プロローグ
「アアアアアァァァ!!」
異形の怪物が雄叫びをあげ周辺にある木々を破壊していく。怪物はおとぎ話に語られる竜と似ており、口からは炎の息吹きを放出している。竜の大きさは全長20メートルはあり、翼を広げて空を飛び大きく発達した両腕からは刃の様な爪が飛び出ている。
「おいおい、まじかよ。」
そんな怪物と戦闘を行っているのはまだ10代前半位の少年だ。手には剣状の魔法機が握られてり、魔法機には魔術式が浮かび上がり今すぐにでも魔法が放たれ様としている。
「ランク6はあるぞ。報告では全長12、3メートルの下位の竜のはずだぞ。偵察班の観測ミスか?」
少年は喋りながらも魔法機を竜に向けて魔法を発動させる。発動した魔法は土系統第6階位魔法ストーン・グラムだ。威力は戦艦の主砲に匹敵し、魔法機の先端から砲弾が生成され竜に向かって高速で飛翔していく。飛翔していく砲弾に対して竜は回避行動をとるが、避けきる事ができずに翼に命中し悲鳴をあげながら地面に向かって落下していく。
「これで終わりだ。」
少年は魔力を体の全身に巡らせていく事で肉体の能力を飛躍的に向上させていき、落下した事で身動きできない竜のもとに高速で移動していく。そして、少年は手にしている魔法機を使い新しい魔法を発動していく。発動した魔法により魔法機に電流が流れていき紫電の光が生まれる。竜に向かって魔法機を突き刺すと電流が流れていき、体を痙攣させて絶命する。
「任務達成と。」
安堵の声を出しなかがら竜に突き刺した魔法機を引き抜き、少年は竜の体を解体していく。
「おお!これは大物だな。」
竜の体を解体していく事で出てきた大人の頭ほどある宝石に向かって少年は感嘆の声をあげる。竜をはじめに数多くの怪物がおり、怪物達は総称して魔物と呼ばれている。そして、魔物には必ず魔核と呼ばれている臓器がある。これは、様々な魔道具の材料や魔法の触媒にもなり高値で取引されている。
「これ程の大きさならボーナスは期待できるな。」
少年は喜びながらも魔核をリュックの中に入れていき魔法を使い竜の死体を処分していく。そして、拠点に戻ろうとした瞬間通信機から音が流れて足を止める。
[はあああ。今度は一体何なんだ。]
通信機をとりスイッチを押すと
[ピクシー1応答せよ応答せよ別行動中の魔法師の部隊が魔物と遭遇劣勢に陥っている。座標を送るので合流し魔物を殲滅せよ。]
[了解。面倒だな、自分達でどうにかしてくれないかな。]
(そうやって、文句を言うより速く助けに行ったら。)
「ナノ、そうはいっても愚痴を位言わなきゃやってらんないぞ。まぁ、速く助けに行かないと死人が出るかもしれないしな。」
少年はそういうとすぐに座標を確認し魔法を使い座標の場所まで転移した。
[増援はまだか!]
