102 キングスケルトンに、異世界へ
フレイムランスは蓮人がその場の思いつきでイメージして唱えたにも関わらず、威力はとんでもないもので、範囲内にいたスケルトンの骨の灰すら残っておらず、またその余波だけで地面も黒く焼け焦げていた。
そうして出来ている黒焦げた道をホワイトストライプスは走って行く。
騎士団はその後ろに続いて殿を務め、そのまま押し寄せて来ているスケルトンの相手をしてくれている。
そして蓮人の目の前には黒いローブを着て杖を握りしめている『何か』が背を向けていた。
杖からはまだドス黒い光が出続けている。
「おい!」
蓮人は声を張り上げる。
それに反応してその『何か』が振り向いた。
フードを目深に被っていることによってどんな人相をしているのか分からない。しかし、杖を握る手が真っ白だった。いや、肉がなく骨が剥き出しだったのだ。
(健吾じゃない、か……)
落胆を隠すことは出来ないが、今はそんなことを気にしているわけにはいかない。
このスケルトンの大群を率いているのはおそらくこいつだ。止めなければならない。
「何用ダ、人間」
そのときに見えた顔はガイコツそのもので目の窪みらしき所からは真っ赤な点がこちらを見据えていた。
その目を見るだけで蓮人の体が震え出す。どうやらリーもポチも同じようだが、皆体を押さえつけて止めている。
「お前を、止めに来た」
蓮人は怯える心を無理に押さえつけてそう宣言する。
「ソンナ震エル体デカ?」
そしてその黒いローブの『何か』から何かドス黒いオーラのようなものが溢れ出てくる。あのときのゴブリンと全く同じものだ。
「笑止」
いや、違った。そんな生易しいものではなかった。あれよりももっと濃密で強い力を感じる。
「我ノ名はキングスケルトン。主デアル、ナイトメア様ニ力ヲ頂イタ者デアル。ソシテ貴様ラヲ滅ボス者デアル」
そう宣言したキングスケルトンは杖を構える。
そしてドス黒い光を放つ直径60センチメートル程度の球体が生み出された。
「死ネ」
それが蓮人に向けて放たれる。
慌てて回避行動を取ろうとするが、後ろでは震えを抑えきれていないジリーとジュシュがいる。リーとポチは避けきれてもジリーとジュシュは直撃を食らってしまうだろう。
そして蓮人は心を決める。
「うおおおおおおお!!!」
蓮人は無属性魔法を発動させ気合いを叫びながら、刀を勢いよく引き抜き、そのまま横に一閃する。
――――バァァァァァン
その闇の球体は刀の一閃に1拍遅れて真っ二つに別れ、そのまま爆発する。
蓮人達は爆風に晒されるがダメージを受けるには至らない。
「ホウ、コレハオモシロイ。ナラバ、コレナラドウダ?」
今度は先程と同じ闇の球体が2つ、時間差で放ってくる。
1つ目は同じように刀を一閃する事でまた2つに斬ることが出来たが、2つ目は間に合わない。
蓮人は自分の体を盾にして仲間達を守ろうとする。
そんなとき、その蓮人の横を何かが追い越した。
そして闇の球体は蓮人の体へは届かず、その何かに衝突し、爆発が起こった。そうして砂煙のような何かが周りを覆った。
その煙が風に吹かれて消えていく。そこには大きな盾を構えたジリーの姿があった。
「大丈夫?」
ジリーは笑みを浮かべながら蓮人達が無事か尋ねた。
「ああ。そっちこそ大丈夫か?」
蓮人も笑みを浮かべて肯定し、逆に尋ね返す。
「いつまでも震えてられない。早く倒さないとね」
「それもそうだな」
そしてキングスケルトンへと向き直る。
「さあ、これ以上お前の好きにはさせない、俺達が相手だ!」
この言葉を機にそれぞれ武器を構える。
それを見ていたキングスケルトンはケタケタと骨が揺れるような笑い声をあげる。
その声が急に止まると共に真っ赤な点の目が蓮人達を捉えた。
「イイダロウ、カカッテコイ」
またキングスケルトンの体からドス黒い瘴気が溢れ出してくる。
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