120 二手に分かれて、異世界へ
「会いに行くって、何言ってるんですか! 蓮人さんもあの強大な力を感じたはずですよ」
リーは今にも歩きだそうとする蓮人を止める。
「ここから先は俺だけで行く。リーは皆を連れて帰ってくれ」
「何を言ってるんですか! 皆で帰るんですよ!」
珍しく、リーが感情を顕にして声を荒らげている。
「いや、俺はあの龍に会いに行かなきゃいけないんだ」
「じゃあその理由は何なんですか! 納得する理由じゃないと許しません」
「さっき、俺達の上をあの龍は飛んでただろ、その時に俺と目が合ったんだ。そしたらいきなり頭に『頂上へと登り、我に会いに来い』って言葉が流れてきたんだ。これは多分だけどあの龍からのテレパシーか何かなんだと思う。
だから俺は会いに行かなきゃならないんだ」
蓮人はリーの目を見てしっかりと答えた。
「でも、あまりにも危険すぎますよ……」
「ああ、それは俺も分かってる。だから、リーは皆を連れて先に帰ってて欲しいんだ。ポチもあんな状態じゃ危ないしな」
こんな話をしている横でポチはうずくまって震えていた。それをジリーとジュシュが背中を撫でてやったりして何とか落ち着くように頑張っていた。
「でも……」
何とかして頂上へと行く蓮人を止めたいリーではあるが、どうやらそのための反論がなくなってしまったようだ。
「大丈夫だって、何とかなるさ」
「だから不安なんですよ……」
リーは黙り込み、どうするべきか考えているようだ。
「決めました! 私は蓮人さんと一緒に頂上へと行きます!」
「ちょ! 何言ってんだよ、俺一人で行ってくるよ」
「何とかなる、ですよね?」
「いや、それはそうなんだけど……」
「じゃあ決まりですね!」
リーはそう言うとすぐにポチ達の方へ駆けて行った。蓮人もそれについて行く。
「私と蓮人さんは頂上に行ってあの龍の様子を見てきます。ジリーさんとジュシュさんはポチちゃんを連れて王都へと戻っていてください」
「それは危険すぎる!私も行く!」
リーの言葉にジリーも同じような反応をするのだが、
「いえ、こんなポチちゃんをジュシュさんだけに任せる訳にはいきません。だから、ジリーさんもポチちゃんについていてあげて欲しいのです。
安心してください、蓮人さんは私が見張っておきますから」
蓮人は思わず何を見張るんだと突っ込みたくなったがなんとか我慢することに成功した。
「……わかったよ、ポチちゃんは私とジュシュに任せて。でも蓮人はリーに任せたよ、絶対無茶させないようにね」
「うん、もちろん!」
そうして2人は笑いあったかと思うと次には行動を起こしていた。
「蓮人さん、早く行きましょう!」
「ジュシュもポチちゃんを支えるの手伝って!早く行くよ!」
「「はい!」」
蓮人とジュシュの声が揃った中、お互いに行動を始めるのだった。
蓮人とリーは2人並んで全くモンスターのいない頂上への道を歩いていたのだが、いきなりリーがクスっと笑った。
「どうしたんだ?」
「いえ、こんな状況なんですけど、こうして2人並んで歩いているのが懐かしくて楽しくなってきたんです」
「確かに、2人だけで並んで歩くのは久しぶりだな。懐かしいなぁ」
こうして2人は昔のことを思い出して話しながら歩いて行く。
「あの、帰ったら、2人でまたあのときのお祭りの続きにでも行きませんか……?」
真っ赤な顔をしたリーが遠慮がちに聞いてくる。
「あれか、王国生誕祭のときのお祭りか! 確かあの時はポチに会って途中で終わっちゃったんだもんな」
「そうですね、このブレスレットもそのときにプレゼントしてもらったものですよ!」
リーは左手首に付けている青いブレスレットを見せてきながら、嬉しそうに言ってくる。
「懐かしいなぁ。祭りはもう終わってるけど、帰ったらその続きをしようか」
「はい!」
リーは満面の笑みを浮かべて元気な返事をする。
(やっぱりリーは可愛いな)
そんなことを思いながら頂上への道を歩いて行くのだった。
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