117 ドラゴン退治に、異世界へ
ワイバーンを倒した後また歩みを進め始めた蓮人達ではあるが、龍の峠に近づくにつれて遭遇するモンスターが増えてきた。
ジュシュによると、そのどれもが龍の峠の中腹から頂上付近にかけて出現するとされているモンスターだったのだ。
「やっぱりこれは何かが起きているとしか思えないですね」
リーが歩きながらそう口を開く。
「石像の様子を見てくるだけでジリーとジュシュのランクが上がるなんて簡単な依頼だと思ってたけど、やっぱり一筋縄じゃいかないんだなぁ……」
「多分だけど、ギルドマスターも何かが起こっているのが分かっててこの依頼を私達に出したんだよ。
私とジュシュのランクアップが報酬だとすれば蓮人が受けないわけはないし、起こっている何かが正体不明で分からなくても、蓮人達Aランク冒険者が入れば何とかなるって考えてこそのこの依頼でしょうね」
「うわ、図られたのか……食えないなぁ……」
ジリーの考察に舌を巻く蓮人であった。そして刀を抜く。
それに習ってリー達もそれぞれ武器を構え、
「また来たぞ、気をつけろよ!」
蓮人はそう声をかけてから、すごい勢いで迫ってきている何かを注視する。
「あ、あれはまさか……」
ジュシュが驚きの声を上げて1歩後ろへ下がる。
「あれはなんなんだ、教えてくれ!」
「あのモンスターは……ドラゴンです。
空を飛ぶことは出来ず、地竜に分類されている竜種です。
その体を覆っている鱗はとんでもない強度を誇っていて刃を通さないにも関わらず、柔軟さも持ち合わせておりどの魔法の威力も減らしてしまうと言われています。
ドラゴンなんて龍の峠の頂上にいるかいないかと言われているのに、なんでこんな所に……」
「今はそんなことどうでもいいの! まずはドラゴンを倒すことに集中しなさい!」
狼狽えているジュシュにジリーは檄を飛ばす。
それでなんとか持ちこたえたジュシュは魔力を練り始める。
「リーとジュシュは魔法をぶっぱなしてドラゴンの動きを止めてくれ。
俺とポチとジリーは魔法を撃った瞬間に走り出して、止まった瞬間に攻撃だ。しくじるなよ!」
「「「「了解!」」」」
話している間にもドラゴンは近づいてきており、もうすぐそこまで来ている。
(ドラゴンって言うからもっとやばいのを想像してたけど、あれはほぼティラノサウルスだな。
どっちにしてもやばいことに変わりはないけどな)
そんな風に監察していると、後ろから声をかけられる。
「聞いてください!ドラゴンの前足は退化しており、前足での攻撃はありません。なのであの長い尻尾と噛みつきの攻撃だけは絶対に避けてください!
最悪の場合即死もありますから!」
「分かった! そろそろ行くぞ!」
ジュシュからの怖いアドバイスを受け取り、カウントダウンを始める。
「3……2……1……行くぞ!」
「「アクアカッター!」」
リーとジュシュから水刃が合計10個放たれ、6個が足に、4個が頭に直撃する。
魔法の威力も弱まると言われていた通りいつもならスパッと切断しているはずの水刃が、鱗に当たって少し肉を切っただけで後方へと流されてしまった。
だが、ドラゴンの足を止めるにはそれで十分だった。
――――グギャァァァァァ
ドラゴンが雄叫びを上げて止まった。
(魔法は確かに効かなかったけど、これならどうだ!)
無属性魔法を全開で発動させた蓮人は大きくジャンプして尻尾へと刀を振り下ろす。
「おりゃぁぁぁぁぁ!」
いつものようにスっと刃が入らなかったが、気合で無理矢理押し込む。
――――グギャァァァァァ
もう一度ドラゴンが声を上げる。
それと同時に尻尾も切れ落ちるのだが、切断面は粗くいつものような滑らかな線ではなかった。
尻尾を切り落とされたことに怒り狂うドラゴンはその場で短くなった尻尾を振り回す。
蓮人はポチとジリーは無事か確認したところ、既に離れた所へと下がっていた。どうやら2人の攻撃は固い鱗に弾かれたらしく攻撃が通らないと判断するやいなや下がっていたようで、助かった。
「よし、このまま押し切ってやる!」
ただ痛みでガムシャラに振り回されている尻尾など怖くはない。刀を握り直し、もう一度斬りかかる。
(これで決める!)
蓮人はそう心に決めてドラゴンの頭に飛び上がった。
そして、眉間へと刀を深々と突き刺す。
その瞬間、ドラゴンの体が一度ビクンと痙攣したかと思うと、そのまま崩れ落ちるのだった。
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