123 龍神の話に、異世界へ
『イチャイチャするのはその辺にして、我の話を聞いてもらいたいのだが?』
龍神は蓮人とリーの甘い空気を冷ややかな視線と共に真っ二つに叩き切る。
「「はい!」」
こちらの太刀筋も見事なもので、蓮人とリーは一瞬で我に返り、顔を赤くしながら姿勢を正して龍神に向かい合った。
『……うむ、それで良い。
では我の話を聞いてもらう、心して聞け』
そうして龍神の長い話が始まるのだった。
このアルフェウムの創造の話をするとしようか……何、知っていると?だがこの世界に伝わるものと真実は違う。大人しく聞いておけ、そこに相違があるとややこしくなる。
では、早速この世界がどうやって出来たかを話すとしよう。
この世界では女神が全てを創造したと言われているが、実際にそれは違う。
我であるこの龍神が大地と海を、炎神がこの世界に必要な太陽を作り出し、この世界の形を創造した。
そして、女神が人を作り出し知恵を授けた。
こうして今のこの世界、アルフェウムが生まれた。
だがそう上手くいかないのがこの世の常だ。
女神の知恵を授かった人はそれを活かしてうまく発展していったかに思えたのだが、悲しいことにそれを奪い合う戦争が生まれてしまった。
女神はその戦争を悲しく思い、止めるためにモンスターを生み出そうとした。
ここは人族に伝わるものと変わらないかもしれないが、一つだけ大きな違いがある。
それは女神が直接モンスターを生み出したわけではないということだ。
自分の生み出した子を殺すための存在を創り出すことが出来なかった女神は、邪神なる存在を創造した。
名から分かる通り、邪の神でありモンスターの神である存在だ。
女神は邪神にアルフェウムのバランスが壊れない程度のモンスターを生み出し、この世界から争いがなくすようにという命令を下した。
初めの方はそれによって人族は手を取り合うようになり、事が上手く進んでいった。
しかしやはり邪神の存在がネックになった。
邪神は女神から生み出されただけに知恵も高く、すぐにアルフェウムを滅ぼし自分だけの邪の世界にしてやろうと考えたようだ。
女神にバレないように強いモンスター生み出し、人族を滅ぼすように命令した。
そうしてすごい勢いで人族は数を減らしていくことになり、いくつかの国が滅んだ頃だっただろう。
異変を感じた女神は邪神を見張ることにした。そして邪神がモンスターを生み出し、人間を滅ぼせと命令している所を発見する。
怒った女神は邪神を捕え、アルフェウムの地下深くに封印した。
それによってモンスターは世界中に少しずつ現れるようになり、この世界の人とモンスターの均衡はうまく保たれるようになった。
また邪神の手によって生み出された強大な力を持つモンスターを倒すため、女神に生み出されたのが今では神人族と呼ばれている獣人族、竜人族、魚人族だ。
こうして今お前たちの住んでいる世界へと繋がってくる。
これがこの世界、アルフェウム創造の真実だ。
こうして龍神の長い話が終わった。
リーは自分達が子供の頃からずっと伝えられていた話が実は間違っていたという事実に驚きを隠せていない。
蓮人はその横で首を傾げていた。
(それでこの話と始めに言ってた危機がどうのこうのって話に何の繋がりがあるんだ?)
このことを疑問に感じていた。
そしてそれを声にして尋ねてみる。
「それで、この世界の創造の話とこの世界に危機が訪れるみたいな話がと何の繋がりがある……んでしょうか?」
神様相手にタメ口をききそうになるが何とか堪えた。
『口調好きにすればいい。
それと、話の繋がりは何だという質問だったな。それに答えよう、驚くなよ?』
龍神のその前置きに蓮人とリーは頷いて言葉の続きを待つ。
『さっきの話でモンスターの神である邪神は地下深くに封印されたといったな。その封印が解かれ、邪神はこの世界に解き放たれているのだ』
衝撃の事実を伝えられた蓮人とリーは驚きすぎて声も出ないのだった。
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