表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇気をもって、異世界へ  作者: レイン
122/170

122 龍人の試練に、異世界へ

 『早く刀を抜いてかかってこい』


 龍神は動き出さない蓮人を急かすようにそう言う。

 それに従い、蓮人は渋々ではあるが刀を抜いて構える。


『では、殺す気でかかってこい。殺らなければ殺られると思え』


 脳内にその声が響いた瞬間、大瀑布のような覇気が蓮人に向けて放たれた。

 今までの試すような覇気ではなく本物の、敵を威圧するための覇気だ。

 それと共に心の底から震えてくる殺気も放たれている。


 (この威圧感はなんなんだよ……!)


 蓮人は覇気と殺気に当てられたため体中が震えて動き出すことが出来ないでいた。


『……早くしろ。我を待たせるな』


 更に睨みまで効かせてくるようになってしまった。

 蓮人は心を決める。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」


 雄叫びを上げると共に無属性魔法を全開にして発動、そして震える膝にムチを打って龍神に向かって駆け出す。

 その速さはいつもの半分といったところだ。

 そして刀を振り上げ龍神の前足に向けて振り下ろすのだが、その太刀筋から怯えが見て取れ、鈍っていた。

 そんな太刀筋では通る刃も通らない。

 強靭な皮膚の鱗にカンッと弾かれてしまった。


「な、なんて硬さだよ……」


 蓮人は自分の太刀筋が鈍っていることにも気づかず、そう呟いてしまった。

 それが龍神にも聞こえていたようだ。いきなり体中を押さえつける覇気がさらに強くなった。


『何を言っている。貴様、やる気があるのか?

 興ざめだ。この世界を救うのはお前じゃないようだ、神の予言は間違っていたようだ』


「やっぱり、そうだよな。じゃあこの覇気を……」


『もう用済みだ。その少女諸共焼き払ってくれる』


 蓮人の言葉を遮るようにそう言った龍神は息を吸い込み、ブレスの準備を始める。

 口から漏れ出す息からは真っ赤な炎が漏れ出ている。本気で焼き払うつもりのようだ。


「おい! 待てよ!」


 急いで逃げようとするがリーはまだ立ち上がることが出来ていない。


「蓮人さん、私を置いて早く逃げてください。今ならまだ間に合うかもしれません」


「何を言ってるんだ! 早く逃げるぞ!」


 蓮人はリーの体を無理矢理起こそうとするが足に力が入っていないようで、どうしようもできない。


「私はいいですから、早く……」


「そんなこと出来るわけないだろ!くそ!」


 蓮人はリーを優しく地面に寝かせ、もう一度龍神に向き合い、刀を抜く。


「俺だけじゃなくて、何もしていないただの女の子まで巻き込んで殺そうとしやがって……何が神だ、クソ野郎! 今ここで、俺が、お前を退治してやるよ!」


 蓮人は雄叫びをあげ、無属性魔法を全開にして発動する。

 そして、周囲を聖なる眩しい光が覆い尽くした。その光の中心には全身から光を放つ蓮人が立っていた。


「行くぞ!」


 蓮人はまた龍神へと駆けて行く。

 しかし、その速さは先程とは比べ物にもならない。光のような速さで龍神へと近づき、地を蹴って龍神の顔を刀の射程圏内に入れた。


「おりゃぁぁぁぁぁぁ!」


 気合いと共に刀を横に振り抜く。

 それは龍神の頭にある角の根元へと命中し、真っ二つに叩き切った。その太刀筋は見事なもので真っ直ぐな線だった。

 そして、振り抜いた勢いを利用して一回転し、今度は大上段に刀を構える。

 またも蓮人は雄叫びをあげ、刀を振り下ろす。

 その刀の一撃は龍神の左まぶたに命中し、硬い皮膚を貫通して縦一直線の深い傷を与えることに成功した。


「グォォォォォ!」


 龍神は初めて脳内に直接語りかけることのない本当の声を上げた。その声は苦痛に満ちている。

 蓮人は1度距離を取ってリーのそばに戻り、様子を伺う。

 龍神はすぐに立ち直り、蓮人へと向き合った。


『まあ及第点といったところか。一応合格にしといてやろう』


 先程まで蓮人の体を圧迫してきた覇気と殺気がきれいさっぱり消え去った。


「え?」


 蓮人は思わず刀を落としてしまう。


『なんだ? 我が本当に罪もない者を殺すとでも思ったか? 神は天罰でない限り手は下さんから安心しろ』


「な、なんだ、良かった……」


 蓮人は一気に地面に崩れ落ちた。


『お前はああでもしないと本気を出せないようだったからな。試させてもらっただけだ』


「ほんと、悪い冗談だよ……」


「でも、カッコよかったですよ……?」


 リーが少し頬を赤らめながらそう言った。


「そ、そうか? ありがとな……」


 こうして蓮人とリーの間に流れるむず痒い甘い雰囲気が流れていくのを龍神は静かに見ているのだった。

読んで頂きありがとうございます!

よろしければブックマーク、評価、感想お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