37 ワーウルフの討伐に、異世界へ
次の日の朝もレノが作った豪華な朝ご飯を食べて、ワーウルフの探索が始まる。レノによると、ワーウルフは基本単独で森の奥に生息していることが多く、あまり日の当たらないところでひっそりと隠れて不意打ちの一撃を食らわせてくるらしい。気を抜いているとその一撃で殺されることもあるようだ。
蓮人達は隊列を蓮人、ポチ、レノ、リーの順番に組んで森の中を慎重に進んでいく。
歩き始めて1時間程経った頃、ポチがある違和感を感じ取った。
「この少し先で何か物音がした気がする。それに少しケモノの匂いがしてる。もしかしてワーウルフかも?」
小さな声でポチが皆に報告する。
蓮人は刀を構えてポチが指さす茂みの方向に進んで行く。
ある程度近づいたところで止まり、リーにウインドアローで先制攻撃をしてもらう。
「ウインドアロー!」
3本の風の矢が茂みに向かって発射された。しかし、着弾する前に何かが後ろに跳んでそれを避けた。
そして姿が明らかになる。オオカミよりも大きく毛も長い。かなり長い犬歯が生えており、なんでも噛みちぎれそうだ。そしてもっとも特徴的なのはその前足だ。かなり発達しているのか太く、そして爪は長く尖っている。
前足で薙ぎ払われるだけでも骨折は免れないだろうし、爪で喉笛を掻っ切るなど造作もないだろう。
ワーウルフはこちらを見て低い声で唸っている。どうやらこちらの様子を見ているようだ。
「レノは少し離れててくれ」
蓮人はそう言ってポチと2人で前に出て、無属性魔法を発動する。
そしてワーウルフは蓮人に向かって飛びかかり、鋭い右前脚の爪の一撃を食らわせようと振り下ろしてくる。蓮人はそれを刀できっちりと受け止める。
その止まった瞬間を狙って、ポチはワーウルフの脇腹に飛び蹴りを食らわせて遠くへ蹴り飛ばす。だが、ワーウルフの毛は固くあまりダメージはなさそうだ。空中でクルっと1回転して音もなく着地する。
ワーウルフは冷静に蓮人達の隙を伺ってくる。思っているよりも知能が高く、強敵だと判断したのかもしれない。
そして今度はポチに向かって飛びかかる。今回は爪で斬り掛かるのではなく、体当たりをしてくる。ポチはそれを紙一重で避けるが、そのままワーウルフの尻尾をまともに食らってしまい、弾き飛ばされる。
その間に蓮人は刀を突き刺すがそれも避けられてしまい逆に蓮人も体当たりを食らってしまった。
リーはそんなワーウルフにバブルショットを打ち込み、追撃を許さない。その間に蓮人とポチは起き上がり、今度は2人がワーウルフに攻撃を仕掛ける。
ポチの素早い動きでワーウルフを翻弄し、ナイフで何度も薄く斬っていくが毛が固くて歯が通らない。そうしている間に蓮人はさっと近づき、大上段に構えた刀をワーウルフに向かって振り下ろす。ワーウルフはまたも後ろに飛んで避けるのだが、避けきれずに脇腹を切られてしまった。
そしてその着地点にはリーが
「ホーリーアロー!」
そう言って光の矢が放たれていた。その光の矢はワーウルフの足先に命中し、甲の部分を貫通する。
(これなら、もう素早い動きは出来ないはずだ!)
そう判断した蓮人は力を溜めて渾身の一撃を放つ準備をする。
ワーウルフは退却しようとするが、それをポチとリーが許さない。リーは逃げ込む先にバブルショットを撃ち込んで道を塞ぐ。そしてポチがワーウルフの周りを高速で回り、少しずつナイフで傷をつけていく。
そして蓮人の準備が終わり、ワーウルフに向かって駆ける。ポチはスっと身を引いて道を開けてくれた。
気合と共に刀が袈裟斬りに振り下ろされた。
一瞬遅れてワーウルフの首が落ち、そこから血飛沫が飛んでいる。
蓮人達の勝利だ。だが、重要なのはこれからで、レノによって昇格出来るかの判断がくだされる。
「レノ、どうだった?」
蓮人はそう尋ね、リーとポチもその返事を固唾を呑んで待つ。
「文句無しに合格ですよ、おめでとうございます!」
笑みを浮かべて合格をくれた。
蓮人とリーとポチはやったと喜んでそれぞれハイタッチしている。
「これでポチちゃんもお母さん達に会えるかもしれませんね!」
レノはそう言ってポチの頭を撫でている。
「うん!」
ポチも嬉しそうに返事をして撫でられている。
「じゃ、まあ帰ろうぜ」
蓮人のその一言で、ワーウルフの討伐証明部位と売れる部位を剥ぎ取ってガサラに帰ることになる。
(早くBランクに昇格して貰って、ポチを返してやらないとな)
レノからくだされる剥ぎ取りの指示に従ってテキパキと終わらせて、すぐに帰路につく。このままならお昼過ぎには帰ることが出来そうだが、そうは問屋が卸さないということを蓮人達はまだ知らない。
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