160 魔力を練り終えて、異世界へ
バタちゃんはその魔力が簡単に自分を消し飛ばせることを感じ取ったようだ。額から汗が垂れ落ちている。
「確かに、その魔力から放たれる魔法はやばいかもね……でもね、それまでに倒しちゃえばいいんだよ!」
バタちゃんの美しく綺麗な羽根から鱗粉の弾丸が何十発と発射されるのだが、
「無駄です!」
リーの杖の一振りで生み出された突風により止められ、勢いを失った弾丸はその場に落ちる。
「嘘! なんでよ!」
またも鱗粉の弾丸が何発も発射されるのだが、それも杖の1振りだけで無効化する。
それにバタちゃんは思わず歯ぎしりをしており、イライラを隠せていない。
「なら、直接たたくだけ!」
そう大声を上げ、突撃してくる。確かにスピードはとんでもないのだが一直線に向かってくるだけだ。もはやその程度ではリーの脅威にはなりえない。
「はっ!!!」
今度は気合いを込めてバタちゃんに向けて杖を突き出す。
今までよりも遥かに強く、そしてバタちゃんの体だけを範囲として風を生み出して後方へと大きく吹き飛ばす。
予想していたよりもとんでもない威力だったらしく、轟音と共に5メートルほど吹き飛んでいた。
「ゴフッ…………ぐううう、この威力はなんなの……?」
バタちゃんはダメージが重く、立ち上がることが出来ず、口から緑色の血のようなものを吐き出していた。
その間もリーは油断せず杖を構えながらゆっくりと近づく。
「………………だ。………い……だ。」
バタちゃんは気が触れたかのようにブツブツと何かを呟いている。
「もういやだ!!!!」
奇声にも近い声を荒らげた。そして羽根をはためかせ、空高くへと飛び上がる。
「しまった!」
リーは攻撃に備えていたために飛び上がったことへは対処出来ず、見逃してしまった。
そんなバタちゃんをリーも風属性魔法を使って浮かび上がり追いかけるのだが、あまりの速さに追いつくことが出来ずぐんぐんと距離が離れていく。
そして空高く街を一望できる場所に来たときだった。
バタちゃんが飛び上がるのをやめ、こちらを虚ろな目で振り返ったのだ。
「リーちゃん、もう終わりだよ……皇都ごと、全部消し飛ばしてあげる!」
小さな声にも関わらずやけに通ったその声はリーの耳にもしっかりと届き、思わず足を止めてしまった。
その瞬間、バタちゃんの体からはドス黒い瘴気、邪気が溢れ出してそれが1つの塊となり、球体へと形どっていく。
出来たのは直径10メートルほどの闇の球体だった。
それを見ているだけでも背筋が凍りそうな程の禍々しさだ。
「はぁ、はぁ……前の姿に戻っちゃったけど、これで、おしまいだよ」
バタちゃんはそれを作り出すのに全てを使い切ったのか大人の女性の姿ではなく幼女の姿に戻っており、肩で息をしている。
「これはまずいですね……」
ここでリーが避ければ力を使い切ったバタちゃんには間違いなく勝てる。
ただそうすると蓮人やポチ、ジリーとジュシュだけでなく、この皇都自体が跡形もなく消え去ってしまうだろう。
それほどの力を持っていることが一目見ただけで分かった。
どうするべきなのか頭をフル回転させるリーだが、そんな時間をくれるわけが無い。
「いけー! 皇都を、滅ぼして!」
闇の球体がリーもとい皇都へと撃ち出された。
「……やっぱりやるしかありませんね。見ててくださいよ、蓮人さん」
リーは迫り来る闇の球体を見て覚悟を決める。
そしてリーを覆う魔力がより強くなり、蓮人のように体が光り輝いているように見えた。
「いきます!」
杖先にそれら全ての魔力を集中させる。
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