44 久しぶりの白米に、異世界へ
家族の感動の再会の1場面が終わった。
ちなみにタロだが、
「また夜お礼も兼ねて飯でも食いに行こうや」
とだけ残して既に自分の家に帰っている。
そして蓮人とリーはそのまま家に通され、ソファへと座るよう促される。大きな家という訳でもないのだが、どこか落ち着くような雰囲気がある。
そしてお茶が出され、蓮人とリーの正面にポチの両親が座る。ポチはお母さんの膝の上だ。
「改めて、ポチを連れてきてくれてありがとう。私がポチの父のハチだ」
「母のシロです」
そう言って軽く頭を下げる。
「僕は蓮人です」
「私はリーです」
2人も名乗り、軽く頭を下げた。
「本当に、2人には感謝してもしきれない。この恩は絶対に忘れないよ、ありがとう」
「いえ、そんな。それよりポチのことでお話があるのです」
ハチとシロは蓮人のその言葉に、しっかりと聞く体勢になる。
「ポチには、記憶が残っていないみたいなんです」
「ど、どういうことでしょう? 私達のことを覚えていないというのですか?」
膝の上のポチの頭を撫でながらそう問いかけてくる。
そして蓮人はポチとの出会いについて軽く語った。
人族の街にいたということ。そして出会った時にはポチという名前以外は何も覚えていたかったこと。
「そんなことがあったのか……」
かなり落ち込んでいるみたいだ。それも仕方ないだろう。死んだと思われていた息子に会えたと思ったら記憶が無くなって自分たちのことを覚えていないのだ。
「でも、おいら、一目見ただけでお父さんとお母さんって分かったよ! だから全部忘れたわけじゃない!
絶対思い出せるもん!」
ポチがハチとシロを励ますようにそんなことを言った。
その言葉を聞いた2人は今までのしんみりした顔とは対照的に、大きな声で笑い始めた。
「そうだな、ポチの言う通りだ。もう思い出せないわけじゃない。しんみりする前にもっと手を尽くさないとな。
あんなに泣き虫だったポチに諭されることになるとはな。成長したみたいだな」
「ええ、大きくなったわ」
ハチとシロは少し見ない間に、大きく、強く、逞しくなった我が子の成長を喜ぶのだった。
「まあなんにせよ、ポチを連れて帰ってきてくれた蓮人くんとリーくんには感謝しかない。本当にありがとう。お礼と言ってはなんだが、今日はこの家に泊まってくれ。夕ご飯をご馳走するよ」
「ええ、是非どうぞ。その方がこの子も喜びますしね」
「蓮人とリーも一緒にご飯だー!」
ポチ家族からそう言われては断る理由もない。お相伴に預ることになった。
ポチを見れば分かるように獣人族の食欲はとんでもないらしく、蓮人の目の前にはテーブルいっぱいの料理が並んでいた。そこには魚や肉に野菜、何よりも白米があったのだ。
(久しぶりの白米だ!)
ガサラの街は西洋風でパンばかりだったのだが、日本人としてはやっぱり白米は食べたくなるものだ。
「さあ、遠慮なく食べてくださいね」
シロの言葉に甘えて白米を1口食べたのだが、あまりの美味しさに蓮人の顔がニヤケてしまった。ホカホカで口に含んだときに広がる風味、噛めば噛むほど甘くなっていく味。
(やっぱりこれだな)
久しぶりの味に幸せを噛み締め、そして大事に飲み込んだ。そして一言。
「うまい!」
後はゆっくり味わいながら口にご飯をかきこむだけだ。
おかずも非常に美味だった。何の肉かは分からない唐揚げに何の魚かは分からない煮付け、ポテトサラダのようなものまであり、どの料理も日本テイストが感じられるものだった。そんな料理達に蓮人は胃も心も満たされるのだった。
ちなみに蓮人の横ではリーも同じようにご飯をかき込んでいた。
「「「ごちそうさまでした!」」」
食事を終えた蓮人達は手を合わせた。
「料理はお口に合いました?」
「「とってもおいしかったです!」」
シロの問いかけに蓮人とリーは声を合わせて返事した。そのあまりのシンクロっぷりにシロはふふっと笑いながら「それなら良かったです」と返事して皆に食後のお茶を出してくれるのだった。
「それで、良かったらなんだがポチと出会ってからの話を聞きたいんだがいいかね?」
我が子がどう成長したのか気になるのだろう。蓮人とリーはポチと出会ってからのことを詳しく、身振り手振りしながら、時におかしく、時に真剣に語るのだった。
ハチとシロはそれに興味津々に聞いていた。
そうして夜が深けていくのだった。
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