130 オリビアと相談して、異世界へ
「そ、それでその黒いローブの男はどこで見つかったんだ!?」
蓮人は思わず体を乗り出して尋ねる。
「ちょっと落ち着きなさいな。ジリーとジュシュに何も話してないんでしょ? 2人とも何が何だか分からないって顔してるわよ」
「そういや、そうだったな。まずは2人にきちんと説明しないとな」
蓮人はもう一度座り直し、ポカンとしているジリーとジュシュへと体を向けた。
「2人には確か邪神が復活して世界の危機で今どこにいるか分からないって話をしていたと思う。
実際にどこにいるかは分からないんだが、誰に取り憑いてるのか検討がついてるんだ」
「は、はぁ、それがその健吾くんという人なのですか?」
「ああ、俺の、友達なんだ」
「なるほど……」
これだけではオリビアとの関係など何も分からないのだが蓮人の並々ならぬ雰囲気に誰も言葉を続けられなかったのだが、
「もう少し詳しく話しなさいな、それじゃ分からないわよ?」
空気を読んだオリビアが言葉を続けた。
「あ、ああ……」
「仕方ないわね、私が話を続けるわ。それで黒い瘴気を出すモンスターと黒いローブの男が何なのかの話からするわね」
ジリーとジュシュはこの話の内容に緊張も忘れて真剣な顔に変わっていた。
「あなた達2人もスケルトンの大群と戦った時にキングスケルトンは見たはずよね。その体から黒い瘴気を出していなかったかしら?」
「出していましたね。黒い瘴気を溢れださせた頃から急に強くなったように思われました」
「そうね、黒い瘴気を放つモンスターは本来のモンスターよりもかなり強くなっているわ。
ただ、そのモンスターがどうやって発生しているか分かっていなかったのだけど、そんなモンスターが発生する場所には黒いローブの男がいたのよ。
状況証拠的にはその男が犯人と思われるのだけど、蓮人が目深に被るフードからチラッと見えた顔によると友達だった健吾くんで、そんなことをするような子ではないって話だったの。 だからその子が犯人だって確定する前に蓮人が捕まえてなんとかしなさいってことになったわけ」
ジリーとジュシュはうんうんと首を縦に振りながら話を聞いている。
「だからこうしてオリビアに黒いローブの男の目撃情報を集めてもらって、俺達がどうにかして健吾を正気に戻してやろうってなってたわけなんだけどな。
まさかの健吾が邪神に乗っ取られている可能性が出てきたわけだ」
「邪神の力ならばその黒い瘴気とか、モンスターが強くなったりするのにも納得がいくものね」
「まあ、そういうことなんだよ」
蓮人は自分と健吾が日本から来た異世界人であることは隠しておいた。
理由は分からないが言うべき時は今ではないという何か予感めいたものが蓮人の中にあったからだ。
「それじゃあ話を戻すけど、その黒いローブの男はどこで目撃されたんだ?」
「ウェスナ王国の隣、龍の峠を抜けて少し行った先にあるリーン皇国の皇都よ」
「確か、魔法とミスリルが有名な国なんだっけ?」
蓮人はジュシュの顔を見ながらそう言う。ジュシュはどこか嬉しそうな顔をしていた。
「ええ、そうね。後はウェスナ王国と非常に仲がいいってところかしらね、元は1つの国だったらしいから。
まあそんな雑学は置いておいて、いつ出発するつもりなのかしら?」
「まだ昼過ぎだし今からギルドへ行って龍の峠であったことの報告しに行って、明日か明後日には出発したいところだな。皆はそれでいいか?」
蓮人のその問いに皆は無言で首を縦に振った。
「そう、なら今日中に私の名前でリーン皇国へ手紙を書いて、それを宿屋に届けさせておくわ。それがあると中に入るのも簡単になるだろうし、最悪何かあってもそれがあれば何とかなるかもしれないからね」
「それは助かるよ、ありがとな」
「お礼ならいいわよ。それよりもポチちゃんに絶対ケガさせないでよね」
オリビアはそう言いながらまたポチを強く抱きしめるのだった。
それから少しだけ雑談に花を咲かせた後、蓮人達はギルドへと向かうことになる。
「それじゃそろそろ行かせてもらうよ」
「ああ、ポチちゃん、またしばらく会えないかもしれないけど、元気でね……」
オリビアは涙ぐみながらポチを強く抱き締め、別れの言葉を言っている。
「大丈夫、だよぉ、苦しいよぉ……」
こうしてオリビアとの話を終えてギルドへ向かうのだった。
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