前「内気な少女×隠れた才能=ベストマッチ!」
気が弱くてぶっきらぼうな私がありのままの……いや、それ以上の自分自身を発揮できたのが、ネットの世界だった。
話題作りのために観始めたけれど、徐々にそこへの憧れが強くなって、いつの間にか私は発信する側の人間になっていた。
動画を出して間もない頃はファンができるどころか再生回数自体伸びなくて。でも「この広大なネット世界。埋もれている私の動画が誰かに見つけてもらえるのは時間がかかって当たり前」と前向きに捉えて、私は動画を出し続けた。
続けることが、大事だった。
たとえ自分では完全に納得できるものではなくても、とりあえず形になったものをアップしてみた。
少しずつ、本当に少しずつだったけれど、いつからか「いいね」やコメントが増えてきた。
そんな時、ある企業から「ピンクマ」というキャラクターの声優をやってみないかとオファーされ、私はそれを引き受けた。
それが転機になった。
「……理子」
「え?」
「なにボーっとしてんのよ」
「……昨日、調子に乗ってゲーム実況三本も録っちゃって」
「はぁ!? なにやってんのよ! 理子の体は理子だけの物じゃないんだから、しっかりしなさいよね!」
「…………ごめん」
どうやら、私は寝落ちしかけていたらしい。恋人が目の前にいるというのに、情けない。
「ほら、行くわよ。せっかくのデートなんだから」
私の恋人……柑奈はそう言って、私の手を引っ張った。




