30 3人それぞれの戦闘に、異世界へ
蓮人達とガンズローゼズの3人は向かいあっていた。シルフィーは離れたところで木の陰に隠れながらこちらの様子を伺っている。
こちらと敵の戦力比は1対1だ。
「リーとポチ。あいつら1人ずつ相手出来るか?」
蓮人のその問い掛けにリーとポチは緊張した面持ちで頷きを返す。
それを確認した蓮人はそれぞれ誰を相手するか割り振る。
「俺は正面の男だ。ポチは右の小柄なやつ。リーは左の魔法使いっぽいやつだ。
こいつら、この前の5人組とは比べられないくらい強いぞ」
そう言って蓮人は刀を抜く。
「そうみたいですね。でも負けるわけにはいきません」
「おいらも絶対負けないぞ」
蓮人に続いてリーも杖を構え、ポチもナイフを抜く。2人とも気合は充分だ。
そして、蓮人達の目の前でも同じようにガンズローゼズがそれぞれ武器を構えていた。
リーがウインドアローを放った。それが開戦ののろしとなる。
ガンズローゼズはそれぞれウインドアローを飛びのいて回避するが、その際に全員別の方向に飛びのいたため分かれた。
その分断された隙をついて蓮人とポチは斬りかかるのだった。
そしてそれぞれ、1対1の勝負が始まった。
蓮人は正面にいた男と斬り合っていた。実力は互角といえるだろう。
蓮人が繰り出す刀の突きを男はサッとかわし、そのまま剣を袈裟斬りに振り下ろす。逆に振り下ろされる剣を蓮人はかわすか受け流すかをして、攻撃を回避する。それが何度も繰り返される。
そしてお互い大きくジャンプして距離を取った。
「へぇ、お前やるじゃないか。この前のやつじゃ手も足も出ないわけだ。まあ俺からすりゃ大したことねーがな」
先程は互角といったが、実際は隠している実力に差があった。
蓮人と対峙している男はまだまだ余裕を残している。それに対し、蓮人に余裕はあまり残っていない。
なぜなら全開でないとはいえもう無属性魔法を発動しているからだ。
しかし、今回は白く光っていないことに蓮人は気づいていない。
「まだまだだよ。さっさと殺してみろよ」
あまり余裕は残っていないのだがそれを感じさせないようにそう告げる。
「おもしれえなぁ。じゃあもうちょっと強くいくぜぇ? まだ死ぬんじゃねえぞ?」
そう言って男は斬りかかってくる。蓮人はその剣を受け止めるが、先ほどよりも速く重くなっていた。
先ほどまでとは打って変わって蓮人は防戦一方になってしまっているが、男に隙が生まれるのを静かに耐え忍んで待つのだった。
ポチともう1人小柄な男は常人の目では追いきれない程の速度で高速移動しながら、お互いナイフを構えて斬り合う。
いや、斬りかかっているのは敵の方で、ポチはそれに合わせるので手一杯だった。まだ辛うじて致命的な傷は負わないように避けることが出来ているが、ポチの体の至るところに小さな切り傷が増えていく。
「キャハハハハハハ。速く倒さないと、君もっと切り刻んじゃうよ? 手足もバラバラにしてミンチにしてあげたいなぁ」
ポチの体に傷をつけるのが楽しくてたまらないという様子である。言ってしまうとどこか狂ってしまっている。
ポチはそれに怯え、怯んでしまうがなんとか耐える。
自分がここで相手しなければ、蓮人とリーの方に加勢されるだろう。そうなっては今の均衡している状態がどう転がるのかは火を見るより明らかだ。
ポチにとってやっと出来た居場所を失う訳にはいかない。しかも自分が理由で蓮人とリーが殺されてしまうなんて許せることではない。
気を引き締めて、冷静に迫り来るナイフを対処していき、ポチが負う傷がだんだんと減っていき、むしろ傷をつける側になっていく。
「キャハハハハハハ。僕が傷をつけられるのはとっても面白くないなぁ。他の奴らも切り刻みたいんだから、早く君も切り刻まれてよ」
そう言われたことで、ポチの中で何かが変わった。
「お前は絶対許さない」
リーともう1人魔法使いの男はひたすらに風魔法を撃ち合っている。
「ウインドアロー!」
リーはそう言って魔法が放つのだが、敵も同様にウインドアローを使ってリーが生み出したウインドアローに寸分違わず衝突させ無効化してくる。
相手の魔法使いの技量はかなり高く、しかもまだまだ余裕を残しているように思える。
これほどの技量を持つ魔法使いが風魔法の適正しかないことはないだろう。
リーはどう現状を打破するのか考える。
(相手は私を舐めているので、倒すなら本気になっていない今のうちです。というか今しかないでしょう)
今までは基本的に蓮人のフォローに回っていただけに使う魔法はウインドアローだけで充分だったのである。
しかし、今の敵はウインドアローでは敵を倒せない。そして蓮人の様子を一瞬伺ったところ、互角で援護を期待することは出来ないだろう。
(魔法は想像力、ですもんね)
新たな魔法を生み出すために、耐え凌ぎながらイメージを膨らませていくのだった。
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