42 やっと見つけて、異世界へ
3人は軽く朝ご飯を済ませ、日が昇り出す頃には嘆きの森にいた。
「どこかなー、どこかなー」
昨日まではワクワクしていたポチだが、今は落ち着きがなくずっとソワソワしている。
しばらくそのまま歩いていると、ポチは血の匂いを嗅ぎとった。
「なあ、この先に何か血の匂いがする。大丈夫かな……」
「とりあえず慎重に行ってみよう」
そう言って音を立てないよう慎重にその匂いに向かって歩き出すと、そこには見るも無残なオークの死体があった。お腹の肉だけが貪るように食べられているようだ。
あまりの惨さにリーは目を逸らしてしまっている。そんな中蓮人はしっかりと状況を判断するため、死体を確認する。
オークは体中に爪のような鋭いもので引っ掻かれたような傷があり、首筋に一際目立つ傷がある。おそらくそれが致命傷なのだろう。そしてお腹に残っている肉をみると、歯型からして何かケモノのようなモンスターが食べたようだ。骨をものともせず噛み砕いて食べているのでかなりの噛む力だろう。
そんなことを考えていると、ポチが蓮人の服の裾を引っ張っていた。
「なあ、あっちからも血の匂いがする。しかも新しいっぽいよ」
どうやら状況は悪いらしい。
(一旦街に帰るか……? いや、戻るまでに危険があるかもしれない。やっぱり状況を確認するべきか……)
そう考えた蓮人はその新たな血の匂いのする方へ向かう。
近づくいていくと、人のような何かが血溜まりの中に倒れているのが見えた。
それを見た瞬間ポチはいきなり蓮人とリーを置いて全速力で走り出した。
「おい!待てよ!」
蓮人とリーも慌てて追いかける。
そこで見た光景はかなり驚くものだった。血溜まりに倒れている人にもケモノミミとモフモフの尻尾が生えていたのである。倒れている人も獣人族だったのだ。
「この人まだ生きてる!」
ポチが倒れている人の横で手を握りながらそう言う。
「私に任せてください!ヒール!」
ポチをそこから引き剥がし、リーは水属性魔法を発動する。清い光を放つ水が倒れている人を覆っていく。覆われてたところから順に引っ掻かれたような傷が塞がっていき、血も止まっていく。そして全身の傷が治った時、その人は目を覚ました。
こちらを見た瞬間飛び上がって距離をとり、戦いの構えを取る。
「お前たちは何者だ!」
どうやら敵意剥き出しのようだ。
「落ち着いてください、今私が怪我がを治したとはいえ流れ出た血までは戻りませんよ!」
リーが制止の言葉をかける。そこで倒れる寸前の怪我のことを思い出したのか、獣人族の人は自分の体を叩きながら自分の怪我が無くなったことを確認している。
「本当に傷が回復している。血が少ねえからちょっとフラフラするが。人族が傷を治すだと?」
何か裏があるのかどうか疑っているようだ。人族は余程信頼されていないらしい。
「ちょっと待て、お前は!」
いきなり何かに気づいた獣人族の人はポチに近づいてフードを脱がせる。
「やっぱり、ハチさんの息子だったか……。おい!よく無事だったな!」
そう言うなり、いきなりポチを羽交い締めにしていた。獣人族の人は優しくハグしているようだが、ポチはかなり苦しそうだ。そろそろ泡を吹いて倒れてもおかしくない。
「あの、ポチがそろそろ死にそうになってるんで離してやってください……」
「おお、すまんな。死んだと思われていたこいつが生きてたもんだからついな。
ところで、あんたらがこいつを連れてきてくれたのか?」
今度はポチの頭を撫でながらそう言うが、撫でる力が強すぎてポチの頭がぐわんぐわん揺れている。今度は首が折れてしまいそうだ。
「そうですね。後またポチが死にそうなので撫でるならもう少し優しく……」
「いけねえいけねえ。つい嬉しくてな
俺はこれから村に戻るが、あんたら2人もついてこいや。」
解放されたポチは慌てて離れて蓮人とリーの後ろに隠れている。
「その様子を見る限り、ポチを助けてくれたのはお前ららしいな。お礼といっちゃなんだが、俺達の村へ連れてってやるよ」
「本当に! おいらもお父さんとお母さんに会える?」
「当たり前だ。早く帰るぞ!」
言うが早いがすぐに歩き出す。3人は慌てて追いかける。
「ポチ、やっと会えそうだな」
蓮人はちゃんと優しくポチの頭を撫でてやる。
「うん!」
ポチは気持ちよさそうに、そして嬉しそうに元気な返事を返す。
「早くしないと置いてくぞー!」
獣人族の人はもう遠くまで歩いて行っている。
「よし、早く行こうか」
そう言って3人は走り出す。
────後ろからずっと監視されていることに気が付かずに。
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