111 Aランク昇格に、異世界へ
のんびりと歩いていたため王都のギルドへと戻った頃には空がオレンジ色に染まっていた。
この時間になるとポチの腹の虫も終始動き続けている。
ギルドの中へ入るともうパーティーの準備は終わっており、蓮人達は拍手と共に中へ迎え入れられ、周りにいる冒険者達から背を押される
何が起こっているのか分からないが、なされるがままに進んでいくとテーブルの誕生日席に腰を下ろさせられた。
それを確認したギルドマスターであるムーラが口を開く。
「まずは皆、依頼の達成おめでとう!
そして無傷とは言えないが全員が生きて帰ってきてくれたことを嬉しく思う。皆、よくやってくれた!!」
緊急討伐依頼を無事に終え王都のピンチを守ったという達成感と、死人を出すことなく朝と同じメンバーが全員集まれたという奇跡にその場にいる冒険者たちから歓声がある。
ムーラが手で制そうとするのだが、周りにいるヤツらと抱き合ったりしている冒険者には最早届かない。
ムーラはそれに困った顔をしているが笑みを浮かべており、嬉しそうな雰囲気が漏れ出ている。
そうして仕方ない、というふうに皆が静まるのを待ってから言葉を続ける。
「そして、ホワイトストライプスの諸君!君たちの活躍は素晴らしかった。
特に蓮人とリー! よくぞ元凶であったキングスケルトンを倒してくれた! それが無かったら今こうして集まることは出来なかっただろう。
もう一度礼を言わせてくれ、ありがとう!」
またもそれに歓声と拍手が上がる。
蓮人はその歓声と拍手に達成感を感じ、自然と口が緩んでいた。
「そこでだ! 蓮人達ホワイトストライプスには特別に緊急討伐依頼の報酬とは別にもう1つ報酬を用意させてもらった!」
それに今度は全員が静まりかえる。
ムーラはたっぷりと溜めてから口を開いた。
「ホワイトストライプスの…………Aランク昇格だ!!!!」
今日1番の歓声が上がった。
もちろん蓮人も例外ではなく、貧血でフラフラにも関わらず声を上げてしまった。こちらは歓声ではなく驚きの声ではあるのだが。
リーとジリー、ジュシュは驚きすぎて声も出ていない。
ポチだけは通常運転で目の前に並べられているご馳走に釘付けだ。
「これでホワイトストライプスもウェスナ王国が誇る冒険者パーティーの仲間入りって訳だ」
Aランクの上にSランクもあるのだが、歴代に数人いただけで現在はSランク冒険者は存在せず実質的な1番上がAランクであること。
そしてそのAランク冒険者もこの広い世界には数組しかいないということをこの話の後に聞かされて腰を抜かしそうになったのは内緒だ。
小さくなってきた歓声を見計らってムーラはまた口を開く。
「私からの話は以上だ!
最後に皆、今回は本当に助かった!
このパーティーはその礼だ! 存分に食べて飲んで楽しんでくれ! 乾杯!」
そうして長い長いパーティーが始まった。
今まで見ることがなかった人が大半のAランク冒険者が誕生した上、先日発表されたばかりの獣人族であるポチまでいるのだ。
蓮人とリーにポチはパーティーを楽しむ間もなく他の冒険者に囲まれてしまい引切り無しに話しかけられる。
ポチはそんな中でも目の前のご馳走を食べ続けているのだが、蓮人達はそういう訳にもいかず、ほぼ料理を食べる暇すらなかった。
そんな中で皆が酔っ払ってきた頃合いを見て蓮人とリーはそっと抜け出し、ギルドの2階にあるテラスで2人一息をつくのだった。
「キングスケルトンと戦うより疲れたかも……」
「分からなくもないです……」
2人は迫り来る人の群れに疲れきっているのだった。
「ご馳走もほとんど食べ損ねたなぁ……お腹空いた……」
蓮人の腹の虫も鳴り出す。
そんな2人の前に料理の盛られた皿を差し出してくる手が4本あった。
「全然食べられてないと思って持ってきたよ」
その手の持ち主はジリーとジュシュだった。
「まじか! ありがとう!」
「ありがとうございます!」
蓮人とリーはお礼を言って皿を受け取りお腹を満たすのだった。
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