141 真っ黒なトレントと戦いに、異世界へ
「黒い、トレント……? トレントは生息する森の木とほぼそっくりになると言われていますが、あれは形だけで色は全く違いますから、そういうことなんでしょうね」
「そうね……パワーシールド!」
木の幹にある目がカッと見開かれたと思うと蓮人達に真っ黒な葉を大量に吹き飛ばしてきた。
それにいち早く気づいたジリーは皆の前に立ち、盾を構え全ての攻撃を1人で受けきった。
「ギリギリ、セーフ」
「ああ、助かったよ。今度はこっちの番だ、炎よ!」
蓮人はジリーの背に隠れている間に素早く練っていた魔力を解き放つ。
「いけ!」
燃え盛る業火がトレントを襲い、焼き尽くした……ように思えたが、実際にそう上手くはいかない。
「な、なんで木のくせに燃えてないんですか!」
驚くジュシュ達の目の前では、蓮人の放った炎に燃やされることなくそれらを身にまとったトレントの姿があったのだ。
そしてトレントの口がニヤリと不気味な笑みを浮かべたかと思うと、もう一度真っ黒な葉を飛ばしてきた。
しかし、今度の葉の攻撃力は先程とは桁違いだ。なにしろ、蓮人の魔力によって生み出された炎を全ての葉が持っているのだから。
この攻撃をもう一度盾で受けようとするジリーを引き止めて横へ大きく飛んでかわす。
「あの炎はトレント以外燃えないようになっているが今はどうなのか分からないんだ、今ここで盾で受けるのはまずい! 回避に専念してくれ!」
さすがのトレントでも1度体から引き剥がした葉を動かすことは出来ないのかただ一直線に飛んでいくだけなので回避するのは容易い。
「う、うん……」
またも蓮人と密着状態のジリーは顔を赤らめているがそんなことを気にする余裕は蓮人にはない。
急いで体を起こし、また襲ってくる葉の回避を行う。
「こんなにも葉を撃ち続けられると中々近ずけない、リーとジュシュとも分断されちまったし……」
そう呟きながらも回避するのは忘れない。ときどき回避しきれないものも飛んでくるのだがそれは刀で斬ることで無効化する。
熱さを感じることは無いが、それでも魔力で出来ている炎なだけにどうなるのか分からず、今1歩攻撃に踏み出すことにできない。
そんなとき、分断されたが蓮人達と同じように回避しているリーからの声が届いた。
「とりあえず、今から私とジュシュちゃんの水属性魔法であの火が消えるのか試してみます! もし消えたら蓮人さんは攻撃をお願いします!」
「了解! 頼んだぞ!」
そして蓮人は無属性魔法を発動させ力を貯めながら真っ黒な葉を避け続ける。
「ジュシュちゃん、行きます!ウォーターシュート!」
2人から同時に勢いよく放たれた水は目の前から迫り来る全ての火の葉を消火しているにも関わらず威力を落とすことなくトレントへと命中する。
――――バッシャーーーーーン
勢いよく水をトレントに被せた。ちょっとした爆発音と共に一発で火が鎮火した。
「今です!」
リーの合図で蓮人はトレントへ向けて走り出し、上に大きく跳ぶ。
「うおおおおおおお!!!!!」
大上段に構えた刀を落下の勢いと共に振り下ろす。
――――ガキン
「うそ、だろ……?」
今までどんなモンスターでも、それこそ龍神の角ですらも斬ってきた蓮人の刀がたかがトレントの枝に止めたられたのだ。
そのとき蓮人の背筋を悪寒が駆け抜け、後ろへと大きくジャンプする。その瞬間、蓮人のいた場所を鋭利な葉を付けた枝が通り過ぎた。
「あっぶねえ……」
トレントは地面に根を張っていることにより動くことは出来ないが枝は動かせるようだ。
これで一旦攻撃の手は収まり蓮人達集まってトレントから距離を取る。
「全開の無属性魔法じゃなかったにしろ、まさか刀の刃が通らないとはな……」
「蓮人さんの火属性魔法も効かず、私達の水属性魔法も火を消しただけでダメージは通りませんでした。魔法も刀も効かなくて倒せるのでしょうか……」
ジュシュから思わず弱音が漏れ出てしまうが、それをかき消すようにリーが言葉を放つ。
「私に、考えがあります」
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