があったようだ。


「ありがとう。さあ、この死体を片付けて馬車に戻るか」


 蓮人はそう言ってファイアボールを死体に放った。

 死体をそのまま放置しておくと腐ってとんでもない臭いを放ち出すので、討伐証明部位などを剥ぎ取った残りの必要のない部分は燃やす、もしくは土に埋めるのが暗黙のルールのようだ。


 しっかり燃えたのを確認してから2人は馬車に戻り、また王都へ向けて出発するのだった。


「暇だなぁ」


 蓮人はそれしか言うことがないのだった。
















 『高橋』と書かれた札があった家を離れてとぼとぼと歩いて帰っている一人の少年が居た。


「少年よ、高橋蓮人の行方が気になるか?」


 突然訳も分からない声が聞こえた。


「だ、誰だ!?」


 少年は人通りのない辺りをキョロキョロ見舞わたすが誰も見つからない。


「なんだ? 空耳か……?」


「いや、違うぞ? 訳あって姿を見せることは出来ないがしっかりと君のそばにいるぞ」


 少年は恐怖を覚えたが金縛りにあったかのように動くことが出来ない。


「まあまあ、折角会えたのだからゆっくり話でもしようじゃないか。高橋蓮人くんの行方に興味がないのかね?」


「……蓮人のこと何か知っているのか?」


「ええ、もちろんですよ。そのために蓮人くんのことを非常に心配しているあなたに会いに来たのですから」


 姿は見えないが低い声なのでおそらく男なのだろう。低い声で気味悪く笑っている。

 しかし、少年にとってそんなことはどうでもいい。最近探し回っている蓮人をやっと知っている者がいたのだから。


「おい! 蓮人は今どこにいるのか教えてくれ!」


「ふっふっふ、いいでしょう。

 彼はとある人に騙されてある所に連れ去られてしまったのです」


「お、おいなんだよそれ」


 少年は信じることが出来ないがもう何週間も行方が分からないだけに嘘とも言いきれなかった。


「私も助けようとしたのですが、相手が思いの外手強く助けることが出来ていないのです。

 そこであなたに協力を要請するために、今話しかけているのです」


「な、なるほど、分かった……」


 とりあえずだが少年は胡散臭いとは思いながらも納得した。


「どうでしょう、それで手伝っては頂けないでしょうか?」


 (うさん臭く信用できないけど、折角掴んだ蓮人の手掛かりを逃す訳にはいかない)


「分かった、俺にも手伝わせてくれ」


 その返事を聞いた声だけの男はまた不気味な笑い声をあげる。


「ふっふっふ、素晴らしい。それでは早速行きましょうか」


 そう聞こえたと思うと少年を夜の闇よりも暗い何かが覆った。

 一瞬でその何かは消えたのだが、もうそこには少年はいなかった。


「ふっふっふ、少年のこれからの旅路が悪に染まるように」


 そのまま声だけの男の気配も消え、その場所には何も残っていないのだった。

読んで頂きありがとうございます!

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今日の最後の部分の話ですが、覚えのない人は17話の最後の部分と繋がっているのでそちらを見てみてください!

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