159 情報を引き出しながら、異世界へ
「ぐううう…………」
勢いよく地面に叩きつけられたリーは起き上がることが出来なかった。
(地面にぶつかる瞬間にも水のバリアを張って衝撃を殺したはずなのに、それでもこの威力なんですか……)
ダメージは受けたがが骨はどこも折れていないようで、それだけが救いだ。
「ふふふふふっ。どうかな? 今度はしっかり効いてるみたいだね!」
ゆっくりと空から降りてきたバタちゃんが口を開いた。見た目は大人になったとはいえ口調は先程と変わっていない。
「そう、ですね……」
敵が真横に立っているというのにいつまでも寝ていられないと、リーは歯を食いしばって立ち上がった。
「へえ、まだ立てるんだ! すごいね!」
リーは少し足元がふらついており、バタちゃんにとっては非常に有利な場面だ。そのはずなのに楽しんでいるのか、トドメを刺しに来る気配がない。
リーは少しでも時間を稼ぐためにある問いかけをする。
「まだまだ、これからですよ。ところで、なぜいきなりそんなに強くなったんでしょうか?」
「そんなに気になるの?」
「はい。とっても気になりますね」
「いいよ! じゃあ死ぬ前に教えてあげるね!」
バタちゃんはリーの問いかけに満更でもなさそうに話し出した。
(よし、上手くいきました。今のうちに魔力を練って、その一撃で終わらせる……!)
リーは自分の作戦が上手くいくことを願いながらバレないようにコッソリと魔力を練る。
「この力はさ、ナイトメア様に貰ったものなんだけどね。どうやら私にはその力に適正があったらしくてさ、ポイズンバタフライが自我を持ち、それが進化したのが私なの。
そいでもその力が強すぎて私にはちょっと強力過ぎて思うように操れないからさっきまで幼女の姿でいたんだけど、リーちゃんが思ってたよりも強かったから私も本気を出すためにこの姿になったんだよ!
だからいきなり強くなったんじゃなくて、この姿が本当の姿で強さ、今までのは力を封印してただけなんだ!」
(この調子ならもう少し情報を引き出せそうですね……やってみますか)
「なるほど……それでその貰った力というのは何なんですか?」
時間稼ぎを目的として始めた会話だったのだが、今やどれだけたくさんの情報を引き出せるかという勝負にすり変わっていた。
もちろんその間も魔力を練ることは忘れておらず、バタちゃんもそれに気づかないままペラペラと話し続ける。
「繭になる前に体から黒い瘴気みたいなのが出てたでしょ? それはね、ナイトメア様が言うには邪神の持つっていう邪気の力の一部らしいの!」
「……それでそのナイトメア様の目的とは何なんでしょうか?」
「んー、そこまでは知らないなぁ……ってそうだ!話さないように言われてたんだ!」
バタちゃんはそう言われていたことを思い出し、慌てて口を噤んだ。
「あーん、ナイトメア様に嫌われちゃうよどうしよう…………そうだ! いいこと思いついた!」
先程まで泣きそうだった顔が一転、満面の笑みに変わった。そしてバタちゃんから先程までと同様な威圧感と殺気が放たれる。
「リーちゃんを殺しちゃえば問題ないよね!
だから、私とナイトメア様の未来のために、死んでね♪」
そのまま地面を蹴って飛びかかって来るのだが、風を生み出して跳び上がることで回避した。そして無防備な背中に蹴りを食らわせる。
「いえ、それは無理な話です」
リーは言い放った。バタちゃんはそんなリーの態度にイライラを隠せないようだ。
「よく躱したね。でもそれで私を倒せるわけないじゃない!」
「確かに蹴りではあなたを倒すことは出来ませんが、もう準備は終わったので」
「まさか……!」
その瞬間、リーの体からとんでもない量と質の魔力の嵐が吹き荒れた。
「あなたを倒すための魔力はしっかりと練り終わりましたから」
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