永「子どもの夢×大人の陰謀=ミスマッチ……」
私、網橋理子と恋人の秋村柑奈の二人は、明らかにイライラした表情をした私のマネージャー、知戸光助さんに連れられて天寿の一室……おそらく会議室の一つ……へとやって来ていた。
そして……二人揃って座らされていた。
「……なにやってんだ……いえ、なにやっているんですか、Nebburicoさん。売れっ子声優がこんなことして、本当にいいと思ってるんですか!」
激しく机を叩かれ、私の体が跳ねた。
「す、すみません……」
「すみませんで済む話じゃね……済む話じゃないんですよ。どうしてくれるんだよまったく。……こんなことが知れたら、俺の出世街道が終わる…………」
……え?
「……わ……私、どうしてもこの関係を続けていたいんです。彼女のこと、大好きなんです。……もちろん、ピンクマの仕事も頑張っ…………」
「んなことできるワケねぇだろうが! ……問題はそこじゃねーんだよ。お前が、恋人なんか作ってんのが問題なんだよ。お前はもう有名人なんだ。その自覚を持てよ。……ハァ……まあいい。とにかく別れろ。さっさとな」
「そんな……! 私…………!」
「……ばかばかしいわ。帰るわよ、理子。どうせここに頼らなくたって、応援してくれる人はいるんだし」
「ガキが大人に口出しすんじゃねーよ」
知戸さんからは机の陰になって見えていないだろうけれど。
……震えていた。あのいつも強気な柑奈の手が。
「……なによ」
「俺こいつの学校知ってるんだからな」
「…………」
「いいんだぞ? お前らのあることないこと言いふらしても」
「…………っ!」
「やっ……やめてください……! 柑奈は、関係ないじゃないですか……」
「関係ないだぁ? そもそもお前らがあんな外でいちゃついてたのが発端なんだ。お前ら二人とも、同罪だ。二人揃って、きっちり相応のリスクを背負ってもらうぞ。……さあ、自分達から別れるか、それとも学校にいられなくなるか…………どっちか選べ。大人に歯向かった罰だ」
「そんなの、選べ………………」
私が返答に困っていると、突然バンッと音を立てて扉が開いた。
「まったく、わざわざ打ち合わせの場を指定してあげたこの私がノックしているっていうのに扉を開けることもできない無能なの? ……これだから愚民はダメなんだよ」
小言を言いながら部屋に入ってきたのは、少し雑なツインテールを垂らす灰色の髪の女の子だった。




