閃きfightング
単なる思い付きです。
「ただいまー。兄ちゃんいる?」
「おう、兄ちゃんは冷蔵庫を開けて食べられる野草が無いか探している。」
「は?」
「お、あった。冷蔵庫の中からナズナを見つけたぞ。」
「何で冷蔵庫からナズナが出てくるんだよ。今秋だよ。」
「春先に摘んでおいた物が今出てきた。」
「食べられるのそれ?」
「ナズナは、アブラナ科ナズナ属の越年草だな。ペンペン草とも呼ばれている。春の七草と呼ばれていて食用だけではなく、薬にもなったそうだ。味はともかく食べられはする。」
「へーそうなんだ。どんな料理にするの?」
「えっ、食べないけど。」
「え?」
「俺は食べられる野草が無いか探していただけで、野草を食べるとは一言も言っていないぞ。ったく、お前は何年俺の弟をやっているんだ。」
「まだ13年しかやってないよ。」
「俺はお前の幼い頃から知っている。」
「兄弟だからね。」
「あの頃のお前はかわいかった。抱き締めたくても母さんがそれを許しはしなかった。」
「兄ちゃんって母さんと仲悪かったっけ?」
「お前を抱きかかえた時に4回ほど落とした。」
「うっそだろおい。」
「あの時の俺もまた、幼かった。弟よ許してくれ。」
「4回も落とされたんじゃ許せもしねーよ。つーか母さん4回もチャンスやるなよ。」
「よし。出かけてくる。」
「あそ、いってらっしゃい。」
「帰りは23時37分。ピッタリに帰るから。んじゃ、行ってきまウェイ!」
これが僕の兄ちゃん。この素っ頓狂な兄ちゃんと毎日繰り広げられる言葉の殴り合い。こんな兄ちゃんの弟を続けるのは骨が折れるけど、つまらないと思ったことは一度も無い。
「さーて、今日も出かけますか!」
「兄ちゃん風呂掃除は?今日は兄ちゃんの日だろ?」
「そうお堅いことを言うな弟よ。幾ら欲しい?5千円か?1万円でも俺は構わない。」
「何気にいい値段提示しないでよ。」
「バーカ、それだけ風呂掃除には価値があると俺は思ってるんだよ。んでそれ以上に俺は早くこの家から離れたい。」
「父さんも母さんも仕事でいないのに何で?」
「この家にはな、いるんだよあれが。」
「あれ?」
「ああ、あれ。」
「あれってなんだよ。早く教えてよ。」
「弟。」
「!?」
「弟がいるから俺は家にいることが出来ない。ただそれだけだ。」
「そんな直球に言わないでよ。あとあれ扱いすんな。」
「違うぞ?俺はお前を邪険に扱っている訳じゃない。お前の貴重な休みを一人で悠々自適に自宅で過ごせるために俺が協力してあげてるだけであって。てか、俺も金貰えるくらいの事してるよね?1万円くれよ。」
「やだよ。」
「じゃあ1万円あげるからやってくれる?」
「わかったじゃあやるよ。」
「おっし。今日は近所のおじいさんと焼き芋をしてくるぜ!17時ジャストに帰るからな!」
「ねー、それ風呂掃除終わってからでもいいんじゃない?」
「ロボットを作ってる。」
「急だね。」
「急にやるから面白いんだよ。よしできた。軽めの知能を積んでみたぞ。」
「エエット、ワタシハダレデスカ?」
「お前はお前だよ。」
「ワタシハナンデスカ?ヒトデスカ?」
「人だったら心臓潰しても死なないはずだぞ。」
「ソウデスカ。」ドスッ、ボフン!
「まあこうなるのは目に見えてたな。」
「何でこうなるの?」
「ぐわあああああ!」
「兄ちゃん!」
「母さん!砂で目潰しなんて卑怯だぞ!」
「甘えんな!勝てばいいんだよ。ふん、普段から喚いてる割には情けないね。私を越えられもしない癖に。弱い犬程良く吠えるってかい?」
「兄ちゃん!もうやめようよ!」
「うん。」
「え?」
「やめた方がいいんだろ?じゃあやめる。今日は母さんの勝ちね。」
「OK。じゃあ次の挑戦待ってるから。」
一見すごい戦いが繰り広げられているように見えるが、ただ単に母さんが地面の砂を兄ちゃんに投げつけただけだった。
「どんな色にでも買えられるペンライトを買ったぞ。」
「また急だね。」
「弟よ、何色がご所望だ?ちなみにRGBで指定しないと色は作れないぞ。」
「(よくわかんないし適当でいっか。)じゃあ、RGB(102,102,51)で。」
「ほいほい。」
「・・・なんだかよくわからない色になったね。」
「色を作るのにもそれなりの知識がいるということだ。」
「俺の座右の銘を教えてやろう。」
「教えて。」
「一日一善。」
「それ本当に言ってる?」
もしかしたら疲れてるかもしれない。