遇「告白×告白=ベストマッチ!」
「うーーーーん」
「さ、さっきから、なにをそんなに唸っているんですか……? 秋村さん」
ベッドに寝そべって考え事をしていると、星花女子学園の桜花寮のルームメイトである粟飯原祭に声をかけられた。
「わからないわ……」
「えっと、いったいなにが…………?」
「……あいつのことよ」
「……あいつ?」
「中等部三年二組、網橋理子、ねぇ……」
「網橋って、あの網橋先輩のことですか!?」
「なに、知ってるの?」
「知ってるもなにも、今学生の間で話題の人気動画投稿主じゃないですか!」
「いやそういうことじゃなくて、あの元気で明るいNebburicoと、あんな陰気で暗い網橋理子が同一人物であることをどうして知ってるか聞いてるのよ」
「……普通に噂になっていますし、先輩本人も認めていますよ?」
「え?」
「学年の間でも話題になっていますし」
「そ、そうだったのね……」
「でも……。……聞いた話なんですけど………………なんか、すごく気難しい人だそうですよ…………」
「……それは知ってる。会ったことあるし」
「……それで、先輩がどうしたんですか?」
「……前に会ったことがあって、そのときになんかヤな態度とられたから、文句言いにいったのよ。そしたら『人はみんな多重人格者だ』なんてワケわかんないこと言い出して、Nebburicoと網橋理子、どっちに文句を言うか決めてから出直してきてって…………」
「……多重人格者、ですか……。それはまた、難しい話ですね……」
「そうなのよ。……だから、なんて文句を言うか考えてて……」
「……多重人格者って、確かこの学園にもいますよね」
「ああ……なんか変な名前の」
「確か名前が、つな……つな……『つな』さん…………?」
「マヨネーズと和えたら美味しそうね」
「もしくは、死ぬ気でなにかをやってそうですね……。赤ちゃん連れて。…………でも、なんだかわかる気がします。『多重人格者』っていう表現も」
「……どういうこと?」
「……わたし、趣味の一つにコスプレがあるんですけど……。……わたし、コスプレをしている間は全く違う人になっているんですよ」
「そんなわけないじゃない。あんたはあんたでしょ?」
「そうじゃないんです。わたしであって、わたしじゃない。誰かになっている時は、『わたし』と『誰か』、二つの人格が一つの体に共存しているんです。だから、同じように演技が好きな者として、その発言は共感できるんですよ」
「……そう……なの」
「はい。……わたし以上に頻繁に、そしてたくさんのキャラクターが共存している先輩にとっては、誰として秋村さんと接したらいいのか、純粋に疑問に思ったんじゃないでしょうか……?」
「…………ふーん。そういうものなのね…………」
◆
翌日、アタシは前回と同じように網橋理子を校舎の壁の一角に押し付けた。
「……で、決まったの? どちらに文句を言うのか」
「……結局、なんにもわからなかったわよ!」
「……そう」
「だから、あんた『達』全員に文句を言いに来たわ」
「え……?」
「……今、アタシの目の前にいる人間が誰であろうと、アタシは伝えるわ」
「…………」
「あんた達全員…………人に夢を与えているんだから、自分で与えた夢くらい、自分で壊さないようにしなさいよっ!」
「……!」
「……じゃ、そういうことだから」
アタシが帰ろうと体を翻した直後、「網橋理子ほか大勢」は、ゆっくりと崩れ落ちた。
「……待って」
気にせず歩き出そうとしていると……。
彼女は、アタシに向かってこう言った。




