後「思いの外純粋なお嬢様×想像を裏切らない執事=ベストマッチ!」
『別にいいわ。今に始まったことじゃないし』
「お嬢様、感度はいかがですか?」
「誤解を生みそうな言い方はやめてほしいですわ。……盗聴器なんて、いつの間に仕込んでいたんですの?」
「今朝がた、お二人が乗ったジェットコースターの係員に扮して秋村さんのハンドバッグを預かる際に仕掛けました」
「…………翡翠、今日はずっと屋敷にいましたわよね?」
「わたくし、ワープが使えますので」
「冗談キツいですわ」
私、厳島映は、自宅のリビングで紅茶を飲みながら優雅に秋村柑奈と網橋理子の逢い引きの様子を盗み聞きしていた。なお、盗聴器に関する全ての事案は執事の石見翡翠の独断専行であり、私は一切の責任を負いかねる。
『……柑奈』
『なに?』
『…………こんな私だけど……いつもありがとう』
『……』
『……ありがとう。私を見ていてくれて』
「…………」
「お嬢様、紅茶のおかわりです」
「ええ、ありがとう」
『『……んっ………………』』
「ぶふゥっ!」
スピーカーから聴こえてきた音に、私は思わず盛大に紅茶を吹き出してしまった。厳島家の血を引く者として、これ以上無い醜態だ。覗き見している時よりも遥かに濃厚な音が、リビングに響き渡る。
「……お嬢様。お嬢様の液でわたくしの服が濡れ濡れのぐしょぐしょではありませんか。責任取っていただけますか?」
「げほっげほっ! ご、ごめんなさいですわ……」
「それで責任は?」
「…………」
『……柑奈、今までありがとう。これからも、よろしく』
『理子……』
『……愛してる』
『……アタシも』
「…………」
「……お嬢様……?」
……………………。
「……ふふっ」
「……お嬢様、どうかされましたか?」
……はぁ。
「もう……いいですわ」
「……あぁ。それでは、スピーカーをお切りしますね」
「もう、二人のことについて調べなくてよくってよ」
「……お嬢様、それはいったいどういう……?」
「私に入り込む余地は無いと悟った、ということですわ。……翡翠」
「はい」
「責任、取ってあげますわ。感謝しなさい」
「お嬢様…………。ありがとうございます。これ以上ないありがたきお言葉。…………それでは、お二人の寮や家に仕掛けていた監視カメラも回収して、生体資料も破棄しておきますね」
「生た…………え?」
「お二人の健康状態や周期等をまとめた資料のことですが」
「私、聞いてませんわ」




