朝ごはん
テーブルの端の方に二人が食べるには、少し多いくらいの料理が並べられていた。
殺鬼は、料理の並べられているところまで向かい椅子を引き八重に座るように促す。
八重は、おとなしく席に着き殺鬼が座るのを待っていると、後ろから首にナイフがあてられる。
「僕は、いつでも君を殺すことができるのを忘れないでね」
体を一つも動かせなくなるぐらいの殺気で背筋が凍り付く。
殺鬼は、何事もなかったかのように八重の向かい側に座り「いただきます」の合図で料理を食べ始める。
八重は、殺鬼が食べてる姿を眺めていた。
「食べないのかい?三日も寝込んでいた君のためにこの量を作ったんだ残さず食べてくれないと困るな」
「あなたが作った料理なんて食べれるわけないでしょ」
強気に言い返す。
「食べなきゃ殺す、二回言わせるなよ」
声音が低くなり目から異様なほどの殺気を漂わせる。
一瞬、八重の体は動かなくなり、ふと我に返り震えながらも箸を取り料理を口に運ぶ。
「なにこれ、美味しい」
今までに食べたことのない味がした。
震えは止まり、箸は止まることなく次から次へと口に料理を運び込む。
その様子を伺い笑顔になる殺鬼は、席を立ち扉へと足を運び部屋を立ち去り、すぐに戻ってくる。
「ごはん食べ終わったら部屋に戻てね、プレゼントおいてるから」
こんなにもよくしてくれる殺鬼に疑問を浮かべるが、三日何も食べてないせいか食事のことしか考えれなかった。
八重が食べ終えると目の前で同じく殺鬼も食べ終える。
「全部食べてくれてありがとう、初めてだよ全部食べ切った子」
「美味しかった、ごちそうさま」
下を向きながら小声で言う。
「食べ終えたなら、食べたものくらい片付け手伝って」
殺鬼はニコニコしながら食事の片付けを始めてる。
殺鬼のあとを追いかける、食器を台所に持っていくと殺鬼は台所でお茶を入れていた。
「食後のティータイムとしよう、砂糖は何個入れる?」
「砂糖は入れなくていい」
一つ一つ食器を流しに置きながら答え、八重が食器を流しに置き終えると殺鬼がティーセットトレーを持ち待っていた。
殺鬼と一緒に食事をした部屋に無言で戻り、殺鬼はテーブルにトレー置き八重を見ると、食べた量が多く一回では持って行けず台所にもう二往復しなければならない量の食器を八重は一回で行こうとしていた。
「食器を割られては困る」
と言い殺鬼は半分より少し多く食器を持ち八重を手伝う、食器の片付けを終え食事をした部屋へ戻る。
先ほどの席につくと殺鬼は、八重の前にティーカップとケーキが乗った皿を準備をする。
準備を終えると殺鬼も席につき食べ始める。
これを機にと八重は先ほどしたかった質問を問いかける。
「さっき言ってたけど、私三日も寝てたってほんと?」
ティーカップを口に当てながら頷く。
「私の妹は本当に無事なの?」
ティーカップを机に置き
「彼女は僕の言葉を信じてメモ通りに従ってくれたよ」
少し嬉しそうにしながら会話を続ける。
「メモには僕が殺せなかった女性の住所を書いてたんだけど、彼女から八重をさらってきた次の日には連絡があったよ」
「その女性はやっぱりあなたの仲間じゃないの嘘ついたのね!」
机をたたき席を立ち、殺鬼に詰め寄る。
「ちゃんと話聞いてたか?」
少しあきれたようにため息をつき、ポケットからスマホを取り出し何処かに電話をかけ始める。
「あ、でたでた」
ニコニコしながら電話相手に今の状況を説明する。
「信じないなら、直接本人に聞いてみるといいよ」
スマホを八重に手渡す。
スマホを無言のまま耳にあてる。
「もしもし、君が八重ちゃんかい?」
耳にスマホをあてると少し怖めの声音で女性が出る。
「もしもし、そちらで私の妹がお世話になっていると聞いたので、妹と話しさせてください」
相手の女性が黙り込む。
「妹と喋らしてく」
不安から涙が出てきて言葉が震え最後まで言えずにいた。
「ごめんな、霞ちゃんはここにはいない、だから君と話すことができないだ」
「霞は、霞は無事ですよね」
生きてることに確信を持てた八重は、霞の安否を確認する。