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勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
128/170

128 2人を引き連れて、異世界へ

「おーい、起きろー。今日は王城に行ってオリビアと会うことになったぞー」


 蓮人はポチを軽く揺さぶり起こす。


「……うーん、分かったぁ……」


「ポチはいい子だなあ……」


 駄々をこねることなく起きてくれるポチに感動しながら蓮人も用意を始める。

 この間も隣の女子部屋からはリーvsジリーとジュシュの押し問答が聞こえていたのだった。

 思わず溜息が漏れ出てしまうがそんな女子勢は置いてポチと2人で宿の大食堂へと向かい、朝ご飯を食べるのだった。




「ふーっ、お腹いっぱい」


 食後のコーヒーを楽しむ蓮人の横でポチがたらふくのご飯を食べ終えた頃、やっとリー達が降りてきた。皆の顔は離れていても疲れているように見えた。


「はぁ……おはようございます」


 リーは溜息をついているので確実に疲れている。

 それに続いてジリーとジュシュもいるのだが2人とも顔が真っ青だった。


「おつかれ、リー。ジリーとジュシュは大丈夫か?」


 ジリーとジュシュは首を横に振る。

 宿屋の人が出してくれたお茶を受け取るも喉を通らずコップを置いていた。


「2人は緊張し過ぎだって、もっと気抜いても大丈夫だよ。オリビアもいいやつだし。

 というか、お前らスケルトンの大群と戦った時にオリビアに会っただろ?」


「あのときはスケルトンと戦う緊張の方でそれを感じる余裕がなかっただけです! それに会ったと言われても遠くから見てただけですもん、会ったに入りません!」


 ジュシュはいつになく早口でまくし立てる。


「まあまあ分かったから、早く朝ご飯食べてしまえよ」


「ううう……喉通らないですよ……」


 パンとスープを前にしても食事を始める様子はない。


「でも早くしないと来ちゃうぞ?」


「え、何がですか?」


「迎えだけど?」


 ジリーとジュシュがハッとして固まった。


「む、迎えってまさか……」


「言ってなかったっけ? 多分そろそろ俺たちを迎えに王城から馬車がやってくる頃だと思うぞ?」


 蓮人のこの言葉を聞いて更に顔が真っ青になる2人。

 そして同時に席を立ったかと思うと回れ右をして離れていく。


「どこ行くんだ?」


「やっぱり無理、私達はお留守番してるよ」


 そういう2人を蓮人とリーら無理やり押さえつけ、もう一度座らせた。


「いい加減観念しろって。別に会話しろって言ってるわけじゃないんだ、着いてきてくれるだけでいいよ」


「ほ、本当ですね……?」


「ああ、もちろんだよ。流石に2人が話しかけられたやつまでは答えらんないけどな」


「うう……」


 ジュシュの目をウルウルさせながらの呟きに蓮人は危うくやられてしまいそうになったが何とか理性で耐えた。


「はいはい、早く食べなさい!」


 こうして亀よりも遅い食事を始めるのだった。


 その食事も終わりかけた頃である。


「蓮人殿はいらっしゃるか!」


 そんな声が宿屋の大食堂に響いた。それに蓮人は手を挙げて答える。


「オリビア様の命により蓮人様御一行をお迎えに参りました。早速ですが前に停めてある馬車へお乗りください」


「はい! ありがとうございます!」


 おそらく執事のお偉いさんであろう人に伏せられながらそう言われたため、またジリーとジュシュが顔を青ざめさせるが無視して引きずりながら連れていくのだった。




 王城へは目と鼻の先だったためすぐに王城へと到着した蓮人達はそのままオリビアが待っているという客間に通されることになった。


「服装とかこれで大丈夫なのかな……」


「失礼に当たらないか不安です……」


「ご安心ください、オリビア様は心お優しいお方であります。今日のようなお忍びのような謁見ではお気になさらずとも大丈夫でしょう」


 執事の人はジリーとジュシュにそう言う。蓮人やリーが言うよりもよっぽど説得力があったらしい。2人の顔が少し和らいだ。


「お二人様の顔色も良くなられたところで丁度お着きしました。どうぞお入りください」


 そう言って執事は扉を開けた。どうやら緊張を解くために少し回り道して歩いていたらしい。かなりできる執事である。

 そして蓮人達が中に入り扉が閉められた瞬間である。何かがポチへととんでもない速さで接近してきたのは。


「ポチちゃん、会いたかったわ!!!!!」


 通常運転のオリビアだった。そんなオリビアにジリーとジュシュは驚いていた。

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