170 収穫祭に、異世界へ
蓮人とリーの2人は皇都で開かれている収穫祭を回っていた。
「あっちの大通りでは出店が並んでるみたいですよ! 行ってみません?」
「お、そうだな、お腹も空いたし丁度よさそうだ」
2人は手に収穫祭のマップを見ながらそう話す。
「それは誰かさんが朝寝坊をするからじゃないですか?」
「うう……その節はどうもすいません……」
リーは反省してる蓮人を見てクスっと笑うといきなり手を取って歩き出した。
「さあ、早く行きましょう! 私もお腹空きましたよ!」
「お、おう……」
蓮人は握られる手に少し顔を赤らめつつも後ろについて歩いて行く。
「昨日食べたトミートスープも美味しかったけど生で食べるトミートも美味しいなあ」
「昨日のスープは程よい酸味があって美味しかったですけど、そのまま食べるのも冷たくて何よりも甘くていいですね!」
蓮人とリーは赤く瑞々しいトミートに齧りつきながら出店のある通りをのんびりと歩いていた。
「それにしても食べ物の店は全部トミートを使った料理なんだなぁ」
並んでいるお店はトミートスープにトミートパスタ、トミートパンにトミートジュースと真っ赤な食べ物ばかりだ。
「まあトミートがいっぱい取れたことの感謝を表す収穫祭ですからね、そりゃそうなりますよ。
あ、でもこれより先は食べ物の出店じゃなくて雑貨などの出店っぽいですよ」
リーは手元にある地図を見ながらそう言う。
「なるほど、時間もまだまだあるしそっちも見てみるか」
「はい!」
こうして2人は雑貨の類の出店へ足を向けるのだが、
「見てください! このコップとってもかわいくないですか!?」
「この服も!」
「このイヤリングもいいですね!」
とまあこんな風にリーは気になる店全てに立ち止まっていた。
(そういや、ガサラの街で2人でお祭りを回った時もこんなんだったなぁ……。あの時は確か青いブレスレットをプレゼントしたんだよな)
蓮人は嬉しそうに品物を見ているリーの左手首にキラキラと光るブレスレットに目をやりながらそんなことを思い出していた。
「蓮人さん、あっちのアクセサリーのお店も良さそうですよ!」
リーはまたも蓮人の手を取ってそのお店に近づいていく。
「すごい綺麗ですね……」
上品な光を放つブレスレットや、オシャレなイヤリング、さらにはシンプルなデザインのリングなどもあった。
そんなリングに蓮人はやけに目を惹かれてしまった。
「ああ、確かにどれも綺麗だな」
蓮人はリングを手に取り中指にはめてみると、ピッタリとハマった。自分でもしっくりきていい感じだ。
「そのリングとっても似合ってますよ!」
「良く似合ってますね、そのリングもお客さんに付けて貰って喜んでるのがよく分かります!」
リーからも店員のお姉さんからも大好評だ。
チラッと値段に目をやると値段は1万ゴールドだった。今の蓮人になら全然手の届く値段なのだが無駄遣いは厳禁だとしてリングを指から外し元の位置へと戻した。
「あれ、買わないんですか?」
「んー、まあいいかな」
それを見たリーはふふっと笑い声を上げたと思うと
「すいません、そのリングください」
そう言ったのだった。蓮人がリーのブレスレットを買ったときと同じように。
「いや、そんな、気にしなくていいんだぞ」
「いえ、これはブレスレットのときのお礼なんですから蓮人さんこそ気にしないでくださいよ!」
蓮人に一瞬の迷いが生まれたのだがここは素直にお礼を言う。
「そうか、ありがとう」
「はい!」
リーはそう言ってこちらに笑みを向けるのだった。
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