59 打ち合わせに、異世界へ
村長の話が終わった後も興奮が冷めることなく、獣人族の人々が蓮人とリーに寄ってきて声を掛けてくれた。それに2人はしっかりと返答を返していく。
その流れも終わり、長い長いパーティーが終了した。
「また頑張らないとな」
蓮人はふーっと一息ついてから頬を叩いて気を引き締める。その横にリーが、地面に胡坐をかいている蓮人の膝の上にポチが座り込んだ。
「確かに、これからも頑張らないとですね」
「おいらも頑張るぞ! これからもよろしくな!」
2人とも蓮人に向かって笑いかけてくる。
「ああ、よろしくな!」
蓮人はまた3人で冒険が出来る事にニヤケが止まらないのだった。
「蓮人さん、頬が変に緩んでますよ……?」
「蓮人なんか気持ち悪いぞ!」
散々な評価だ。
「いいんだよ! さ、今日はもう寝るぞ!」
蓮人は足早に寝床に向かって歩き出す。それをリーとポチも笑いながら追いかけるのだった。
またリーと同じ部屋で眠ることになったのだが、この日は疲れ切っていたので前日のように悶々とすることなく眠りに落ちるのだった。
次の日、ギリギリ朝と言える時間に起きた蓮人達は朝ご飯を済ませた後、具体的な話をするために村長の家に向かうとそのまま昨日の客間へ通された。
「この手紙を街のお偉いさん達に渡してもらいたいのじゃ。出来れば国王に渡してもらえるとありがたいのう」
村長は封筒に入った書類を蓮人に手渡す。
「国王ですか、さすがにそれはどうか……」
さすがにただの冒険者の分際では会うことも難しいだろう。蓮人は素直にうなずくことが出来ず、考え込む。
「うーん、やっぱりまずはギルドマスターに見せるしかないよなぁ」
「そうですね。ギルドマスターは元Aランク冒険者ということですし、もしかしたら取り次いでもらえるかもしれませんし……」
リーもそう言ってはいるが尻すぼみに声が小さくなっていた。
(どうしよう、急に自信が無くなってきた)
昨日までのやる気はどこに行ったのやら。あまりのハードルの高さにもう挫けそうである。
「まあまあ、落ち着きなされ。ワシもそんな簡単に行くとは思っておらん。いきなり国王でなくても街でポチの姿を見せ、獣人族が実際に存在するということを広めるので構わん。
そうなれば国王もお主達を王城へ呼び寄せてくれるかもしれんしのう」
「そう言って貰えると助かります……」
蓮人とリーは申し訳なくて頭を下げてしまう。
「じゃあ、おいらはもうフードを被ってコソコソしないでいいってこと?」
ポチは村長に出してもらっていたお菓子を食べながらそう尋ねる。
「まあそういことじゃな。
じゃが、獣人族としって襲ってくる可能性もある。十分に気をつけるのじゃぞ。まあポチにはそんな心配の必要もいらないかもしらんがのう。なんといっても獣化できるようになったそうじゃからな」
村長はふぉっふぉっふぉと笑っている。確かに獣化したポチに勝てる人など、そうそういないだろう。
「それで、この書類を渡したあとはどうすればいいのでしょうか?」
蓮人はそれかけた話を戻し、続きを尋ねる。
「書類には幾人かの使者を送ってくれと書いておる。お主達もそれについて一緒にこの村へ来てくれると助かるのぉ」
「分かりました。時間がかかってしまうかもしれませんが、必ずやり遂げてみせますよ!」
「うむ、期待しておるぞ」
挫けかけた心に喝を入れてから封筒を受け取り、そのまま3人はポチの家に帰った。善は急げというし、早速ガサラ帰る準備をしなければならないのだが、
「おかえり。今日もお祝いでパーティーをするから、早目に帰ってきてくれて良かったわ」
料理をしているシロからそんな声がかけられた。
「なんのー?」
ポチがシロに駆け寄って尋ねる。
「ポチが獣化出来るようになったお祝いよ」
どうやらムサシと戦っていたときに、ポチが獣化したことを聞いたらしい。
「獣化出来るようになることが、いわゆる成人みたいな扱いなんですか?」
「蓮人さん達は知らないだろうけど、獣化出来るのは限られた獣人族だけなの。
そして限られた獣化できた人達の中から次の村長が選ばれる決まりで、ポチはその条件を満たしたから、とってもめでたいことなのよ」
(なるほど、だからムサシと戦っていた時も誰も獣化していなかったのか)
ポチはあまり分かっていないのか、また美味しいご飯が食べられることに喜んでいる。
そんなこんなで今夜もパーティーが開かれるのだった。
読んで頂きありがとうございます!
よろしければブックマーク、評価、感想お願いします!