129 オリビアに会って、異世界へ
「ポチちゃん久しぶりね、本当に会いたかったわ」
オリビアは地面に座り込みながらポチを力強く抱きしめていた。目がウルウルしている。
「苦しいよぉ……」
「あら、ごめんなさい!」
苦しむポチの言葉でやっと力を緩める。そこでやっと蓮人達に気づいたようだ。
「蓮人とリーも久しぶりね」
「おう!」
「お久しぶりです!」
蓮人とリーはもうオリビアに慣れているので楽に挨拶を返した。
そして視線は蓮人とリーの後ろに隠れているジリーとジュシュへと集まる。
「確かそっちの2人はスケルトンと戦った時に臨時でパーティー組んでた子だっけ?」
「ああ、右にいるのがジリーで左がジュシュって言うんだ。オリビアに会うっていうことでめちゃくちゃ緊張してるみたいなんだ。優しくしてやってくれよ」
「そうなのね、私がオリビアよ。一応このウェスナ王国の第1王女をしているわ。
確かにガチガチになっちゃうのも分からなくはないんだけど、お堅いのがあまり好きじゃないからそんなに緊張しなくても大丈夫よ。よろしくね」
オリビアは優しげな笑みを浮かべながら簡単に自己紹介すると2人の肩をポンポンと叩いた。
2人はその笑顔に見蕩れたようにボケっとしていたがすぐに我に返り、
「はっ、はいっ!」
ガッチガチになりながら敬礼のような真似をする。
思わずオリビアから笑みが零れたがとりあえず席へと促されるのだった。
「それで話ってなんなのかしら?私に直接言いに来るくらいだから相当なことなんでしょ?」
オリビアが執事を呼んでお茶セットが運び込まれた後、早速本題へと移ることになった。
「そうなんだよ、少し長くなるけど聞いてくれ」
そうしてジリーとジュシュをパーティーを組みたかったがランク差が2つあって出来なかったことから始まり、龍の峠で龍神に会い邪神がこの世界を滅ぼすかもしれないと言われたところまで全てを話した。
「なるほど……確かに邪神の話なんか簡単に話していいものなのか迷うところね」
「そういうこと、だからとりあえず王女様のオリビアに報告と相談に来たってわけだ」
「そうねぇ……」
オリビアは膝の上に乗せているポチの頭を撫でながら考え込む。
そうして5分が経った頃だろうか。
「やっぱり、ギルドへはきっちり報告するべきだわ。王家としてもその話を聞いていたら対策しない訳にはいかないし、そのためにはギルドとの協力は行っていかなければどうしようもないもの。
ただ、どこまで話すべきなのかってところが問題よね」
「どこまでとは?」
「龍神様がいらっしゃって邪神が封印から解き放たれたとお伝えになられた、という所はギルドへ報告するとして、その邪神を倒すのが蓮人だって神の予言があったってところをどうするかってところよ」
「それに何か不都合でもあるんですか?むしろ蓮人さんが倒してくれるんだ、と知った方が安心出来ると思うんですけど」
リーは頭にあった疑問を尋ねる。
「確かに、安心出来るかもしれないという点では伝えるべきかもしれないわね。でもそうした場合、蓮人の身柄がギルドで確保されちゃう可能性も出てくるわよ?」
「なんでだ? むしろ頑張ってこい!って応援して貰えるもんじゃないのか?」
「その可能性も有り得なくはないけど何とも言えないわね。
神の予言では蓮人が邪神を倒すっていう予言だけでどこにどれだけの被害が起こるって明確に言われたわけじゃないんでしょ?
だったら王都の被害を減らすためには蓮人を王都で確保しておいて、邪神が王都へやって来た時に倒してもらおうって考える人もいるわよ」
オリビアの説得力のある言葉に蓮人は頷くしかできなかった。
「だからそのあたりは伏せて報告するべきだと私は思うわよ」
「分かった、そうさせてもらうよ。でもそれを王女様から言われるとはな」
「まあ私も本音を言えばそうよ? でも前にその邪神に取り憑いているかもしれない健吾くんを助けるのに協力するって言っちゃったからね。そのためには自由に動けなくなるのは困るのよ。折角また黒い瘴気を出しているモンスターと黒いローブの男の情報も手に入れてきたところだしね」
「本当か!?」
「ええ、もちろんよ」
健吾に会えるかもしれないという期待に蓮人は胸を躍らせる。
その横で黒いローブの男の話など何も分からないジリーとジュシュはポケっとしているのだった。
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