修「涙×秘密=ベストマッチ!」
「うっ、うっ、うっ……理子、理子ぉ…………。どうして、行っちゃったの……? うっ、ひっく……アタシの……アタシの許可も取らないで……」
「いやいや、あきむぅの許可もなにも、修学旅行なんだから」
「うるさいわね祭、そんなことわかってるわよ!」
「怒鳴り声、いただきました!」
「本気で怒るわよ!」
「どうぞどうぞ」
説明しよう。
二時限目と三時限目の間の休み時間、星花女子学園本校舎中等部エリアのとある廊下。秋村柑奈はそこで、大粒の涙を流しているのであった。
十一月中旬のこの時期、中等部と高等部それぞれの二年生は、修学旅行のために学校を空けるのだ。
しかし私、厳島映は、まさにこの時を待っていた。
「これはチャンスですわ翡翠! 網橋理子が不在の今こそ時は極まれり! 意気消沈している秋村柑奈を慰め、あわよくばお近づきになるにはもってこいですわ!」
「そうですねお嬢様、想い人へ淫らな欲望をぶつけるそのお考え、実に微笑ましいものであります。……しかしお嬢様、少々お声が大きかったようで」
「……え?」
ハッとして辺りを見回すと、周囲にいる全員がこちらへ注目していた。
「……なに? アタシ……呼ばれた?」
「い……いえ、なんでもございませんことよ、オホホ…………」
私が華麗に誤魔化すと、秋村柑奈は「そう……ならいいんだけど」と呟くと、再び離ればなれになったことに対する不平不満をルームメイトにぶつけ始めた。
……窮地は脱した、と思われたのも束の間、今度は。
「前から思っていたんですけど、石見先生と厳島さんって付き合っているんですか!?」
「えーっ! そうなの!?」
野次馬となっていた周りの中学生達の質問攻めに遭ってしまった。
「ふふ。さて、どうでしょうか」
「そこは否定してほしかったですわ…………」
説明しなければならない。
私の執事、石見翡翠は、きちんと家庭科教員免許を取得した、れっきとした教師である。
しかし、主人である私が通うこの学園に配属となっているのは、偶然ではない。詳しいことは言えないが、厳島グループのコネ的なアレが深く関わっているのである。そのため、学園の生徒達は、私と彼女が主人と執事の関係であることを知らないのである。
…………まぁ、そのせいで私達がそういう風に見られるのは不本意ではあるのだが。