131 2人のパーティー加入に、異世界へ
ギルドへと顔を出した蓮人達は、事情を知っている受付嬢に呼ばれるとそのままムーラの部屋へと通された。
「よく帰って来てくれた。他の冒険者から龍の峠に繋がる道でワイバーンなどのモンスターが現れているという報告があって心配していたんだ。
とりあえず無事そうで何よりだ。早速だけど報告を聞こう」
蓮人達はムーラの対面に腰を下ろし、報告を始めた。
龍の峠の道中でワイバーンとドラゴンに襲われたこと、龍の峠に近づくにつれてモンスターがいなくなったこと、その原因は頂上に龍神がいたことを話したところで一度ムーラに止められた。
「ちょ、ちょっと待て! 龍神様がいたってどういうことだ……?」
「信じられない気持ちも分かるけど、そのままの意味で本当に龍神様が龍の峠の頂上にいたんだよ。あれだ、龍神様から貰った角っていう証拠があるぞ」
蓮人は懐から龍神から貰った角を取り出して渡す。
ムーラはおっかなびっくり受け取りながらじっくり観察する。
「確かに、これほど硬い上に柔軟さを兼ね備えているものは見たことがない。本当に龍神様のもののようだな……話を続けてくれ」
ムーラは角を返しながら話の続きを促す。
蓮人は受け取りながら頷き、今度は邪神の話をこの世界が創造されたときから細かく説明する。
もちろんオリビアと相談した通り、神の予言については隠している。
「なるほど、話はよく分かった。にわかには信じ難いが本当なのだろうな。大変なことになったな……。
それで蓮人達はこれからどうするんだ?」
「少し前だけど黒い瘴気を体中から出しているモンスターと黒いローブの男についての注意喚起があったのは覚えているか?」
蓮人達がオリビアの護衛依頼を受けた獣人族の村からの帰り道、黒い瘴気を放つゴブリンが現れた時、オリビアは王都でもギルドへ注意喚起を行うと言っており、言葉通り行われていたはずだ。
「ああ、覚えているぞ。まだ目撃情報などはほとんどないが、それがどうかしたのか?」
「その黒いローブの男が邪神に乗っ取られているかもしれないって話なんだ。
だから、俺達はその男を探そうと思ってる。ちょうどオリビアからその男が今いるかもしれない場所の情報もあったからさ」
「ほう、それはどこなんだ?」
「この隣の国のリーン皇国だよ。行くだけ行ってまた探してみるさ」
「なるほど、では私からの手紙を渡しておこう。それがあれば向こうのギルドでも色々と便利なはずだ」
「それは助かるよ」
厳密に言えばオリビアから貰えるから必要ないのだが、ここは好意としてしっかり受けとっておく。
「それで、話は始めの依頼に戻るのだが、結局頂上にあった龍神を模した石像が壊れた理由は何だったんだ?」
この瞬間、蓮人達は1人残らず凍りついた。
そう、龍神や邪神のことで頭がいっぱいになっていたせいで肝心の石像が壊れた理由を探すのをキレイさっぱり忘れていたのだ。
(やばいやばいやばいやばい、どうしたらいいんだ、これ?)
蓮人が焦ってなんと答えたら良いのか迷っていると、
「えーとですね、どうやら龍神様が龍の峠へ降り立ったときに、尻尾が当たったようで壊れてしまったらしいです。ね、蓮人さん?」
隣にいたリーがそう答えていた。
ムーラには見えないようにウインクしてきた。
かわいい……じゃなくてその話に乗ってなんとか誤魔化す。
「あ、ああ! そう! 龍神様の体ってかなり大きかったからね、そりゃ尻尾を動かしたら当たっちゃうよね! って感じだ!」
あからさまな蓮人の焦りにムーラは様子を伺うような目で見るのだが、
「まあ、そういうことなんだろうね。分かったよ、依頼達成だね」
そう言って依頼書にハンコを押し、それを蓮人に渡す。
「これを受付嬢に渡せばジリーとジュシュのBランク昇格とパーティーの加入手続きをして貰えるはずだよ」
「「ありがとうございます!」」
ジリーとジュシュはいきなり立ち上がり、お礼を言った。
「いいよいいよ、依頼の達成おめでとう! じゃあ早く行ってきなよ。その間に預ける手紙を書いておくからさ」
このお言葉に甘えて蓮人達はギルドのカウンターにいる受付嬢にハンコを押された依頼書を渡した。
こうしてジリーとジュシュのBランク昇格とホワイトストライプスへの正式加入が決まるのだった。
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