163 リーが目を覚まして、異世界へ
「うーん……」
リーは目を開く。そこには木の板の天井が見えており、体はフカフカの布団にくるまれており非常に心地よかった。
そこで何気なく視線を左に向けると、
――――うわああああ!!!
と叫びそうになるのを必死に堪えた。
それもそのはず、すぐ近く顔が引っ付きそうな距離にスヤスヤと気持ちよさそうに眠る蓮人の寝顔があったのだ。
(きっと私を心配してくれてたんですね……)
そう思うと頬が勝手に緩んでしまう。
(目を覚ましました、もう大丈夫ですよって声をかけるべきなんでしょうけど……)
リーは目の前にある蓮人の寝顔から離れることなくじっと見つめる。
(私頑張ったんですもん、少しくらいなら……)
とそう思ったときだった。蓮人の目がバチッと開き、超近距離で2人の目があったのだ。
「「うわわわわわ!!!」」
一瞬凍りついた後、2人は声を上げて顔を真っ赤にしながら体を起こした。
2人の中にすこし気まずい雰囲気が流れてしまうが、それをどうにかしようと蓮人は口を開く。
「も、もう体調は大丈夫そうか?」
「は、はい、おかげさまで!」
とはいえ照れてしまってこの後の会話が続かない。そうしているとジリーとジュシュも起き出してきた。
「んー……リーが目を覚ましたんだ、元気そうだね」
「すっかり魔力も元に戻ったようで良かったですね!」
「はい!」
そう言って近づいてくる2人に笑みを返す。
「それで聞きたいことがあるんですけど、私が魔法を撃ったところまでは覚えているんですが、そこからどうなったんでしょうか?」
「気を失ってたんだもんな、仕方ないさ。
リーが魔法を撃った後、そのまま魔力切れで気を失ってしまったんだと思う。空から真っ逆さまに落ちてきたんだけど、そこを俺達で何とか捕まえたんだ。んで、ケガも無さそうだし寝てたから宿へ運んだってわけだ」
「リーさんが勝った!って喜んでいたらいきなり落下し始めて本当に焦りましたよ!」
「それは本当にありがとうございます……!」
リーはベッドに座りながらも3人に頭を下げてお礼を言う。
「いやいや、お礼を言うのは俺達の方だよ。本当にありがとうな」
「そうよ、ありがとう!」
「ありがとうございます!」
そうして4人は顔を見合わせ笑い合う。その横でポチはまだ眠っているのだった。
「それで、リーが戦っていた相手は結局誰だったんだ?」
こうして一段落したあと蓮人はその事について訪ね始める。
「あれはポイズンバタフライがナイトメアにドス黒い瘴気、邪気と言うらしいのですがそれを貰って進化した姿のようです。それで羽から鱗粉を降らせてそれで蓮人さん達や街の人達をあんな風にケンカさせていたみたいです」
「なるほど、ポイズンバタフライが進化した姿の毒なら俺達があんな風におかしくなっちゃったのも分かるな。でもなんでリーだけには効かなかったんだ?」
「やっぱりあのローブのおかげ何ですかね?」
リーは壁にかかっている自分のローブに目をやりながら呟く。
「うーん、それしか考えられないですよね。それなら私もローブを着ていたので効かないんじゃと思わなくもないですけどね」
「それなら俺達の鎧だって魔法を跳ね返すんだから聞いてもよさそうな気もするけどな」
4人は頭を捻って考え込むのだが理由は分からず、蓮人はパチンと手を叩いて話を閉める。
「まあまあこの話は終わりにして今日はもう寝よう。明日は皇都のギルドのギルドマスターに呼ばれてるから行かないといけないしな」
「そうなんですね。じゃあもう少し休むことにします」
「ああ、おやすみ」
こうして皆は各々自分のベッドで朝まで深い眠りにつくのだった。
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