およそ、8人の魔方師が全長12、3メートル程の竜と交戦している。そのうち、3人は手や足がもがれて戦闘不能に陥り地面に倒れている。残りの5人は、竜に向かって魔法機を向けているが自分達ではこの魔物に勝てず逃げる事もできないとわかっており恐怖で体が震えている。
「ガアアアアアァァァ!」
竜が雄叫びをあげながら突進してくるが、魔法師達は恐怖で体がすくみ回避行動が取れず竜の両腕からの攻撃をくらい4人吹っ飛んでいく。吹っ飛んでいった魔法師達は気絶し最後に1人が残った。最後の1人は絶望的なこの状況でも諦めていないらしく、竜に向かって魔法機を向けている。
「死ねない!まだ、俺はこんな所で死ねない!」
魔法師は火系統第三階位アグニを発動する。魔法機から直径50センチ程の火球が出現し竜に向かって飛翔し爆発する。
「やったか!」
「いや、この状況でその言葉はフラグだろ。」
(この世界の人達にそんな事言ってもわからないと思うよ。)
魔法師が放った魔法は竜に直撃したが、爆煙が晴れると無傷の竜が現れる。しかし、魔法師からすれば無傷の竜より突如現れた自分の娘と同い年位の魔法師に驚愕する。
「何故、こんな所に子供が?いや、それよりも早く逃げろ!」
「心配無用だよ。俺を誰だと思っているんだ。」
少年は魔法機を竜に向けて火系統第6階位アルト・アグニを発動する。超高温の剣状の炎は数千度に達しており 竜の体を焼き切りながら引き裂いていく。竜の体は真っ二つになり絶命する。魔法師は子供が高位の魔法つかい竜を一撃で倒したことに目を疑う。
「子供なのにこれほどの魔法を使うとは、君は一体何者なんだ?」
「俺のことはあんまり詮索しないでほしいね。しかし、報告にあった竜が別働隊に遭遇し別の竜を俺が倒すとは あまり運がないな。」
「いや、外界において何が起きるかわからない。そして、全滅するところを君によって救われたんだ運が悪いとは言えないさ。ありがとう君は命の恩人だ。私の名前はカイル・ファノンだ。」
「礼を言うのは構わないが、今はそれよりもやるべきことがあるだろう。」
少年は魔法師との会話を切り上げ、気絶し重症を負った魔法師たちに回復の魔法をかけていく。魔法をかけられた魔法師達は傷が治るだけではなく手足の欠損までも元に戻っていく。さらに少年は絶命した竜の死体から魔核を取り出し魔物の死体を魔法を使って処分していく。
「それじゃあ、任務は達成したし早く帰ろうとするか。俺は転移魔法が使えるがお前達も一緒に帰るか?」
「君は転移魔法まで使えるのか!もちろん、僕たちも一緒に帰らせてもらうよ。」
少年が魔法を使うと魔法師達と少年が光に包まれ拠点に転移した。
今からおよそ100年ほど前に地球のあらゆるところから突如として魔力が放出されるようになった。魔力が放出されることにより 人間には魔力が宿り魔法が使えるようになった。初めのうち人間たちは神の奇跡だと喜びありがたかった。しかし魔力が放出されることになって魔物たちが現れた。魔物は、当時の人類が使う未熟な魔法や科学技術では対抗することができず人類は魔物たちの攻撃により人口を激減させて行った。
地球から魔力が放出されるようになって50年の間、人類は魔物たちの攻撃により人口を激減させながらも対抗する術を探していた。その術とは、当時の科学技術と魔法を融合させることで魔法技術を飛躍的に向上させることだ。魔法技術が飛躍的に向上することにより、人類は魔物たちに対抗するための武器を手に入れた。しかし、人類の人口は激減しており魔物に対して劣勢を強いられており追い詰められていった。そこで、当時の人類たちは魔力が放出されている魔脈に集まり放出されている魔力を防護壁に変える魔道具を作り上げその防護壁の中で暮らし始めるようになった。
防護壁の数は八つあり、それぞれの防護壁の中では国家が生まれていった。国家の名前は、ヤマト・ツァトマ・デルタ・ テンペスト・マリージョア・ムラク・クォーク・ナイトだ。 八つの国家はそれぞれ別の魔脈を使い防護壁を作り上げたので、地理的に離れており防護壁の外は魔物に溢れかえっているので長い間交流を断っていた。
それぞれの国家は、設立された後魔物に対抗することができる魔法師の育成に力を注いた。理由は主に二つある。一つ目は、防護壁というのは完璧ではなく魔物の侵入を許すことがあるから魔物からの防衛をするためというのが理由の一つ目。二つ目は、国土の奪還だ。防護壁というのは拡大することができ、防護壁周りの魔物を一掃した後防護壁を拡大することで国土を増やしていくというのが二つ目の理由だ。
国家は設立して20年ほど経つと他国と交流を行うようになった。初めのうちはそれぞれの国家で魔道具を使い 通信を取り合っていたが、魔法技術が発展していくにつれ地下に通路を作り国家を結びつけて行った。近年では 、転移魔法が使われるようになり一瞬で移動できるようにもなっている。
そんな、人類が魔物との生存をかけた戦いをする世界に日本から転生し魔法師として生きるネイト・ルクスが本作品の主人公である。