来「利己的な人間×最悪のタイミング=トゥーマッチ!!」
俺の名は知戸光助。化粧品やら何やらを手広く取り扱っている天寿という企業の広報部門に籍を置いている。
そんな俺は今、「Nebburico」というネット声優のマネージャーをしている。ウチは芸能事務所ではないが、天寿のマスコットキャラクターの「ピンクマ」の声をそいつが担当している関係で、まだ未成年のそいつのお守りを任されているってワケだ。
……おっと、社長から電話か。
「……もしもし、知戸です。……えっあっはい、わかりました。すぐに本人を連れて向かいます。はい、はい、よろしくお願いします」
……ふっ、また仕事か。稼げる男は辛いねぇ。
「……もしもし、Nebburicoさんですか。今お時間大丈夫でしょうか。はい、はい、実はですね……先日お話ししたグッズ販売のことなんですけど……はい、あの抱き締めると声が出るぬいぐるみのやつです。……で、開発部門の担当者がNebburicoさんに聞きたいことがあるから今すぐ会いたいとのことでして…………え、今出先なんですか? ……あー、わかりました。じゃあ向かいに行きます。いえ『困ります』と言われましても…………いや、その担当者俺も会ったことないですけど、社長から行けと直々に言われていまして…………とにかく向かいに行きますから、その遊園地で待っていていください! それでは!」
……ったく、こういう忙しないのは好きじゃない。
◆
俺は車を飛ばし、空の宮市内のとある遊園地にやって来た。ここに、彼女が来ているらしい。なにやら誰かと一緒に来ているそうだが……恋人とかはやめてくれよ。売れっ子のスキャンダルはこっちの処理が面倒だからな。
「……お、いたいた…………あ?」
彼女の隣にいるのは……女か? ……よかった。ダチと来ていたみたいだな。
「……もう、ダメなの…………?」
「……ごめん、マネージャーさんに呼ばれちゃったから。……続きは、また今度」
「……しょうがないわね。今日は、帰ってあげる」
「……ありがとう。……柑奈」
「……なに?」
「……愛してる」
「……アタシも」
……最悪だ。俺は最悪の場面に出くわしてしまった。
……くそ。
俺の昇進が遠退くんだよ。
お前らの軽率な行動のせいで。
黙って俺の財布になっていりゃよかったものを。
「……おい」
「…………」
「……し、知戸さん…………。早かったですね……」
「…………なにやってんだよ、おい」
あぁ、俺は今……。
最高に機嫌が悪い。




