106 状況が変わって、異世界へ
「おい! 何したんだよ!」
蓮人は真っ暗になった空を見回しながらそう声を荒げる。
「何ト言ワレテモナ。我ラアンデッド族ニトッテ動キヤスイ状態ニシタダケダ」
真っ暗な状況ではキングスケルトンの真っ赤な点の目がやけに不気味に見え、それに見据えられている蓮人は背筋が凍る。
「ヤハリ、コチラノ方ガ動キヤスイナ」
キングスケルトンは骨の腕をグルグル回している。
そのとき、蓮人の後ろにいる騎士団や冒険者から声が上がる。
「おい、何でこんなに一気に復活するようになったんだよ!」
「やばいぞ!」
「しかもこいつらさっきより強くなってやがる!」
そんな切羽詰まった声だ。
今まで数だけが厄介だったはずが暗くなった途端に強くなり、剣の一撃で真っ二つに出来ていたはずが出来なくなっているようだ。
しかも復活するスパンがとんでもなく早くなっている。
一時はほぼ全滅にまで追いやったはずが、今では倒す速度が復活する速度よりも遅く、数が増え続けているようだ。
「な、なんだよこれ……」
蓮人は周囲を見回しながら呟く。
「我ラアンデッド族ハ夜、真ッ暗ナ状態デヤット本領ヲ発揮デキルヨウニナル。
シカシ、先程マデハ昼デ太陽ガ昇ッテイタ。ダガ、ソンナモノハ我ノ魔法デ無クシテシマエバ良イコトナノダ」
蓮人はギルドで今回の緊急討伐依頼の説明を受けている時に、「昼間のアンデッドならば力も落ちて我らの敵ではない」という話をされたのを思い出した。
(てことは、夜のアンデッドなら脅威ってことだろ。これはかなりまずいんじゃないのか……?)
「やべえ! こっちも助けてくれ!」
「こっちも手一杯だ!」
「押し込まれるぞ!」
この間にも冒険者や騎士団からは助けを呼ぶ悲鳴と怒声が飛び交っている。
混戦になった際に右翼も左翼も関係なくごちゃ混ぜになっていたのが、今は全員が中央に集まりスケルトンに囲まれながら戦っていた。
そんな悲鳴や怒声をキングスケルトンは気持ちよさそうに聞き、骨の顔だが笑みを零しているように見える。
蓮人はそれを睨みつけながらあることを尋ねる。
「これは、お前を倒せば直るのか?」
「勿論ダ。ダガ、ソレハ不可能ダロウ。昼間ノ我ヲ倒セナカッタ者ニ、本領ヲ発揮シタ我ヲ倒セルワケナイガナ」
小馬鹿にしたようにキングスケルトンは答えた。
「それはやってみないと分からないだろ?」
そう言って蓮人は体に力を込める。その瞬間蓮人の体を覆う光が強くなり、周囲を少しだけ明るくする。
「行くぞ!」
蓮人は刀を右手に持ってキングスケルトンへと駆ける。
キングスケルトンもそれを黙って見ているわけもなく、瞬時に杖の先に魔刃を生み出し、槍にする。
そして蓮人は刀を大上段に構えて飛び上がり、重量の力も借りて振り下ろす。
しかし、その渾身の一撃は槍の先で軽々と受け止められ、そのまま上へと弾かれた。
空中に飛び上がっている蓮人はそんなことをされれば体勢など簡単に崩される。
胴体がガラ空きになってしまった。
(や、やばい……!)
目の前でキングスケルトンが槍の石突の部分が蓮人の鳩尾を狙っているのが分かった。
それが分かったところで踏ん張りの利かない空中では動くことなど出来ない。
その突きは蓮人の鳩尾を寸分の狂いなく打ち、そのまま後方へ吹き飛ばす。
蓮人は空中で2回回って地面へ無事に着地し、すぐに立ち上がる。
キングスケルトンはそんな蓮人の様子を見て驚いている。
「ナゼダメージガ通ッテイナイ?」
そう言われて蓮人はダメージを受けていないことを感じた。
確かに石突が鳩尾へと当たったはずだ。その部分に手を当てて見てみる。
そこには一切の傷がついていない胸当てがあった。
「この胸当てのおかげだな、またあの定員さんにはお礼言っとかないとな」
蓮人はそしてまた刀を構える。
「マアイイ、ソレナラバ胸当テ以外ヲ狙エバイインダカラナ」
キングスケルトンも槍を構え直す。
「今度ハコッチカラダ」
キングスケルトンはそのままかなりの速さで駆け寄ってくる。
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