169 予想外で、異世界へ
「あー、気持ちよかったー」
「体の疲れがキレイさっぱり無くなりましたよ。今度はリーさんも一緒に行きましょうね」
そのまま蓮人が1人で夜空を見上げていると、ジリーとジュシュの声が部屋の中から聞こえてきた。
蓮人が部屋の中に戻るとジリーが蓮人にしか見えないようにウインクをしてくる。
それには顔を少し赤らめつつも笑みを返すのだが、ジリーはその返答で結果を察したらしく親指を立ててグッドマークをしてきていた。
リーはそのやり取りに気づいたらしく、顔を赤らめながら
「私もお風呂に行ってきますね!!!」
そう言ってこの宿についている大浴場へと出ていったのだった。
「やっぱりリーさんも誘うべきだったじゃない!」
「はいはい、分かったから次誘えばいいでしょ」
「……まあいいです。ところで蓮人さん明日ってどうするかもう決めてますか……? よかったら、収穫祭一緒に回ってくれないかなと……あ、もちろんもう予定が入っているならいいんですけどね!」
ジュシュが少しだけ顔を赤らめて上目遣いで尋ねてくる。
蓮人は思わず横目でだがジリーの方を向いたのだが、その先では驚きを顔に貼り付けたまま固まっているジリーがいた。
(お、おい! なんだこのハーレム展開は! どうすりゃいいんだ!)
人生で1度も恋愛経験のない蓮人にとってこれは非常に難しい問題だ。
「え、えーっと、ちょっと明日は先約があって……申し訳ない、また今度な……」
「い、いきなり変なこと言ってすみませんね!
また今度楽しみにしてますから大丈夫です、気にしないでください!」
とんでもない落差でガッカリしているジュシュだがまた今度と言った時点では既に元気を取り戻していた。
「お姉ちゃん! 蓮人さんは予定が入っちゃってるみたいだし、ポチちゃんとリーさんも誘ってまた討伐依頼でも受けに行こうよ……って聞いてるの?」
固まっているジリーをジュシュは揺らして起こす。
それで我に帰ってきたジリーは
「んーっとね、リーも用事入ってそうだし、お姉ちゃんとポチちゃんの3人で行くのはどうかな……?」
「そ、そうなんだ……じゃあ3人で行こっか……」
それだけ答えてジュシュは肩を落としつつベッドへと潜り込む。
「まさか……い、いえ、それでも負けませんもん……」
ベッドの中からぼそっと小さな声でそう呟く声が聞こえてきてしまった。
蓮人とジリーは顔を見合わせて驚きで固まるのだった。
このあと蓮人も1人で大浴場にて入浴を済ませて部屋へ戻るとすぐにベッドへ潜り込んだ。
(まさか、ジュシュが……お祭りに誘うってことはやっぱそう言うことだよな……)
今まで経験がないとはいえ本やドラマなどでそういうシーンは何度も見てきたのだ。そこまで鈍感になることは出来ない。
(とは言ってもなあ……)
こうして考え込んでいる間にいつの間にか眠りに落ちるのであった。
「蓮人さん! そろそろ起きてくださいよ……一緒にお祭り回るんじゃないんですか?」
「うーん……おはよう……」
蓮人は目を擦りながら体を起こす。窓から見える空は雲ひとつなく太陽が既に高く昇っていた。
もうジリー達は出かけているようで部屋には蓮人とリーだけだ。
「すぐに支度するから待っててくれ」
「はい!」
こうして蓮人は顔を洗って寝癖を整え、2人で収穫祭へと繰り出すのだった。
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