結「理子×柑奈=ベストマッチ!」
私、厳島映は、望んだものは全て手に入れてきた。
たった一つを除いて。
「そして今、覗いているわけですね、お嬢様?」
「ひっ!? ……翡翠、いつからいらしたの?」
「ほんの五秒前ですよ。マジで襲いかかる」
「マジで襲いかかる五秒前ですわっ!?」
そう、それは『好きな人』である。
「……はっ! そ、そんなことより、今まずい状況ですのよ!」
例の二人が、今日に限ってなかなかにアレなのである。
「ねぇ、理子ぉ……。次はいつデートに行けるのぉ……?」
「んー、来週の半ばには依頼されていた録りが一段落するから、来週末かな」
秋村柑奈があんなに甘えた声を出すなんて……。
「えー? ……今日、い・き・た・い」
「今日の放課後はちょっと演劇部の練習が……。……それに、柑奈だって今日は手芸部がある日だし……」
……悔しいが、絶賛ラブラブ中である。
「……はぁ? アタシの誘いを断るっていうの?」
「……別にそんなつもりで言ったんじゃないよ」
「じゃあ今日行くわよ」
「いやいや、お互いに都合があるでしょって話をしてるんだよ」
「そんなの関係ないわよ。アタシとデートに行くか、行かないか、今この場で決めて」
「……そうやって秤にかけられるものじゃないって言ってるじゃん」
「なに? アタシのこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ」
「じゃあなんなの」
「……好きだよ」
「…………もっかい言って」
「……好きだよ」
「……それだけ?」
「……大好き」
「……もっと」
「好き、大好き」
「もう一声」
「愛してる」
「……許す」
……もう既にマンネリ化しそうな勢いで、いつも通りであった。
「めでたしめでたし、ですね。……さて、今日はお嬢様のために追加の宿題を用意いたしました。お納めください」
「勝手に締めないでほしいですわ! ………………え? ……今、なんて」
「お嬢様に、プレゼントです」
「……そのプレゼントはいりませんわ」