40 新たな防具に、異世界へ
なんだかんだでギルドマスターからの許可は無事におりたので手続きを済ませる。そのまま嘆きの森への立ち入り許可も出してもらうことにしたため、思いのほか時間がかかり諸々が終わるころにはもう日が暮れ始めていた。今日はこのまま宿に戻り、翌日に嘆きの森に出発することになる。
(まだ夕暮れで時間があるし、装備を整えておくべきだな。今はお金もあるし)
そう考えてリーとポチを連れて武器屋に向かう。
その行き道、蓮人に刀をくれた男がまた同じ場所で露店を出しているのを見つけたので、近づいていく。
(この前に貰った刀は切れ味もとんでもなく、刃が欠ける気配も全くない。またこんな刀みたいな掘り出し物とかがあるといいな)
「どうも、お久しぶりです」
蓮人は、前回と同様に客を呼び寄せる気もない男に話しかける。話しかけられてやっと近づいてくる蓮人に気づいたようだ。
「……お前か。刀の調子はどうだ? ちょっと見せてみろ」
「かなりいいですよ。どれだけモンスターを斬っても刃が鈍る気配もないです」
そう言いながら刀を抜いて渡す。
渡された抜身の刀をじっくりと確認している。
「ふむ、変な使い方はしてないみたいだな。だが、この刀の真の力はまだ引き出せていない。せいぜい頑張るんだな」
刀を返してくる。
「それで、今は防具を探してるんだけど、何かいいものないですか?」
男は露店の裏からゴソゴソと何かを取り出してくる。
「この防具はどうだ?
そこの坊主にはこのワーウルフの毛を使った服がおすすめだ。ただの布の服のように見えるが、ワーウルフの硬い毛を使っているから並みの刃じゃ通らねえし、とにかく軽い。素早く動くその坊主にはピッタリだろうよ。
そこの嬢ちゃんには魔力を高める素材を使ったこのローブだ。魔法を使う時に必要な魔力が減り、その魔法の威力も上がるはずだ。それに、敵のちょっとした魔法ならそのローブが弾くだろう。
お前にはモンスターの殻を使った胸当てだ。モンスターの名前は忘れたが、Aランク冒険者の剣でも弾く程の強度の殻を持ってたはずだ。そのくせやけに軽いんだよな。今お前が装備してる皮の胸当てと全然変わらん重さのはずだ。これを装備してりゃ並大抵の攻撃じゃ傷もつけらんねえだろうよ」
そう言ってそんな防具を渡してくれたので、蓮人達は試着して性能みる。
「すごい、こんなに硬いのに全然重くないし、動く邪魔にもならない」
蓮人は胸当てをコンコンと叩いたり体を捻ったりして着心地を確認している。
「このローブもすごいです。魔力を練るのがものすごく早く、楽になりました。これなら魔法の威力が今までよりも格段にアップしますよ」
リーは魔力を練りながら確認している。
「この服軽い!」
ポチはピョンピョン飛び跳ねている。
どうやら全員新しい防具を気に入ったようだ。
「じゃあ、この3つ全部買うことにするよ。いくら?」
「そうだな……。全部で10000ゴールドでいいよ」
「そ、それは安すぎませんか……?」
とってつけたような男の値段にリーは驚いている。
「嬢ちゃんが可愛かった安くしといてやるよ。ほら持ってけ」
蓮人は10000ゴールド払って装備をもらう。
「「「ありがとうございました!」」」
3人は声を揃えて礼を言うが、男はそそくさと店を片付けて帰宅準備をしている。礼には軽く手を挙げて答えるだけですぐにまたどこかへ消えていってしまった。
「あの人はなんなんだろうな……」
蓮人のそんな呟きにリーは答える。
「分かりませんが悪い人ではなさそうですね。
私達のことを心配してくれているようですし」
「そういえば、名前聞くの忘れてたな。今度あったときに聞いてみよう」
「そうですね。じゃあ用事も済んだことですし、明日のために美味しいご飯を食べて力をつけに行きましょう!」
「やった! ご飯ご飯! おいら腹減った!」
ご飯と聞いた途端にポチはお腹の虫をグーグーと鳴らせる。
そして3人はそのままご飯を食べに行くのだった。
このとき、蓮人達を監視する目があることに気づかないのだった。
「さあて、あいつらはどこまで生き残れるのかな。せいぜい楽しませてくれよ」
先程防具を蓮人達に売った男は誰も人がいない道を歩きながらそんなことを呟いていた。
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