145 鍛冶通りを回って、異世界へ
「はっ……!」
蓮人は汗を掻きながらベッドから勢いよく体を起こす。
「飛び起きちゃってどうしたんですか? 大丈夫ですか?」
並大抵でない蓮人の様子にリーは駆け寄ってきた。
「夢に龍神様が出てきて、少し話したら早く起きろって言われて起きたとこ」
「どんな話してたんですか?」
「なんかよく分からなかったけど、刀と角を持って鍛冶通りを探せってのと図書館で無属性魔法の本を読めって言われた」
「鍛冶通りといえば図書館の2本裏にある大通りの道がそのはずだよ。私も盾の調整をしてもらおうと思ってさっきギルドで聞いてきた」
目を覚ました蓮人に気がついたのかジリーとジュシュもベッドの横へと近づいてきた。
「でも無属性魔法についての本と言うのは聞いたことがありませんね。無属性魔法は基本魔力を応用して身体強化を行うだけで、精々が武器や盾を魔力で伸ばしたりする程度のはずですので本に記す程のことがあるとは思えませんし」
「まあでも龍神様に言われたことだし、ちゃんと言うこと聞いておくよ。そうしたら強くなれるって言われたしな。俺はもっと強くなるぞ!」
蓮人はそう強く宣言してベッドから立ち上がり、気合を入れる。
「蓮人さん、絶対に私達も強くなりますから!
さっきみたいな醜態はもう晒しません! 私達も蓮人さんと一緒に戦います!」
リーのその宣言にジリーとジュシュも大きく頷いていた。
蓮人は、自分は1人ではないと思える安心感によって自然と頬が緩んでいた。
そして、こんな大事な仲間のためにも必ずもっと強くなって健吾を取り戻すことを心に決めるのだった。
その日は宿屋の食堂で夜ご飯を済ませそのまま眠りつく。明日からやるべきことはたくさんあるのだ、体を休めるのは重要である。
そして翌朝、軽く朝ごはんを済ませた蓮人達は二手に別れて行動する。
「俺とジリーとポチがこのまま鍛冶通りに行ってとりあえず龍神様の言う何かを探そうか。
リーとジュシュの2人は図書館に行って各自魔法の勉強しててくれ。それに出来るならば龍神様の言う無属性魔法についての本も探しておいてくれると助かるよ」
「分かりました!私たちに任せてください!」
リーとジュシュは元からもっと魔法を勉強したいと言っていたこともあってかやる気満々だ。
「うん、頼むよ。俺達も見つけられたらすぐに図書館へ向かうからさ」
「はい! そっちも頑張ってくださいね!」
こうして二手に別れた蓮人達は各々の果たすべきことを果たしに行くのだった。
そして鍛冶通りを目の前にした蓮人達である。
「この中から何かを探すのか……?」
かなり広い大通りに所狭しと武器や防具の露店が並んでいた。
「ギルドから昨日聞いた話によると、これが1キロメートル以上続いているらしいよ」
「まじか……すぐにリーとジュシュの方へ合流するつもりだったんだけど難しそうだな。って言っても始まらないか、さっさと行こう!」
そう意気込んで通りに入っていった蓮人達だったのだが、
「これがまだあとどれだけ続くんだよ……」
「本当にね……」
「おいらも疲れた……」
約15分が経った頃、横切る全ての露天の店の人から声をかけられ疲れきっていた。ちなみに15分かけてまだ4店舗しか見終わっていない。
「それでも龍神様から言われた何かが分からない以上、1個1個の店全部見て回るしかないんだもな……もうちょい頑張ろうか……」
「そうだね……」
鍛冶師たちは商売なのだから、折角寄ってきてくれた蓮人達のような客を簡単に逃すわけがない。「今ならお安くするから買ってってよ!」という言葉をかけ、離してくれないのだそんな押し問答がどのお店でも続き、更に一時間が経った頃だろう。
「はあ、はあ……」
蓮人達は疲れ切っていた。嫌気がさしながらも龍神様の言葉を信じ進むこと更に1時間、鍛冶通りの中ほどまで来た時だった。
今まで通った店は全部何人かの客がいて店員も客を常に呼び込んでいたのだが、一軒だけ人も近寄らずたった一人の店員も腕を組んで寝ている店があるのだ。
普通ならばそんな店には行こうとは思わないが、今だけはやけに気になった。
「あの店に行ってみよう」
蓮人達は他のお店を置いてその店に足を運ぶのだった。
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