60 ガサラに帰ってきて、異世界へ
ポチの獣化出来るようになったお祝いのパーティーは、翌日の朝早くに蓮人達が出発することによって早目に切り上げられた。
そうして次の日の朝、壊された門の前に蓮人達とハチとシロ、村長にタロもいた。
「じゃあ行ってきます!」
「うむ、頼んだのじゃぞ。ワシら獣人族の未来がかかっておるからのう」
村長は笑いながらそんなプレッシャーをかけてくる。
(うう、お腹が痛くなってきた……)
緊張したらくる精神的な腹痛だ。そんな蓮人を気遣うこともなく、タロがガッチリと肩を組んでくる。
「絶対また帰ってこいよ! 今度来たときには一緒に飲んで貰うからな、楽しみにしてるぜ!
リーさんよ、このバカよろしく頼むぜ!」
「ええ、お任せ下さい!」
タロはガッハッハと笑ってるいるし、リーもこのバカをお任せ下さいというように胸をどんと叩く。
「ちょっと、このバカってのは俺のことなの?」
「まあ細かいことは気にすんなよ」
「そうですよ。私にお任せ下さい!」
蓮人は釈然としない気持ちを隅においやって、ポチの方へ目を向ける。
ポチは家族水入らずで出発前最後の時間を過ごしていた。
ポチはハチとシロにきつく抱きしめられている。苦しそうだがどこか嬉しそうだ。
「頑張ってくるんだぞ」
「何かあったらすぐに帰ってきなさいね」
「うん!」
ハチとシロからの優しい言葉に、ポチは元気な返事をする。
「いってきます!」
「「いってらっしゃい!」」
ポチは嬉しそうな笑みを浮かべながら、元気な挨拶をして、蓮人の元へ駆け寄る。そうして蓮人達3人、ホワイトストライプスはひとまずガサラに向けて出発するのだった。
行きとは違ってモンスターに遭遇することもほとんどなく、急ぎ足だったため、その日の夕方にはガサラに到着することが出来た。
3人は早速ギルドへと向かい、扉を開けた。
ギルドの中は一日の依頼を終えた冒険者でいっぱいだった。レノは蓮人達を見つけたようでこちらに来ようとしているのだが、受付に人がかなりいたのでなかなか出来ないようだ。
なので蓮人達はギルドとくっついていて横にある酒場で食事をしながら待つことにした。
蓮人達の食事もだいたい終わりギルドからも人が減った頃、レノが疲れた顔をしながらも席にやって来た。
「おかえりなさい、無事なようでなによりです。
でもなぜポチちゃんがいるんですか?」
「連れて帰るところまではうまくいったんだけど、そこからまた色んなことがあったんだよ。その話をしないといけないから、悪いけどまたギルドマスターに話を通して貰えないかな?」
「こっちに来てやっと休憩出来ると思ったのに……」
レノから恨みがましい目で見られるが、そこは仕方の無いことだ。取り次いできてもらう。
レノが席を立ってから10分後、戻ってきた。
「ちょっとだけならいいから早く連れてこい、と言われましたので、早く来てくださーい」
それに従ってギルドマスターの部屋へ向かう。中に入ると、なかなかに不機嫌そうなギルドマスターがソファに座っていた。
「早く座って話を聞かせな。あたいは忙しいんだよ!」
「はい! 早速報告させていただきます!」
蓮人はおもわず敬礼してしまった。時間を取らせるなと睨まれてしまったので慌てて対面に座って報告を始める。
「単刀直入に話すと、僕達は獣人族の村に行くことは出来て、ポチを親に合わせることも出来ました。
そしたら村長に獣人族は人族に存在を隠すことをやめて交流を始めたいと言われたんですよ。
だからこの書類を出来れば王国の王様に渡して欲しいと頼まれたんです。
でもただの冒険者じゃそんなことは無理なので、ひとまずギルドマスターに報告しようとした次第であります!」
座りながらもまた敬礼してしまった。少しハマってしまったみたいだ。
「待て待て、間を端折りすぎてよく分からん。時間がかかってもいいから詳しく説明してくれ」
さっきまでの気だるそうな態度とは打って変わってしっかり話を聞く体勢になった。
「じゃあ1から説明しますね」
そうして蓮人はガンズローゼズが襲ってきたことと村長から話された意図を説明した。
「なるほど、確かにそうなってしまえば人族と交流を持った方が都合がいいのは確実だな。
それで預かっている書類というのは?」
蓮人は懐から封筒を出してギルドマスターに渡す。そのままギルドマスターは止める間もなく封筒を破いて中の書類を読み始めた。
「ちょ! 王様に渡せなくなるじゃないですか!」
「あたいは王様と知り合いだから問題ないよ、大人しく待ってな」
村長に言われていた王様に書類を渡すことは何とか達成出来そうだ。
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