52 新たな力で、異世界へ
蓮人は鍔迫り合いを押し切られないよう踏ん張りながら、今度は手に魔力を集めるのではなく、刀に魔力を注ぎ込んでいく。
すると、何の抵抗もなく際限なしに魔力が流れ込んでいくのだった。
そして流れていくにつれて刀身が淡い光を放ち出し、終いにはには蓮人の体の光と一体となり刀は白い光を放っていた。
(あったかい光だ……。いや、それだけじゃない。刀が軽く、切れ味もかなり上がっているみたいだな。それに何だか体も軽い。これなら！)
蓮人は体に残る魔力を全てかき集め、無属性魔法を全開で発動させる。
「これが最後だ！」
蓮人は雄叫びと共に均衡していた大剣との鍔迫り合いを押し返そうと力を込めるとやけに簡単に押し返すことが出来た。
ボスはそれに体勢を崩される。その隙を蓮人は見逃さず、すかさず刀で大剣を斬り上げ遠くに飛ばそうとするのだが
「え？」
斬り合いの途中にも関わらず素っ頓狂な声が出てしまった。
それもそのはずだ。何度斬りあっても欠けなかった大剣の刃がなんの抵抗もなく真っ二つに斬れたのだから。それも刀に傷が1つもつくことなく。
それを見たボスは動じることなくすぐさま大剣の柄を投げ捨て、蓮人へと殴りかかる。その動きが何故か蓮人には今までとは違いスローモーションに見えたため、対処するのは簡単だった。
全ての攻撃を難なくかわした後に生まれたボスの隙をつき、蓮人は脇腹に蹴りを入れる。すると、なぜか4メートル以上も吹き飛んだ。
「え？」
またも素っ頓狂な声が蓮人から出る。それもそのはず、ほとんど力を込めず蹴っただけで蹴り飛ばすことが出来たのだから。しかもそのダメージは重いらしく、すぐには立ち上がってこない。
(刀が、俺の力を上げてくれているのか？)
蓮人は白い光を放つ刀をじっと眺め、そして手をグーパーして何度も握る。集中して体の状態を確認する。確かに魔力を送った分、力が流れ込んでいる気がしなくもない。
「なんだ、その力は……」
ボスは脇腹を押さえ、息も絶え絶えになりながらも立ち上がってきた。
「いや、俺も分からん」
「ちっ、ふざけやがって！」
蓮人は本当に何か分かっていないのだが、ボスはそれが気に食わなかったらしい。腰に付けていたナイフを抜き、構えた。
「大剣がなくとも、このナイフがあれば十分だ！」
そうして走り込んでくるのだが先程までの速さ、力強さはない。
――――否、違う。
(やっぱり俺が速く、強くなったんだ)
蓮人は突き出されるナイフを避け、すれ違いざまに刀を横に一閃。
白い光の軌跡が見えた。
そして蓮人は刀を納刀する。
それが合図となったようにボスは胸から血を吹き出し、崩れ落ちた。蓮人の刀はボスの胸当てさえも斬り裂いたようだ。
「勝った……」
その蓮人の呟きと共に白い光は収まった。
そして地面にゴロンと寝転がる。そんな蓮人のそばに傷だらけのリーとポチが歩いてきた。
「おつかれさまです！」
「やったな！」
リーはそのまま蓮人の横に腰を下ろし、ポチは蓮人の上に飛び乗った。
「痛てぇーーーーーーー」
ポチが勢いをつけて飛び乗ったところが、ボスから蹴りを受けた位置だったのだ。そんなあまりの痛みに蓮人は叫んでしまった。
それにリーとポチは笑い声を上げてしまうのだった。
「もう、いい加減に機嫌直してくださいよ」
「飛び乗ってごめんなさい」
ポチはしゅんとしょげて謝っている。リーも魔法で蓮人の傷を癒しながら謝っているのだが、蓮人はそれを放置している。実際には怒っていないのだが2人の反応が少し面白くなって放置しているだけなのだが、罪悪感が蓮人に生まれてきた。
「怒ってないからきにしなくていいよ」
その蓮人の言葉にポチは本当か尋ねるように目をうるうるさせて見てくる。それを肯定してやるようにポチの頭を撫でてやる。
そんな風に3人は気を抜いていたのだが、門の方から何か大きいものが潰れるような崩落音が聞こえてきた。
「なんですか！」
「門の方からだ！ とりあえず行ってみよう！」
慌ててリーが持ってきてくれていた装備を身に着け、門の方へと走り出す。
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